丸市珈琲~銀座駅前の隠れ家カフェ~

丸市珈琲~銀座駅前の隠れ家カフェ~

おしゃべり好きな銀座のコーヒー屋店長が、仕事では伝えきれないコーヒーについての思いやうんちくや、たまにコーヒーとは関係ないネタ話などをアップします。
コーヒーとアソブ楽しさ、みなさんに届きますように。

朝から強い雨が降っている今日、今年一番暇な昼下がりです。

この機会にメルマガを編集したり、ブログを更新したりしているのですが、現在当店の公式LINEページを制作しているのでその作業にも没頭できそうです。

意外に使い勝手が悪くて今までLINEページを作ることがなかったのですが、そう判断したのはもう3年も前のこと。

今ではかなり便利になっていて驚きましたアセアセ

近々こちらでも宣伝しますので、ぜひご登録を!!

お得情報に加え、コーヒーの好み診断も搭載する予定です。

 

 

【店長のうんちくコラム その24・コーヒー豆の保存について】

このうんちくコラムで「ちょい足し」シリーズを始めたばかりなのですが、今回は少し寄り道をしてコーヒー豆の保存について書きたいと思います。

というのも、お客様からのご質問がここ最近急増してきたので、一度ちゃんとした形で解説をした方がいいと思いました。

今回は短くコンパクトにまとめましたので、気になっていた方はぜひお読みください。

 

〇保存の際に気を付けること

水分を飛ばす焙煎をされたコーヒー豆は活性炭に近い内部構造をしているため、周囲のにおいを吸収する性質があります。

そのためどんな保存方法でも必ず外気が入らないもの(ジップロックや保存缶、保存瓶など)に入れてください。

直接容器に移すとコーヒーの油分で汚れるため、購入したときの袋ごと入れられるものが便利です。

直接入れ替える場合は、使い切るたびに容器を洗ってくださいね。

ちなみに当店のコーヒーは購入されてから2週間ほどで飲み切るのがおすすめですよ。

 

※店ではガラス瓶での保存をしています。保存容器の材質でおすすめなのは「ガラス」か「ステンレス」の、においがしないものですが、すぐに飲み切れる場合はそこまでこだわらなくても大丈夫です

 

未開封、もしくはしばらくの間飲まないコーヒーの保存方法

買ってきてもしばらく飲むことがない場合は、「冷凍庫」に保管してください。

コーヒー豆の内部は炭酸ガスで満たされているため、気体ができる限り収縮する低温がおすすめです。

炭酸ガスは酸化を抑えてくれる作用があるので、外に漏れ出さないことが重要です。

 

開封する際は、コーヒー豆が冷たいままだと暖かい外気との温度差で結露が起きて湿気を吸収してしまうため、冷凍庫から出して冷たくない状態になってから開封してください。

コーヒー豆は水分をほとんど含んでいないので、5~10分で常温に戻りますよ。

 

ちなみに「冷凍保存でどれくらいもつか」の質問を多くいただくのですが、私の経験上1か月以上経つと味に明らかな変化が起きます。

と言っても、季節によっても、また日常生活で冷凍庫をどれだけ開け閉めするかでも大きく変わります。

正式な分析データがないのでなんとも言えないのですが、どちらにせよあまりの長期保存には向かないことだけは確かです。

 

開封後のコーヒーの保存方法

一度開封した後は、コーヒーを淹れる度に出し入れすると思います。

冷凍庫保存の場合は温度差からの結露の可能性が大きいため、常温との温度差が少ない「冷蔵庫」、もしくは冬場の場合は暖房がきかない場所での「常温保存」がおすすめです。

時間に余裕がある場合は密閉された状態で常温に戻ってから開封することをおすすめするのですが、1週間ほどで飲み切ってしまえる場合はあまり気にしなくても大きな問題はないです。

 

冷蔵(もしくは常温)保存の場合は、10日前後で飲み切るのがおすすめです。

 

〇番外編 1

とあるお客様のコーヒーの保存方法をご紹介します。

コーヒーを購入されて自宅に戻られた後、一度の抽出で使用する量をキッチンスケールで量って、小さめのチャック袋(100均でも売っているそうです)に全て小分けしてから冷凍庫に保存するそうです。

