【5019】出光興産/中計目標をROE10%に修正、相対取得で富士石油の筆頭株主成りへ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5019】出光興産(東証プライム) OP

現在値 1,046円/100株  P/E 8.28  P/B 0.80  3月配当 9月配当 株主優待あり

石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。

 

今期予想配当金は年2回・合計160円のため、配当利回りは約3.06%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しており、
Idemitsu Art Award 展”の招待券の進呈のほか、抽選で“題名のない音楽会”の収録招待や“キッザニア”の入場招待を進呈しています。

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 45,566億円、営業利益 1,400億円 EPS 23.5円 

■2022年3月期 売上高 66,867億円、営業利益 4,344億円 EPS 188円 

■2023年3月期 売上高 94,562億円、営業利益 2,824億円 EPS 170円 

■2024年3月期 売上高 86,500億円、営業利益 2,500億円 EPS 125円 ce修正

□2023年9月2Q 売上高 40,244億円、営業利益 2,029億円 EPS 114円 

□2023年12月3Q 売上高 64,022億円、営業利益 2,937億円 EPS 167円(2/13)

 

2023年9月中間期の売上高はYoY▲16.4%の4兆0,244億円、実質利益(注:表記営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除す)は同284億円増の1,946億円となり、計画比は無いものの増益となりました。柱の燃料油は前提油価ドバイ/バレル80.0$に対して実績82.3$と計画線だったほか、主産品・連産品のマージンの改善が改善しました(在庫影響は▲1,915億円)。他方で石炭事業は業容縮小と単価後退で減益、越ニソン製油所については均衡圏まで改善しています。

 

なお2024年3月期通期見通しについては2Qで修正しており、売上高はYoY▲8.5%の8兆6,500億円(期予:8兆3,000億円)、在庫影響を除いた実質利益はYoY▲508億円の2,200億円(期予:1,850億円)を予想しています。下期の前提油価をドバイ/バレル80$→85$、為替(ドル円)も130円→140円へ実勢反映させるとともに、終掘・売却となる豪州エンシャム石炭事業も数量増で上振れします。他方、電力・再エネ事業に関しては、発電所の定期メンテによる発電量減少にくわえ、売電市場であるJPEXの単価低調により下振れます。2月13日に開示済の3Qは売上高6兆4,022億円&実質利益2,341億円のため既に超過圏にあります。

 

当社は2022年11月策定の3ヵ年中計で、3年後の2025年3月期に実質利益を1,550億円(*巡行補正後)→1,900億円に伸長させるほか、ROE8%(直近実績14.2%)を、ROIC4.6%(同5.9%)を目指す計画としています。なお、本年11月の中間決算公表時にマイナー修正しており、株主資本コストの見直し(所謂PBR1.0倍の議論)の観点から、ROE目標を10%に切り上げています。

 

今次中計では2050年の“CO2ネット排出量ゼロ”という目標を掲げ、2030年に国内燃料需要が現行8掛けとなる見込みの下、化石燃料アセットを2割圧縮します。投資計画は2030年迄に1兆円、うち6,900億円を向こう3年間で集中投下します。千葉SAF装置製造、徳山アンモニア基地化、グリーンエナジーペレット拡大など新エネルギー創出に2,900億円を投じるほか、リチウム固体電解質事業場等に800億円を投じます。なお昨年10月にトヨタ自動車とバッテリーEV用全固体電池の量産化の協業を発表しており、2027~28年の実用化を目指すこととしています。

 

2018年より商用運転を開始したニソン製油所(投資額1,500億円)はベトナムの石油需要の35%を担う重要拠点となっており、設備故障や資金難による原油買付困難などのトラブルが相次いだものの、既にフル操業化しています。金融費用負担が重く、結局は進行期も赤字が継続(中計期間中の持分法取込益はそもそもゼロ想定)するものの、定期修繕を無事通過し、今後のJV間協議・ベトナム政府協議の進展によってはアップサイド可能性を残します。

 

他方、重質熱分解装置を本邦で唯一保有し、川崎の扇島に莫大な土地を保有している上場子会社の東亜石油(5008)へのTOBは一度失敗したものの、買付価格3,150円の大幅引き上げにより完全子会社化することに成功しています。また直近では、低調な業績推移に苦しむ住友化学からの相対で富士石油(5107)株の持分6.46%を取得しており、既存持分と合わせて13.04%の筆頭株主成りしており、将来的には持分法適用化も視野に入れます。

 

株主還元方針については、「総還元性向50%」が今次中計でも堅持されていたものの、先般の上方修正時に配当フロアを年120円→年180円に大きく見直しています。ROE目標を10%に改定したことからも明らかなとおり、会社側のPBR改善意欲は強く、引き続きPBR1.0倍まで追加的な還元策が期待出来るものとみます。


*参考記事①  2023-08-22  589円*分割遡及修正済 OP

【5019】出光興産/ 悲願の東亜石油へのTOBが成立、会社側はPBR改善を意識か。

 

*参考記事② 2022-08-04 670円*分割遡及修正済 OP

【5019】出光興産/油価タイムラグ縮小も、石炭価格高騰が追い風。自社株買い待ち。

 

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