第8話 「THRESHOLD」
<あらすじ>
遥人は不思議な魔女に出会うが、次々と舞い込んでくる魔女の感情にコミュニケーションが取れず悩む。神崎はそのことをマリに相談すると、現実の姿の魔女らしき人物に偶然出会う。
後をつけてみると、両手を上げ、手のひらを振る観客達のいるライブハウスに辿り着いた。
1回目視聴終了直後
これ、どっかの宗教のアニメ? / ̄ ̄\
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今回は魔女が二人(厳密には一人)いるのでややこしい。また、リリィが今回登場していない事も意味深である。仮にもし彼女が今回の夢に潜んでいるとすれば、いったいどのような形でいたのだろうか。リリィは第5話にて姿を変えて登場していた事もある。
またプロット関連の情報としてハルトの正体に迫る情報も散りばめられていて、重要性は高いエピソードのように思う。
ショートの魔女の言葉は槍と化し遥人を貫く。一方ロングの魔女の言葉には、遥人は聞きたくないとばかりに耳を塞ぐようにヘッドフォンをする。見直してみると、
・ショートの魔女の言葉=槍=対象を攻撃=暴言 ⇒ 遥人に届く
・ロングの魔女の言葉=丸いシャボン=遥人を肯定する優しい言葉 ⇒遥人は聞きたくない
というシーンだったと解釈できる。初見ではいきなり戦闘シーンから始まるので、さっぱり意味が分からない幕開けであるが、最後まで見てから改めて見ると、こうした比喩としてこの戦闘は描かれていると分かる。
今回の魔女は言葉が話せない聾唖者(聴覚障害者)である。ショートの魔女の言葉によれば、彼女の障害による制約が、彼女の大事にしているバンドの限界を規定してしまっていることにストレスを感じている。そして、この障害により大切なメッセージをうまく伝えきれないと苛立ちを見せている。
しかし、理解してくれると思った遥人にも理解してもらえないと思うと、態度を一変させ、槍のようなものが次々と出てくる。つまりハルトに暴言を吐いてる。我慢しかねたハルトがショートの魔女に攻撃的な言葉を投げかけようとすると、猫教授にとめられる。そして、場面は変わる。
謎の街を歩くハルト。どうも過去回想とも解釈できそうなシーンであり、ハルト関連の過去関連の情報と思しき情報は本シリーズで初めてである。
注目すべきは、この町を歩くハルトはヘッドフォンをして周囲の音を遮断している。そして、この時周囲から聞こえてくる言葉は、いずれも水中で音を聞くかのように、非常に聞き取りにくい音になっている。これらの言葉を書き起こすと
①「危ない!よけろ!」 ⇒車にはねられるハルト。
一方、はねられたハルトが薄れいく意識の中で聞こえた言葉
①「ハルトなんかとは遊ばない」という子供たちの声 ⇒はるとはいじめられていた?
②「ハルト君重い」 (彼女らしき)女性に言われた言葉
③「うざいんだよ」 友達・同僚らしき男性に言われた言葉
④「もう少し出来る子だと思った」 両親/教師/上司らしき大人に言われた言葉
ハルトに危険を伝える言葉は聞こえず、ハルトを侮蔑する攻撃的な言葉はハルトにしっかり届いているという構成がこのシーンでも一貫している。
水底に落ちていくハルトが目覚めると、目の前には冒頭でシャボンのような形の言葉を投げかけた魔女がいる。彼女は視聴者には聞き取れるが、ハルトには聞き取れていない。そんな彼女が言っている言葉は、
魔女「気がついてよかった」 「大丈夫ですか?」
遥人「え?」
魔女「大丈・・夫?」
遥人「あれ?」
今度はヘッドホンをしていないが聞き取れない。内容はハルトを気遣う優しい言葉である。この様子を見守る猫教授は少し怪訝な面持ちである。
一度視聴し終えた後で見直すと分かるが、このシーンは二人の認識に齟齬がある。
ハルト → ショートの魔女とは会話ができる。 ロングの魔女とは会話ができない
教授 → ショートの魔女の声は聞こえない。 ロングの魔女の声は聞こえている
フラッシュバックで教授視点からの冒頭のシーンが挟まれるが、教授にはショートの魔女の声はやはり聞こえていない。
この不自然な状況をバーのママと話す教授。『波長が合わないんじゃない?』と話すママ。教授はいまいち納得できない様子だが、ある意味これは正しい解釈だったといえる。負の言葉を投げるショートの魔女の言葉は聞こえるが、ロングの魔女がハルトにかける優しい言葉はハルトは無意識に聞こうとしない態度の現れであり、波長があっていないといえる。
そして教授は居合わせた女性を見て、魔女は聴覚障害者の可能性に辿りつく。
ショートの魔女の言葉はハルトにしか聞こえていない。
「誰が、好んで他人が喋るマイナスな言葉を聞きたい?」
「人は自分の都合のいい音だけを無意識に選んでいるの」