コーヒーを淹れる際はお湯を沸かす前にコーヒー豆を冷凍庫から出しておき、触って冷たくない状態になってから挽いて使用するそう。

ここまでこだわることができるのは稀だと思うのですが、ある意味理想的なやり方の一つでもあります。

 

〇番外編 2

実は私と焙煎士とでは保存のおすすめの仕方が若干異なります。

私は、冬場は常温保存を、夏は冷蔵保存をおすすめしているのですが、焙煎士は冬場こそ冷蔵保存、夏は常温保存をすすめています。

なぜこんな食い違いが生まれるのかというと、問題は「温度差」にあります。

冬場に暖房がきいていない保存場所(特に台所周りで)は無いことが多いのと、常温と冷蔵庫との温度差が比較的少ない季節だから冷蔵庫でも問題ない、という判断です。

それと同じ理由で、夏場に冷蔵庫に入れてしまうと常温との温度差が開いてしまうので常温が良いとの判断になります。

ただ一点欠点があるとすれば、夏の常温では豆の鮮度が落ちるスピードがあまりに早いため、すぐに飲み切らなければいけないところです。

 

というわけで、保存方法には完全な「正解」がないので、このコラムを参考にご自身に合ったやり方を見つけてくださいね。

先月からイートイン&テイクアウトメニューに登場した「マルベリーコーヒー」ですが、意外と20代の若い方がよく飲んでいってくれています。

甘酸っぱいマルベリー(桑の実)シロップにイルガチェフェの特殊水出しコーヒーを合わせたもの、という簡単な説明だけなのですが、最近の若者は面白そうなものはためらわずチャレンジする傾向があるのでしょうか。

嬉しい予想外でした。

販売は今月下旬くらいまでと考えていたのですが、今週末の寒さで今季休止するかもしれません。

ご注文はお早めに!

※「ベリーが入っているチョコレートのような印象ですよ」と説明すると伝わりやすいみたいです

 

 

【店長のうんちくコラム その23・「コーヒーにちょい足し」を考える・砂糖編】

コーヒーを美味しく飲むために、日本でも世界でもいろんなものをコーヒーに「ちょい足し」する文化があります。

ミルクや生クリーム、ラム酒などのリキュール類、最近ではフルーツジュースやハーブなどなど。

ちょい足し素材は多岐に渡りますが、その中でも代表格といえば皆さんご存じ「砂糖」です。

今回のコラムではその砂糖の種類とコーヒーとの相性をざっくり解説します。

 

そもそもなぜコーヒーと砂糖は相性がいいのでしょうか。

砂糖の主な役割は、糖分を接種したいという目的以外だと、「コーヒーの苦み軽減」がメインになります。

苦みのあるものに甘みを足すと、味覚でそれらが相殺しあうので、とても飲みやすくなります。

チョコレートと同じだと思うと分かりやすいのですが、カカオの割合が多ければ多いほど甘くなくなっていき、そして少し食べづらくなっていきます。

 

その反面、実は砂糖はそれ自体に酸味を持つため、特に酸味が強くさらに濃度が高いコーヒーほど砂糖を入れると飲みづらくなる傾向にあります。

その場合は酸味の中和性も持つミルクを入れるといいのですが、それについては次回「ミルク編」で書きますね。

 

砂糖は種類別に様々な名称(味)のものがありますが、ここではざっくり3種類に分けます。

 

1. 精製糖(分蜜糖)

白いグラニュー糖含め、ほとんどは精製されたお砂糖です。

原料の成分を結晶化させるまでの過程で“糖蜜”と呼ばれる成分を分離させているので「分蜜糖」とも呼ばれます。

糖蜜の特徴は、「原料(サトウキビやテンサイなど)の香りが強い」、「甘みは弱く辛味がある」、「黒くどろどろしており、濃度を増しても結晶化しづらい」という主に3つ挙げられます。

白い砂糖がサラサラしているのは、この糖蜜が除去されているからです。

 

また、「ブラウンシュガー」として売られている砂糖の多くは、精製糖に「カラメル色素(砂糖由来の色素)」を加えているものであり、未精製の砂糖ではないのです。

カラメル色素についてこれまで多くの質問を受けてきましたが、これは砂糖をそのまま熱するとできる色素成分で、うまく作ると「ほぼ無味・無臭」の「醤油色をしたもの」ができます。

