【5019】出光興産/ 悲願の東亜石油へのTOBが成立、会社側はPBR改善を意識か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5019】出光興産(東証プライム) OP

現在値 2,948円/100株  P/E 8.56  P/B 0.52  3月配当 9月配当 株主優待なし

石油元売り2位。石油化学や原油・石炭開発も。昭和シェル石油と2019年4月に経営統合。

 

今期予想配当金は年2回・合計120円のため、配当利回りは約4.07%となります。
出光興産は株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 45,566億円、営業利益 1,400億円 EPS 117.4円 

■2022年3月期 売上高 66,867億円、営業利益 4,344億円 EPS 940.1円 

■2023年3月期 売上高 94,562億円、営業利益 2,824億円 EPS 853.3円 

■2024年3月期 売上高 83,000億円、営業利益 1,400億円 EPS 341.2円 ce

□2023年6月1Q 売上高 18,189億円、営業利益 448億円 EPS 156.4円(8/8)

□2023年9月2Q 売上高 39,000億円、営業利益 1,080億円 EPS 278.4円 四e

 

2023年3月期の売上高はYoY+41.4%の9兆4,562億円、実質利益(注:表記営業利益に持分法利益を足し、在庫影響を除す)は同364億円の増の2,658億円となり、3Qの減額修正見通しをやや上回る水準で着地しました。前提油価ドバイ/バレル75.0$に対し、実績92.5$となったものの、タイムラグ影響で国内の精製マージンが堅調に縮小したほか、在庫影響も▲857億円とマイナスに転じました。課題の越ニソン製油所については、主燃料・ジェット燃料ともに増加し、営業損益は黒字化したものの、金融負担増で最終赤字圏が継続しています。

 

進行期である2024年3月期通期予算については、売上高がYoY▲12.2%の8兆3,000億円、在庫影響を除いた実質利益はYoY▲858億円の1,800億円を予想しています。前提油価をドバイ/バレル92.5$→80.0$へ実勢反映させ、終掘・売却となる豪州エンシャム石炭事業についても、一般炭価格も実勢比で弱めの170$/tを前提としていることから、保守的な予算組みと解されます。他方、基礎化学品や高機能材は工場稼働率上昇や、潤滑油のタイムラグ解消による改善で軒並み改善を見込みます。

 

当社は終わった期を最終年度とする3年中計で当初は実質利益2,600億円、下方修正後は1,750億円を目指していたものの、結果的には油価・資源高影響が最後まで持続する形で当初目標を超過達成しました。今次策定の新中計では、3年後の2025年3月期に実質利益を1,550億円(*巡行補正後)→1,900億円に伸長させるほか、ROE8%(直近実績14.2%)を、ROIC4.6%(同5.9%)を目指す計画としています。

 

今次中計では2050年のCO2ネット排出量ゼロという大目標を掲げ、2030年に国内燃料需要が現行8掛けとなる見込みの下、化石燃料アセットを同様に2割圧縮する計画です。投資計画は2030年迄に1兆円を見込み、うち6,900億円を向こう3年間で集中投下します。千葉SAF装置製造、徳山アンモニア基地化、グリーンエナジーペレット拡大など新エネルギー創出に2,900億円を投じるほか、リチウム固体電解質事業、プラスチック再生といった次世代ソリューションに800億円を投じ、事業ポートフォリオの変革を目指します。

 

なお2018年より商用運転を開始したニソン製油所(投資額1,500億円)はベトナムの石油需要の35%を担う重要拠点となっており、設備故障や資金難による原油買付困難などのトラブルが相次いだものの、既にフル操業化しています。終わった期で営業黒字化、進行期で50億円増益を見込むものの、金融費用負担が重く、最終益ベースでは依然として均衡圏(中計期間中の持分法取込益はゼロ想定)としています。

 

他方、重質熱分解装置を本邦で唯一保有し、川崎の扇島に莫大な土地を保有している上場子会社の東亜石油(5008)へのTOBには一度失敗したものの、買付価格を2,450円から3,150円に引き上げることで大株主である米コーンウォール(31.5%保有)の同意を取り付け、昨年末に完全子会社化することに成功しています。これにより当社グループの石油精製所再編の泳ぎ幅が拡大することとなり、中長期的な経営効率化が期待されます。

 

株主還元方針については、「総還元性向50%」が今次中計でも堅持され、配当も年120円水準での“安定配当”が謳われています。それでも昨今の会社態度からは、現状0.5倍台に沈むPBRを1.0倍に近づけることを志向している意向が汲み取れ、必要に応じて追加的な還元が打ち出される可能性が増加した印象を受けます。

 

*参考記事①  2022-08-04 3,350円 OP

【5019】出光興産/油価タイムラグ縮小も、石炭価格高騰が追い風。自社株買い待ち。

 

*参考記事② 2022-02-11 2,994円 OP

【5019】出光興産/油価高騰で減額後中計は達成の勢い、総還元性向50%で期末に追加還元か。

 

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