「だから、人によっては私が喋ってた言葉が聞こえない」
「あなただってこの世界で経験してるんじゃない?」
「彼女の声、あなた聞こえなかったでしょ?」
「もう一人の私の声」
ハルト「俺は何でも聞きたいし、それに誰かの手助けもしたい」
ショート
「でもね、本当にあたなが助けたいのはあなた自身じゃないの?」
「そう、あなた自身があなたを手助けしたいんじゃないのかな?」
「助けられないんじゃなくて助けたい」
ハルト
「俺が俺自身を助けたい?そんな事思ったこともないよ」
「でも自分自身を助ける事なんて出来るわけがないよ」
ロング「だから他人がいるんじゃない?」
ショート「今までいろんな人達があなたに助けられたくて、あなたに近づいてきた」
ロング「それも自然にあなたが引きよせている」
ショート「本当なら聞きたくない言葉をあなたは受け入れていた」
ロング「逆にあなた自身を勇気づけたり、元気づける言葉は自分が受け入れないから聞こえない」
ロング「自分なんて・・・ってどこかで思っていない?」
ショート「自虐的」
魔女と教授の言葉で視野が広がったハルトは世界が広がったように、聞こえなかったせせらぎの音や小鳥の囀りも聞こえるようになった。無理じゃない、できるんだと知ったハルトの成長を窺わせるシーンである。
<公式サイトのキャラの補足説明>
ソノ (閾の魔女) 感情の出し方によってコミュニケーションのとり方が違う一対の魔女。現実世界の姿は、聴覚障害を持つデフボーカリスト。
今回の魔女はリリィの変装?
素直に見ると、「ガレキの中に一週間」 そうショートの魔女は言った。直前のシーンでビルの瓦礫に閉じ込められた女性、あるいは容姿の似たライブのボーカルの女性というようにも思える。
しかし、今回の魔女はハルトがこれまでのたくさんの魔女を救ってきたという事実を知っている。そして今回は重要なキャラたるリリィが一切登場していない。リリィは夢世界で変身する能力をもっている。これらの情報を組み立てると、今回の魔女はリリィが変身していたという可能性を排除できない。
<リリィとは関係ない場合>
・心の問題は何か
ショートの魔女は自由に言葉で話すこと、そして耳で聞くことができるこの世界を満喫している。裏返せば、それができない現実世界に不満を持っている。
・眠り姫病患者?
前述の、魔女を素直な解釈にした場合でも、眠り姫病に陥っていると思しき女性は見当たらない。エピソード4の暴食の魔女と同様のケースだったのだろうか。
・何故解放されたのか
何故今回の魔女は突然夢世界を崩壊させ去っていたのか。彼女自身が抱える心の問題はどうも解決したようには思えないが、ハルトと話したことで心が整理されたのだろうか。現実に戻る展開が、ハルトが思わず「えー」と言うように、唐突で分からない。
それゆえ、これらの不自然な状況を考えると、実はリリィが変身していて、ハルトが抱えている問題をそっと示唆することでリリィの目的は果たされて、今回の夢世界は終わったとも思える。
大きな枠組みでは、「早く現実世界に帰りたい」と口にする遥人の現実への帰還が、物語のゴールと考えられる。
ただし、この遥人については謎の部分が多く、本当に実在する人間なのかさえ確定的ではない。そのため、遥人の正体という部分も併せて物語のプロットが組まれていると考えている。鍵を握るのは、遥人をお兄ちゃんと呼ぶリリィ、そして教授と眠り姫病に陥っているという教授の妹と考えられる。
これらの四人をどう結び付けて解釈するかが、この物語を紐解いていく鍵となると考えているが、これまではヒントが少なく推論の域を出ない状況である。
そして、これらの情報から推測した仮定は以下の二つ。
①眠り姫病に落ちているリリィの本当の兄
②リリィが作りだした架空の存在
+
③遥人のもう一人の分身 ※後述
前回のエピソードまで②の可能性のほうが高いと考えていたが、今回のエピソードで示された情報を踏まえると、再び同程度、あるいは①の可能性の方が高くなったと考える。ただ、ミスリード可能性も多分にあり、情報が不足している現状では予断することはできない。
ショートの魔女の推理
①「あなただって自分が望んでいるカタチになっているんでしょ?」
②「この夢から覚めたくないって」
③「気持ちのどこかでそう思ってる」
④「あなたのやりたい事って?」
元の世界に戻ってやりたいことを目いっぱいやると語るハルトだが、元の世界の記憶映像もなければ、何をやりたいかも語ることができない。そのため相変わらず両方の仮説は排除できない。
今回のエピソードの情報を整理すると、ハルトはいじめられていた。自分を否定するような言葉ばかり気にしてしまい、心を病んでいた。そして、ある日事故が原因で昏睡している状態である。これらの状況は仮説の①を補強する。