これは中華料理ではよく煮込み料理(きれいな醤油色を付けたいときに)に使用するのですが、一般的に加工で使用されているものは「ほんのり甘く、ほんのり苦いもの」だそうです。

というわけで、茶色くても成分表に「カラメル色素」と書かれているものもほぼ精製糖になります。

しかし、味わい的にはまろやかさが加わることが多く、甘味が柔らかく感じる傾向にあります。

 

ちなみに、よく白い砂糖は「漂白されている」と聞くことが多いのですが、実際は精製過程で水酸化カルシウムが使用されているだけで、漂白剤は使われていません。

水酸化カルシウムは消毒に使われるくらいアルカリ性が強いのでどこかで誤解されたのかもしれません。

 

精製糖と相性の良いコーヒーは、クリアな味わいが特徴なものほど合います。

苦みの度合いは関係なく、シンプルですっきりとした、あまり複雑さや重さを感じないコーヒーがおすすめです。

当店でいうと「ブラジル樹上完熟」や「ドミニカ」がそれにあたります。

 

2.黒糖以外の未精製糖(含蜜糖)

個人的には「減蜜糖」と言いたいのですが、そういう言葉が存在しないので、ここでは黒糖以外の未精製糖とします。

含蜜糖というのは、糖蜜を含む砂糖のことで、その多くは糖蜜をある程度抜いて販売されています。

粉末黒糖ではない「キビ糖」や「和三盆」、フランスの「カソナード」がそれにあたります。

糖蜜が含まれているため、原料の香りが際立ち、甘さも柔らかく、ある程度糖蜜を抜いているため辛味もほとんど感じることがありません。

 

ミネラル分が豊富なので、コクや重さのあるコーヒーとの相性がよく、当店では「コロンビア」や「東ティモール」、「各種ブレンド」と合わせるのがおすすめです。

ブレンドは複数種類の豆を混ぜているため、シングルよりもコクが出やすいです。

 

ちなみに当店で販売しているフランス産の角砂糖「ペルーシュ」は茶色くても精製糖で、未精製糖はザラメ状の「カソナード」というもののみです。

そういえばカソナードはクレームブリュレの仕上げにカラメルとして使用されることで有名なので、口にしたことがある方も多いのでは。

 

 

〇黒糖・粉黒糖・黒蜜

これも含蜜糖ですが、その中でも糖蜜を分離させずに作った黒い砂糖が黒糖(黒砂糖)です。

特徴は何といっても原料の香りの強さと、味わいの複雑さ、控えめな甘みです。

糖蜜の特有の辛味を感じる人もいます。

それは黒糖100%の黒蜜を口に含むと分かりやすかったりします。

市販の黒蜜は黒糖にグラニュー糖をある程度混ぜて作りますが、黒糖100%のものも意外と多くあります。

 

しっかりコクのある砂糖のため、比較的焙煎度が高めのフルボディでコクのあるコーヒーやカフェオレと相性が良いです。

当店では「ケニア」や「こってりブレンド」、「タナ・トラジャ」がおすすめです。

塊の黒糖はコーヒーに溶けづらいため、その場合はお茶菓子のようにかじりながらコーヒーを飲むといいと思います。

しっかり溶かしたいときは粉黒糖がおすすめですよ。

 

・丸市珈琲コーヒー教室のお申し込みはこちらから↓

 

 

 

ようやく涼しくなってきた東京ですが、11月に入っても最高気温25℃の日が続くそうで…

まだしばらくはアイスコーヒーが売れそうな気配です。

ちなみに数量限定で「エチオピア イルガチェフェ」を使ったアイスコーヒーもお出ししています。

出せて一日4杯程度ですが、もしワインのようなベリーのようなエキゾチックな香りを体験したい方はぜひお試しください。

 

もうご存じの方も多いかもしれませんが、四丁目交差点の和光の時計台が今ミッキーマウス仕様になっています。

思った以上に遠くて乱視のひどい私の肉眼では見えづらかったのですが、スマホのカメラの進化はすごくてアップにしても結構きれいに撮れていました。

11月18日までに期間限定なので、銀座にお越しの際はぜひ見上げてみてくださいね。

 

