【5019】出光興産/油価高騰で減額後中計は達成の勢い、総還元性向50%で期末に追加還元か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5019】出光興産(東証一部) OP

現在値 2,994円/100株  P/E 4.0 P/B 0.66 3月配当 9月配当 株主優待なし

石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。

 

今期予想配当金は年2回・合計120円のため、配当利回りは約4.01%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。

■2018年3月期 売上高 37,306億円、営業利益 2,013億円 EPS 845円 

■2019年3月期 売上高 44,251億円、営業利益 1,793億円 EPS 401円 

■2020年3月期 売上高 60,450億円、営業利益▲38.6億円 EPS▲76円 

■2021年3月期 売上高 45,566億円、営業利益 1,400億円 EPS 117.4円 

■2022年3月期 売上高 65,800億円、営業利益 3,000億円 EPS 739.9円 ce修正

□2021年9月2Q 売上高 28,670億円、営業利益 1,729億円 EPS 480.0円

□2021年12月3Q 売上高 46,471億円、営業利益 2,790億円 EPS 672.5円(2/8)

 

2021年9月中間期の売上高はYoY+42.2%の2兆8,760億円、実質利益(注:表記営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除したもの)は同488億円の増加となる813億円となり、予算比は無いものの堅調に推移しました。前提油価はドバイ/バレル60.0$のところ、上期実績69.3$となり、国内の精製マージンが堅調に推移したほか、在庫評価も飛躍的に改善しています。他方、越ニソン製油所についても、油価上昇とシンガポール製品のスプレッド良化のほか、前期計上の長期貸付金評価損の戻り益もあり損益が改善しています。

 

2022年3月期通期の見通しについては、中間時点で増額しており、売上高がYoY+44.4%の6兆5,800億円(期予:5兆6,800億円)、在庫影響を除いた実質利益はYoY+827億円の1,800億円(期予:1,400億円)に修正しています。燃料油のタイムラグ解消にともなうマージン縮小や、JPEX価格高騰による調達電力の上昇といったマイナス要素はあるものの、足許の油価が堅調に推移していることから、下期前提油価をドバイ/バレル60.0$から75.0$に修正することによる単価効果が大きく発現するものの、燃料価格抑制制度に基づく政府補助金は卸価格に完全転嫁させるため、当社への損益インパクトは(数量増が無ければ)理論上ゼロとなります。

 

当社は脱炭素潮流の進展を受け、昨年に中計の再ローリングを迫られており、最終年度である2023年2月期に実質利益1,750億円(従前:2,600億円)、ROE8%(従前:10%)、累計FCF2,300億円(従前:4,000億円)とし、数値目標を大きく下方修正しています。成長ドライバーは、総事業費1兆円のうち当社が1,500億円を投じた越・ニソン製油所(JV:ベトナム国営石油、ペトロベトナム、三井化学)であり、2018年より商用運転が開始されていますが、相次ぐ設備トラブルや新型肺炎禍に伴う需要減少に見舞われたほか、本年1月末には資金難による操業停止リスクが顕在化するなど(その後ベトナム政府の支援を取り付けたとみられる)、能力的にはフル生産可能でも、巡行操業状態となるにはなお時間がかかる見通しです。

 

頼みのニソンがそのような状況のため、当面は再エネ関連に舵を切っていく方針を鮮明にしています。具体的には、液体リチウムイオン電池の次世代品と目される全固体リチウム電池の材料(硫化物系固体電解質)生産の事業化や、徳山(山口)や豪石炭鉱山遊休地におけるバイオマス発電、子安(秋田)に建設中の地熱発電等に取り組み、打ち手のスピードアップにより石油事業からの早期脱却を目論んでいます。他方、重質熱分解装置を本邦で唯一保有しているほか、川崎の扇島に莫大な土地を保有している上場子会社の東亜石油(5008)へのTOBは失敗し、新電力もJPEXからの仕入価格高騰により採算が急速に悪化するなど、課題も多い状況です。

 

なお株主還元方針については、従来中計より基本方針としていた「総還元性向50%」路線を今次ローリングでも堅持したものの、配当については従前の年160円から年120円(同42.0%)へ40円減配した上で“安定配当”が謳われています。足許3Qでは増配等が公表されなかったものの、在庫影響除きの実質利益ベースでも上振れ必至であることから、落着見通しが固まり次第、追加の株主還元があるものと考えています。

 

*参考記事① 2021-07-30 2,601円 OP

【5019】出光興産/新中計で脱炭素路線を鮮明化、油価堅調で業績・還元ともに上振れ圏。

 

*参考記事② 2020-09-12 2,371円 BY

【5019】出光興産/中計配当金下限160円を早期に反故、新ガイドの提示が待たれる。

 

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