【5019】出光興産(東証プライム) OP
現在値 3,350円/100株 P/E 6.04 P/B 0.71 3月配当 9月配当 株主優待なし
石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。
今期予想配当金は年2回・合計120円のため、配当利回りは約3.58%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しておりません。
業績を確認していきます。
■2020年3月期 売上高 60,450億円、営業利益▲38.6億円 EPS▲76円
■2021年3月期 売上高 45,566億円、営業利益 1,400億円 EPS 117.4円
■2022年3月期 売上高 66,867億円、営業利益 4,344億円 EPS 940.1円
■2023年3月期 売上高 86,000億円、営業利益 1,900億円 EPS 554.6円 ce
□2022年9月2Q 売上高 39,500億円、営業利益 700億円 EPS 201.8円 四e
2022年3月期の売上高はYoY+46.7%の6兆6,867億円、実質利益(注:表記営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除す)は同1,234億円の増の2,162億円となり、中間時の増額修正を更に上振れて着地しました。前提油価ドバイ/バレル60.0$→75.0$に対し、実績78.1$となり、国内の精製マージンが堅調に推移したほか、在庫影響タイムラグも減少しました。越ニソン製油所についても、越国内の感染拡大の影響と需要減をこなし、油価上昇とシンガポール製品のスプレッド良化により損益改善しましたが、同製油所への長期貸付金559億円につき評価損を認識しています。
進行期である2023年3月期通期予算については、売上高がYoY+28.6%の8兆6,000億円、在庫影響を除いた実質利益はYoY▲562億円の1,600億円を予想しています。前提油価をドバイ/バレル78.1$→100.0$へ実勢反映させる一方、燃料油のタイムラグ解消にともなうマージンの大幅縮小を見込むほか、豪州一般炭価格を実勢比で大幅に安い180$/tを前提としていることから、保守的な予算組みと解されます。他方、越ニソン製油所は精製マージン拡大のほか、評価損の戻入益もあり、持分法取込では収支トントンを見込みます。
当社は脱炭素潮流の急激な進展を受け、中計を途中でロールしており、最終年度である2023年3月期に実質利益1,750億円(従前:2,600億円)、ROE8%(従前:10%)、累計FCF2,300億円(従前:4,000億円)とし、数値目標を大きく下方修正しています。今般開示された着地予算では実質利益1,600億円で未達想定ではあるものの、最終年度は燃料油のタイムラグ影響による構造的な“尻すぼみ”要因であるほか、3ヵ年累計ベースでは超過達成公算のため、概ね計画線と解することも出来そうです。
成長ドライバーは、総事業費1兆円のうち当社が1,500億円を投じた越・ニソン製油所(JV:ベトナム国営石油・ペトロベトナム・三井化学)であり、2018年より商用運転が開始されていますが、設備故障や新型肺炎禍に伴う需要減少、年初には資金難による原油買付困難などのトラブルが相次いだものの、既に融資返済危機は収束し、既にフル操業化しているとみられます。次の返済期限は11月で、調達油価高騰といったリスクが残るものの、SGマージン拡大といった好材料もあるため、一旦は状況が改善したとみてよさそうです。
他の業績拡大要素としては、石油元売り各社の中では希少な事業である(豪州)石炭事業の業績寄与であり、足許ベースでも石炭価格が高止まりしていることから、現状の価格が概ね維持されることを前提に年500億円級の利益上乗せが期待されます。他方、重質熱分解装置を本邦で唯一保有し、川崎の扇島に莫大な土地を保有している上場子会社の東亜石油(5008)へのTOBには失敗したほか、去る6月14には傘下の西部石油・山口製油所の閉鎖を公表しており、減損発生の可能性はあるものの、高止まりする油価と石炭価格で飲み込んで堅調な業績推移が期待されます。
株主還元方針については、「総還元性向50%」が今次ローリングでも堅持された一方、配当は従来より40円低い年120円水準での“安定配当”が謳われています。終わった期には50円(年170円)の記念配当を出した経緯があるものの、年120円の配当分を控除すれば、進行期についても500~600億円級の自社株買い発動が期待されます(想定総還元利回りは7~8%)。
*参考記事① 2022-02-11 2,994円 OP
【5019】出光興産/油価高騰で減額後中計は達成の勢い、総還元性向50%で期末に追加還元か。
*参考記事② 2021-07-30 2,601円 OP
【5019】出光興産/新中計で脱炭素路線を鮮明化、油価堅調で業績・還元ともに上振れ圏。
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