【店長のうんちくコラム その22・焙煎方法の違いについて】

「この場で焙煎できますか?」という質問が数年前から頻繁に聞かれることが多くなりました。

確かに昨今ではコーヒー専門店だけでなく無印良品などでも生豆をその場で焙煎するところが増えてきました。

当店も生豆を販売しているので、ご自身の好みに合わせて焙煎依頼ができると考えてしまうのでしょうか。

残念ながら当店ではその場で焙煎できないのですが、その理由も含め今回のコラムでは現在主流の焙煎方法をざっとご紹介します。

 

まず焙煎方法は規模別に3種類、熱源別に3種類存在すると言われています。

ざっくり解説になりますが、それぞれを見ていきます。

 

〇焙煎規模による違い3つ

1. 手焙煎(ハンドロースト)

機械を使わない手焙煎では、専用として売られている器具や手網(銀杏などを煎るようなもの)、ほうじ器(ほうじ茶を煎るもの)などを用います。

一度の焙煎は多くても生豆200gまでがほとんどで、熱源はコンロか七輪、キャンプで行う場合は焚火だったりもします。

温度管理がとても難しく、熱源の温度もなかなか一定にできないため、美味しく焙煎するというよりも「焙煎を楽しむ」ためのものという見方が主流です。

※何十年もかけてこの道を究めている方もいらっしゃいますが、本当に極まれな例です

 

2. 小型焙煎機(サンプルロースターなど)

回転する小型ドラムの中にコーヒー豆を入れ、ガスバーナーなどで焙煎する方法です。

手回しのものやモーター付きのものがありますが、200gから多くても500gの焙煎がメインになる器具。

コーヒーのカッピング(テイスティング)に使用することが多いため、「サンプルロースター」と呼ばれることもあります。

喫茶店で使用されることも意外に多く、少しお高いコーヒー豆を少量焙煎したいときなどにも使われます。

手焙煎よりも熱源が安定していますが、温度が早く上がりやすいのが多少ネックになっています。

 

3. 大型焙煎機

よくテレビやネットで見たことがある人もいらっしゃるかと思いますが、生豆を投入するドラムが中に入っている焙煎機本体に、冷却層や各種計器が付属されているものがこれにあたります。

一口に「大型」と言っても小さいものは500gから、大きなものになると数百キロも焙煎できるものがあります。

一般的に個人のカフェの場合は1キロ焙煎機~5キロ焙煎機、チェーン店や卸業をしているところは10キロ~50キロ焙煎機が多いです。

温度管理がしやすいこと、熱源が安定していることから、コーヒー専門店には欠かせない焙煎機です。

ちなみに南蛮屋では主に30キロ焙煎機を使用しています。(かつては20キロのものでした)

 

〇焙煎の熱源による違い3つ

1.ガス火・直火式

ガスの熱源を使用した「ガス火」焙煎が現在では圧倒的に主流です。

その中でも直火はガスの炎でコーヒー豆が入った回転ドラムを直接炙り焙煎します。

ロースト香(こうばしい香り)が立ちやすい手法ですが、焙煎機内の温度を上げやすく、生豆内の水分(渋みや雑味のもと)をしっかり飛ばしやすいです。

 

2.ガス火・熱風式

熱風式は加熱した空気を焙煎機内に送り込んで焙煎する方法です。

この方式ではコーヒー豆の内部になかなか火が入らないため直火式の方が良い、という意見が10年ほど前までは主流でしたが、熱風式焙煎機がかなり改善されてきていること、温度管理が直火式よりも厳密に行えること(コンピュータ制御も可能)、サードウェーブコーヒーの流行により浅煎り(酸味が強い)コーヒーが徐々に好まれてきていることなどから、あえて熱風式を採用するお店も多いです。

 

3.炭火・直火式

厳密に分けると炭火焙煎は「備長炭焙煎」「木炭焙煎」「ガス火とのハイブリッド焙煎」があるのですが、ここでは一括りに炭火焙煎にまとめます。

ちなみに当店は直火式の備長炭焙煎になります。

温度管理がとても難しく熟練した職人の技術が必要なのですが、遠赤外線が放出されることでコーヒー豆の内部から熱することが可能なため雑味が残留することが少なく、焙煎温度もガス火より低くすむため焦げ臭さがつくことも少なくなります。

