【5019】出光興産(東証一部) OP
現在値 2,601円/100株 P/E 9.1 P/B 0.67 3月配当 9月配当 株主優待なし
石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。
今期予想配当金は年2回・合計120円のため、配当利回りは約4.61%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しておりません。
業績を確認していきます。
■2018年3月期 売上高 37,306億円、営業利益 2,013億円 EPS 845円
■2019年3月期 売上高 44,251億円、営業利益 1,793億円 EPS 401円
■2020年3月期 売上高 60,450億円、営業利益▲38.6億円 EPS▲76円
■2021年3月期 売上高 45,566億円、営業利益 1,400億円 EPS 117.4円
■2022年3月期 売上高 56,800億円、営業利益 1,350億円 EPS 285.9円 ce
□2021年9月2Q 売上高 27,000億円、営業利益 600億円 EPS 127.8円 四e
2021年3月期の売上高は前期比24.6%減の4兆5,566億円、実質利益(注:表記営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除したもの)は同297億円の増加となる928億円となり、3Q時点の通期見通し比で上振れ着地となりました。前提油価は当初バレル30.0$(修正後42.4$)のところ、通期実績44.5$となり、国内の精製マージンが堅調に推移したほか、在庫評価も黒字転換しました。他方、越ニソン製油所は安定的に操業したものの依然として赤字となっており、持分取込損失を▲400億円を経常段階、長期貸付金損失を▲200億円弱を特損段階で計上しています。
2022年3月期の通期予算については、売上高が24.7%増の5兆6,800億円、在庫影響を除いた実質利益は同427億円の良化となる1,400億円を予想しています。足許の油価市況を踏まえて、通期のレート前提を1バレルあたり44.5$→60.0$に引き上げたことによる単価寄与や、新型肺炎禍一巡による数量回復、売電事業の一過性損失(JPEX高騰)がタイムラグ解消による一過性損失の剥落といった増益要素は多いものの、燃料油のタイムラグ解消にともなうマージン縮小により増益幅は限定的となります。越・ニソン製油所についても安定操業が見込まれるものの、なお赤字が継続する見通しです。
当社は昨今の急激な脱炭素潮流の進展を受けて、進行中の中期経営計画を再度ローリングしており、最終年度である2023年2月期に実質利益1,750億円(従前:2,600億円)、ROE8%(従前:10%)、累計FCF2,300億円(従前:4,000億円)とし、中期見通しを大きく下方修正しています。成長ドライバーは、総事業費1兆円のうち当社が1,500億円を投じた越・ニソン製油所(JV:ベトナム国営石油、ペトロベトナム、三井化学)であり、2018年より商用運転が開始されていますが、操業開始当初からの相次ぐ設備トラブルにくわえて新型肺炎禍に伴う需要減少もあり、既にフル稼働にもかかわらず、本中計終盤に見込まれていた収益貢献が遠のいている状況と解されます。
そのためにニソンは当分はアテに出来ないことから、足許では再生可能エネルギー関連に大きく舵を切っていく方針を鮮明にしています。具体的には、現行品の液体リチウムイオン電池の次世代品として期待される全固体リチウム電池の材料(硫化物系固体電解質)生産の事業化や、徳山(山口)や豪石炭鉱山遊休地におけるバイオマス発電、子安(秋田)に建設中の地熱発電等に取り組み、打ち手のスピードアップにより石油事業からの早期脱却を目論んでいます。他方、世界でもごく僅かしかない重質熱分解装置を唯一保有しているほか、扇島(川崎)に莫大な土地を保有している上場子会社の東亜石油(5008)に対してTOBを仕掛けていましたが、アクティビストによる介入もありそちらの方は断念しています。
他方、最大の投資論点である還元方針については、従来中計より基本方針としていた「総還元性向50%」路線を今次ローリングでも堅持したものの、配当については従前の年160円から年120円(同42.0%)へ40円減配した水準での“安定配当”が謳われています。但し、足許油価が堅調なことから、強含みの業績推移が期待され、その場合の上振れ分については自社株買いで対応するものとみられます。
*参考記事① 2020-09-12 2,371円 BY
【5019】出光興産/中計配当金下限160円を早期に反故、新ガイドの提示が待たれる。