また、現在夢で活動中のハルトが、本来のハルトに作られたもう一人の人格だった場合。これは今回のエピソードで、一人の人物が心の問題の在り様で、二人の魔女に分身したようにその可能性もかんがえられる。仮説③である。
リリイが造り出したとする仮説②は、今回のエピソードで補強する情報がないため、①と③に比較すると可能性は相対的に低くなった。②の仮説では、眠り姫病に陥った魔女を救うためハルトという架空の存在を作り上げたとするものであるが、今回のエピソードの魔女がリリィの変身だとすると、その必要性を説明できる根拠に欠くものがある。
また、眠り姫病に陥った教授の妹の夢世界での魔女の姿がリリィとする仮説も完全に消えたわけではないが、ハルトとの結び付きを考えると補強する情報が不足していて弱い。
リリィは眠り姫病に陥ったハルトが作り上げた架空の存在とする逆転の仮説など、色々と思い付くことはあるが、いずれもまだ確証には遠く、この先の物語を引き続き楽しめそうである。
今回のエピソードはプロットに関連しそうな重要情報もあり、考察も楽しめるエピソードで面白かった。
また教授が説教くさいといった点は、初見ではそれまでの積み重ねが少なく唐突の言葉であるため、確かに説教臭く感じる。ただ、この今回のエピソードで語られた考え方は共感する。
見せ方は一話という時間的制約があるため、説教臭くならずに素直に受け入れるには条件が厳しく、仕方ないと理解できる。
こういう言葉の見せ方がうまい作品としてARIAという作品がある。ARIAにはこうしたメッセージを乗せたセリフがちょいちょいあるが、それはそれとなく視聴者側に気づかせて考えさせるものであったり、灯というキャラがきちんと物語の中で過程を踏んだ結果、そういう考えに至るというプロセスがしっかりあるため、同様の言葉でも素直に共感しやすい。
ARIAはシリーズの中でこうした積み重ねがあるが、18ifは作品の性質上こうしたプロセスが難しく、示唆を含んだメッセージはちょっと説教臭く感じるし、言われなくても分かっていますwと思わず反応してしまう。
初見時はそういう気持ちも持ったが、色々考えながら見直して見ると、言葉自体はもっともであるし否定したい気持ちはないことから、案外素直に受け入れることができる。ただ、そこに至る経緯で見せるべきシーンの積み重ねが無いので唐突感があり、言葉の重みという点ではどうしても軽く感じる。
初見時は冒頭からの訳が分からない展開に始まり、とまどうこの多いエピソードであったが、見直してみるとなかなか面白いと感じた。毎回作る監督が違うということもあり、本当にテイストがよく変わるが、たまにはこういう一風変わった嗜好もいいのかなと思って楽しんでいる。そのぶん外れ回は結構きついものがあるが。
好み(エピソード別)
▲ 第8話 監督:石山タカ明 脚本:石山タカ明 コンテ:石山タカ明 演出:石山タカ明
○ 第7話 監督:千明孝一 脚本:千明孝一 コンテ:千明孝一 演出:千明孝一
××第6話 監督:高橋幸雄 脚本:高橋幸雄 コンテ:高橋幸雄 演出:高橋幸雄 作画監督:鵜池一馬
× 第5話 監督:大原実 脚本:大原実、冨田頼子 コンテ:大原実 演出:大原実 作画監督:清水博幸
△ 第4話 監督:数井浩子 脚本:数井浩子 コンテ:数井浩子 演出:北井嘉樹 作画監督:南伸一郎
◎ 第3話 監督:藤井俊郎 脚本:藤井俊郎 コンテ:藤井俊郎 演出:藤井俊郎 作画監督:森悦史
○ 第2話 監督:西森章 脚本:冨岡淳広 コンテ:西森章 演出:鈴木恭兵 作画監督:南伸一郎
△ 第1話 監督:西森章 脚本:冨岡淳広 コンテ:西森章 演出:鳥羽聡 作画監督:乙幡忠志
____ 第7話はやっぱり異色だなぁ
/ \ いまだにシリーズでの位置づけも
/ ⌒ ⌒ \ 良く分からないし
/ (●) (●) \ 雰囲気は好きなんだけど
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ロングヘアーの魔女(CV折笠さん)の声がリリィと少し似てた気がする
18if 第4話 暴食の魔女 感想 監督が変わるとテイストが変わる?
18if 第5話 凡庸の魔女 感想 お後がよろしくないようで
18if 第6話 感想 何でも超展開にすれば面白くなるわけではない
18if 第7話 「ソシテダレモイナイ・・・」 感想 つまりこれは・・・どういうこと
18if 第9話 アイドルはトイレに行かない! 感想 みなぎる遥人の遥人
18if 第12話 「魔女大戦」 感想 遥人はもしかしア○○?
18if 最終話と作品の感想 シリーズとしては残念だが、試みは面白いシリーズ