反面、強い酸味や強い苦みが出しづらいため、まろやかな味わいになりやすい傾向にあります。

 

余談ですが炭火のような遠赤外を放出する「遠赤外線焙煎機」というものも存在します。

いわゆる暖房器具でよく見かける遠赤外線ヒーターを応用したものです。

 

さて焙煎方法についてざっくり解説してきましたが、当店の焙煎方法は「大型焙煎機」での「炭火・直火式」になります。

お店でその場で焙煎するためには「小型焙煎機」を使用する必要があり、その多くは「熱風式」になります。

簡単にいってしまうと、店頭での焙煎にしてしまうと理想とする味ではなくなってしまうからなのです。

もちろん自分好みの焙煎方法を選ぶ楽しさや、焙煎したてのコーヒーは酸化するまでの時間が長いことなど、その場で焙煎することでのメリットはたくさんあります。

ただ、僕らが提供するのは、歴代の焙煎士(今は三代目)が「この豆にはこの焙煎度が最も合う!」と判断し、理想に近づけるように努力の末に作り上げた味わいです。

つまり、「高品質に生産されたコーヒー豆」をただ味わうというよりも、「コーヒー豆の味+焙煎士の技術とセンス」を楽しんでほしいのです。

興味がある方はぜひ実際の焙煎の様子の動画をご覧ください。

ちなみに4:13あたりに、前々回の「選別」をテーマにしたコラムで書いた「空気(風)を使った選別」の様子が一瞬映りますよ。

余談ですが、今回のコラムを書くきっかけはお客様と「コーヒーにちょい足しして美味しいもの」の話をしたことでした。

紅茶や抹茶などのお茶類をちょい足ししたものは昔販売されているのを見たことがありますが、ラム酒やコーヒーカクテルでお酒を足すことは普通にありますし、ここ最近ではオレンジやレモンなどのフルーツ、ミントやエルダーなどのハーブを足すこともよく見かけるようになりました。

さらに当店では桑の実(マルベリー)のシロップをちょい足したコーヒーを現在お出ししています。

そう考えると、コーヒーっていろんなものと相性がいいのでは?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが…。

 

コーヒーに本当に合わないものって存在するんです。

 

現時点で個人的に人生で最も衝撃的にまずかったちょい足しは「ピルクル」でした。

ピルクル自体はとても好きで、よく職場の冷蔵庫に入れているのですが、ある日ふと思い立ってコーヒーに入れてみたら、さぁ大変。

たぶんほとんどの人は口に入れられても飲み込めないと思います。

本当の本当に危険ですえーん

乳酸菌飲料は牛乳とは違うんだと改めて思い知らされた一幕でした。

※いないとは思うのですが…、万が一ピルクルコーヒーが好き!という人がいたらお詫びします。

 

というわけで、今回のテーマはフードペアリングについてです。

 

【店長のうんちくコラム その21・コーヒーとスイーツの相性について】
ネットや雑誌などでコーヒーの話題を追っていると、「フードペアリング」という言葉がここ数年でとてもよく見かけるようになってきています。
直訳すると「食べ合わせ」のことですが、たとえばワインと食事を合わせるように、コーヒーとスイーツなどを合わせることにもよくこの言葉を用います。
土日限定で提供している店長のセットもこのフードペアリングを重視してお茶菓子とコーヒーの相性を考えて提供しています。


※カフェセットを始めた当初、マスカットの求肥包みを出していたことがありました

そんなフードペアリング、現在ではAIを用いることがとても多くなってきています。
もちろんそういう技術を利用できるのは大きな企業がほとんどですが、スイーツの味わいをデータとして分析・入力すると、どんなコーヒーが合うかの提案が自動的に出てくるものです。

そうはいっても、相性というものは(特に嗜好品に関しては)それを口にする人の好みが大きく影響します。
だからこそ必ずしもそれらに正解があるわけではないのですが、コーヒーとスイーツの合わせ方を工夫することで、単一で味わうのとは違った味わいを生み出すことがあることがとても面白いです。

