【8098】稲畑産業/住友化学の売出しによる需給悪化と、住友ファーマの評価額減少で“板挟み感“。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

image

【8098】稲畑産業(東証プライム)  OP

現在値 3,170円/100株 P/E 8.34  P/B 0.92  3月配当 9月配当・株主優待

化学品専門商社。住友化学系だが稲畑オーナー色も。アジア広域展開。
配当金は3月・9月の計120円配当のため、配当利回りは3.79%となります。

稲畑産業は株主優待制度を実施しており、9月末に100株以上を6ヵ月以上保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.10%となります。

業績を確認していきます。    

■2021年3月期 売上高 5,775億円、営業利益 149億円、EPS 229円 

■2022年3月期 売上高 6,809億円、営業利益 200億円、EPS 374円

■2023年3月期 売上高 7,356億円、営業利益 203億円、EPS 343円 

■2024年3月期 売上高 8,000億円、営業利益 210億円、EPS 376円 ce
□2023年9月2Q 売上高 3,751億円、営業利益 104億円、EPS 227円

□2023年12月3Q 売上高 5,729億円、営業利益 163億円、EPS 302円(2/7)


2023年9月中間期の売上高はYoY+0.5%の3,751億円、営業利益はYoY▲0.8%の104億円となり、ほぼ予算水準となりました。主力の合成樹脂事業は、高機能樹脂において中国の日系自動車メーカー向けが低調だったほか、汎用樹脂も物価高に伴う消費低迷の影響を受け軟調でした。他方、第2の柱である情報電子事業のフラットパネルディスプレイ(FDP)は大型TV向け低調も、車載や有機EL関連は好調で、横ばい圏を確保しました。化学品事業は丸石科学、生活産業事業は大五通商の買収で増収となりました。

 

なお2024年3月期の通期見通しは据え置いており、売上高はYoY+8.8%の8,000億円、営業利益はYoY+3.4%の210億円を見込んでいます。合成樹脂事業は中国軟調も、自動車生産が回復基調にある国内で相殺して横ばい圏、情報電子事業についてはFPDの価格上昇や中国・欧州の屋外向けディスプレイ好調、太陽電池関連の増勢で増益となる見通しです。他方、化学品事業と生活産業事業は上述の新規連結効果で2割増収も、前期の好調反動で減益となります。2月7日開示済の3Qは売上高5,729億円&営業益163億円と計画線で進捗しています。


進行期は上方ローリング後の3年中計「NC-2023」の最終年度の位置付けであり、修正計画においてこの2024年3月期に売上高8,000億円(従予:6,700億円)、営業利益205億円(従予:165億円)を計数目標としています。足許の状況としては、各セグメントともに想定より成長・回復が小甘いものの、円安効果により目標水準を確保する見通しです。今次中計での主要な取組は①主事業の深堀、②成長市場多角化・収益化、③将来投資積極化、④経営高度化、⑤保有アセット見直し、⑥人的資本再活性、の6本となっています。

 

①は情報電子事業での中国における液晶・EL領域、新世代FPDや周辺材、合成樹脂事業におけるコンパウンドに注力します。特にコンパウンドはメキシコ工場(自動車向け)、フィリピン工場(OA向け)等での増産に取り組んでいるものの、北米好調もアジア軟調で需要はまちまちの状況です。②・③については、生活産業事業において臍帯由来細胞の供給といった再生医療分野の強化、北海道におけるブルーベリーやニンニクの生産など農業・食品分野の深耕を進めており、昨年2月にはM&Aによりうなぎ(加工)に強みをもつ大五通商を子会社化しています。

 

主力の一角である情報電子事業でも、太陽電池やリチウムイオン電池を軸に水素発生装置や、小型風力発電、バイオマス発電といった環境負荷低減商材の取扱いを増やす方針です。昨年1月には東洋インキSCHD(4634)とともに米国・ケンタッキー州でリチウムイオン電池商材の量産化を、同年2月には中電や三菱商事系のファンドらと境港で木質専焼のバイオマス発電所の開発を其々公表しています。


株主還元に関しては、今次中計で累進配当政策を導入したほか、総還元性向も50%まで引き上げています。当社は豊富な保有有価証券の売却を進めており(直近6年で400億円程)、足許では想定を大幅に上回って減少しているものの、残り保有株は株価下落のきつい住友ファーマ(4506)の保有分が大きく、還元余資は大きく減少しています。他方で当社を持分法適用としていた住友化学(4005)は当社株を12%程売却しており、やや“板挟み感”があります。


*参考記事① 2023-01-27 2,479円 OP

【8098】稲畑産業/FDP市場の急失速で実態弱含みとみられるが、高水準の株主還元がサポート。

 

*参考記事② 2022-01-25 1,684円 OP 

【8098】稲畑産業/自動車向け“過剰在庫”の恩恵大きいが、見通し保守的で再増額か。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