〇スイーツにコーヒーを合わせるコツ
スイーツに合わせるコーヒーをお探しのお客様に普段からお勧めしていることは以下の3項目です。

1.スイーツの「甘さ」とコーヒーの「苦み」の度合いを合わせる
スイーツの甘さが強ければ苦いコーヒーを、甘さが控えめなら苦みも控えめのコーヒーが相性が良いです。
さっぱりとしたクッキーに濃厚なコーヒーでは苦みが勝ちすぎますし、あんこやチョコのような甘いものに軽いコーヒーでは物足りなくなります。
スイーツが甘さとコーヒーの苦みを「比例させる」のがおすすめです。

2.スイーツの「味の濃さ」とコーヒーの「コク」の度合いを合わせる
例えば和菓子は甘さがあっても生クリームのような動物性油脂分由来の重さはないため、コク(味わいの複雑さ)が控えめのコーヒーを選ぶと相性がいいです。
具体的に挙げてみると、大福やどら焼き、団子などはブレンドしてあるコーヒーではなく、すっきりとした味わいのシングルの豆を。
逆にクリームたっぷりのケーキやモンブラン、ガトーショコラなどは重さが必要なので、たとえ甘さが控えめなスイーツでもコク(味わいの複雑さ)のしっかりしたものの方が相性が良いです。
コクのあるコーヒーとして分かりやすいのはブレンドされているものです。
複数のコーヒー豆を混ぜることで味わいに複雑さと厚みを持たせます。
ブレンドされていないシングルのコーヒーでもコクのあるものは多くあるのですが、良質なコーヒーであることが多く、少し値段が高くなる傾向があります。

3.スイーツの香りと共通点のある(もしくは相乗効果が期待できる)香りのコーヒーを選ぶ 
簡単なようで少し難しいポイントですが、例えばフルーツタルトにはフルーティーなコーヒーを、チョコケーキにはカカオのような香りがするコーヒーを合わせると相性がよくなります。
ただ、そういう単純な方法だけでなく、ミルキーなもの(例えば生クリームを使ったシュークリームやマリトッツォ)にミルキーな香りのタイプのコーヒーではなく、キャラメルや黒糖のような香りを持つコーヒーと合わせても美味しいです。

上にいろいろ挙げてはきたのですが、偶然見つかる相性もとても多いのがフードペアリングの面白いところです。
試しても試しても終わりがない、楽しいコーヒーのテーマの一つです。

【店長のうんちくコラム その20・コーヒー豆の選別やハンドピックについて】

コーヒーの専門書や特集雑誌を読むと頻繁に見かける「選別」や「ピック」という言葉。

大量に収穫されるコーヒー豆は、全てが完熟していて美味しい状態というわけではないので、美味しくないものを取り除く過程がこの「選別」や「ピック」という作業になります。

 

1.収穫するとき

まず初期段階で行われる選別方法は収穫されるその瞬間。

自然に近い形(自生コーヒーや山の斜面に植えられたものなど)で栽培されたものは手摘みされることが多いため、目で見て判別しながら収穫することが多いです。

※ペネイラと呼ばれる篩(ふるい)で、葉っぱや軽い豆を飛ばす伝統的な方法。大量に収穫する場合はコーヒーの木の枝をしごくように実をとるため、どうしても葉なども含まれることから編み出された技術

 

それとは対照的に大規模農園の場合は一斉に完熟させることが多いため、振動を使った収穫機械で一気に完熟豆を選別・収穫します。

※フランスのぶどう畑でしばしば見られる収穫機。機械が通れるようにコーヒーの木を一列に植え、そこを挟み込むように収穫していきます

 

 

2.収穫後

全ての農園にある施設ではないのですが、水洗式比重選別法というものがよく使われます。

収穫されたコーヒーの実を水槽のような装置に投入すると、浮力の影響で未熟な実や過熟して発酵した実、その他葉っぱだったりゴミだったりが浮くため、その余分なものを取り除き、沈殿した完熟豆だけを取り出します。

 

 

3.乾燥・脱穀後

収穫の後にいろいろ精製され、乾燥・脱穀後に生豆(種の部分)の状態になった後。

機械を使うときは色で振り分ける「光選別機」、人の手を使うときは「ハンドピック」という作業に入ります。

光選別機は巨大な滑り台からコーヒー生豆を滑らせ、完熟豆の色以外のものをはじく大型機械です。

10年以上前に南米の人に、この機械はいくらくらいか聞いたら、「一台一億円だ」と答えが返ってきたのが衝撃的だった記憶があります。

かつて1億円なら、今ではいくらなのか…

 

また、ハンドピックとは視認しながら人の手で選別する方法で、「不良豆」(形が悪いものや、欠けのあるものなど)と言われるコーヒーの味わいを損なう豆を取り除いていきます。

 

 

4.輸入後

まだまだ選別作業は終わりません。

日本に輸入された後も選別作業は続きます。

個人店などは、現地では取り切れなかった不良豆を一個一個丁寧にハンドピックで取り除くところが多いです。

 

ちなみに中規模以上のコーヒー屋の場合はピックしなければいけない生豆が大量のため、輸入前に生産国のハンドピック工場に回して取り除いてもらいます。(南蛮屋の豆もそうして取り除いているものがあります。また、同じ豆を工場に複数回依頼してさらに厳密に取り除くこともあります)

 

 

5.焙煎時

さていざ焙煎、という段階まできても、まだまだ選別は続きます。

小型焙煎機では通常ついてはいないのですが、中規模以上の焙煎機の場合、焙煎し冷却されたコーヒー豆を取り出す過程で、空気(風)の力を使った比重選別によって異物を取り除きます。

重いものは落ち、軽いものは飛ばされ、適した重さのものだけを集める装置があります。

また、何らかの金属類がコーヒー生豆に誤って混入していたり、焙煎工場で何かのはずみで部品が落下していたりする場合に取り除くために、冷却層の出口には超強力磁石が付いています。

 

 

6.焙煎後 ←※過去のハンドピックの記事もご覧ください

これが最後の選別工程です。

焙煎後は新たに焦げが発生してしまう可能性があるため必ずピック作業をします。

それ以外にも成分(特に糖分)が不足しているコーヒー豆は色づきが悪いため、見つけ次第取り除きます。

また、ほとんどないと言っていいのですが、本当にたまにコーヒー生豆と色も形も重さもそっくりな「トウモロコシ」などの雑穀が混ざることがあります。

これは焙煎後にポップコーン状態になって見分けることが容易になったりします。

 

 

ざっと解説しただけでも6工程もある選別作業。

「どれだけコーヒーに適していない豆が混入しているんだ…」と思った方も多いと思いますが、一番混入が多い銘柄では、収穫されたものの約半分を取り除くことがあります。(取り除けば取り除くほど売価が上がるのですが…)

もちろんこれは極端な例ではあるのですが、異物混入の可能性がゼロではない限り、工程の最後まで気を抜くことができません。

 

 

最後に蛇足ですが、実は今回はどうしても言いたいことがあってコラムを書いておりました。

私が南蛮屋入社2年目くらいの時に店にとあるコーヒー屋の社長さんが来店されました。

「今度コーヒーの本を出す」とおっしゃっていたその方から、なぜか当店のコーヒーの製造過程について事細かに聞かれました。

それこそ取材と言っていいほどの長い時間ずっと質問に答え続けたのですが、最後はとてもこちらを馬鹿にした態度だったため、ある意味不思議に感じていました。

ですが後日、出版されたその本をたまたま本屋で見かけたので、購入して読んでみたらとてもびっくりしました。

当店の焙煎方法は炭火焙煎で、いろんな焙煎方法の中でも「一番難しい」と質問に答えただけなのですが、「炭焼きは一番優れている焙煎方法だという意見があるがそれは間違いだ」と書かれていました。

そしてそれ以上に衝撃的だったのは、「焙煎した豆を店舗でビンに移す際にハンドピックをする」と説明したとき、その瞬間も「は?」と言われてしまったのですが、本の中では「焙煎後の豆に手を突っ込んでハンドピックするなんて不衛生だ」と書かれてしまいました。

当たり前ですが、ハンドピックと言っても焙煎後はレードルかトングを使ってピックをするのです。

それはコーヒー屋なら誰でも知っている当たり前のことなのですが、本当にそれがとてもショックで「いつか公に反論するぞ!」と心に決めて早15年。

そんなわけで、この機会に書かせていただいた次第です。

言うまでもないですが、商品の衛生状態については選別など他の何においても絶対に最優先事項なのです。