【8098】稲畑産業(東証プライム) NT
現在値 2,479円/100株 P/E 6.9 P/B 0.76 3月配当 9月配当・株主優待
化学品専門商社。住友化学系だが稲畑オーナー色も。アジア広域展開。
配当金は3月・9月の計115円配当のため、配当利回りは4.64%となります。
稲畑産業は株主優待制度を実施しており、9月末に100株以上を6ヵ月以上保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.04%となります。
業績を確認していきます。
■2020年3月期 売上高 6,003億円、営業利益 132億円、EPS 188円
■2021年3月期 売上高 5,775億円、営業利益 149億円、EPS 229円
■2022年3月期 売上高 6,809億円、営業利益 200億円、EPS 374円
■2023年3月期 売上高 7,300億円、営業利益 195億円、EPS 358円 ce
□2022年9月2Q 売上高 3,734億円、営業利益 105億円、EPS 168円(11/7)
2022年9月中間期の売上高はYoY+13.6%の3,734億円、営業利益はYoY▲4.8%の105億円で進捗し、増収減益ながらも予算水準は確保しました。主力の合成樹脂事業は、ナフサ高騰による汎用品への価格転嫁のほか、高機能品の単価効果で堅調に推移したほか、化学品事業も同様に単価効果と円安効果で一段増となりました。他方、生活産業事業は好調だった米国シーフードの一巡で反落となったほか、第2の柱である情報電子事業もフラットパネルディスプレイ(FDP)市場の在庫過多影響を受けて大幅減益となり、全社では濃淡の激しい内容となりました。
なお2023年3月期の通期見通しは据え置いており、売上高はYoY+7.2%の7,300億円、営業利益はYoY+2.8%の195億円を見込んでいます。単価効果の発現で好調な合成樹脂、化学品事業が大きく牽引する格好となり、特に海外比の高い合成樹脂のドル円想定レートを下期140円に見直すことで実質増額しています。他方、FPD市場の需要大幅減による情報電子事業の急失速を減額で織り込み、均して期初予想水準を維持しているような状況です。なお、MtoMの為替レートは円高方向のため、実態弱含みとみられます。
進行期は3年中計「NC-2023」の中間年度の位置付けでしたが、終わった初年度で中計目標を超過達成したことから早くも増額しており、修正計画では翌2024年3月期に売上高8,000億円(従予:6,700億円)、営業利益205億円(従予:165億円)に其々増額しています。主要な取組は①主事業の深堀、②成長市場多角化・収益化、③将来投資積極化、④経営高度化、⑤保有アセット見直し、⑥人的資本再活性、の6本立てとなっています。足許2Qで丁度半分折り返しとなりますが、会社側アナウンスによればほぼインライン(バッファ無し)の進捗と判断されます。
①は情報電子事業での中国における液晶・EL領域、新世代FPDや周辺材、合成樹脂事業におけるコンパウンドの拡大を目指します。特にコンパウンドは自動車向けとなるメキシコ工場への増産設備投資を進めるほか、リサイクル・インフレ関連にも投資します。②・③については、生活産業事業において臍帯由来細胞の供給といった再生医療分野の強化、北海道におけるブルーベリーやニンニクの栽培などを農業・食品分野の深耕を進めていますが、主力2事業に比べると収益源とは言い難く、当面は育成段階が続きます。
また、主力の一角である情報電子事業でも、太陽電池やリチウムイオン電池を軸に水素発生装置や、小型風力発電、バイオマス発電といった環境負荷低減商材の取扱いを増やす計画としています。然しながら、今次中計期間では合成樹脂の動向があまりに大きく、単価効果もさることながら、海外売上比増大による為替影響をモロに受けるような状態のため、増額後計画の達成可能性は為替(金利)動向に振らされる展開となりそうです。
他方、株主還元に関しては、今次中計では累進配当政策を導入したほか、これまで30~35%を基本ポリシーとしていた総還元性向を、2022年2月より50%まで引き上げています。この背景として、当社は豊富な保有有価証券の売却を進めており(直近6年で300億円程)、還元余力が向上していることが挙げられます。急激に削減しているものの、足許でもなお235億円程保有しているため、当面は非常に高水準の株主還元が続くものと考えられます。
*参考記事① 2022-01-25 1,684円 OP
【8098】稲畑産業/自動車向け“過剰在庫”の恩恵大きいが、見通し保守的で再増額か。
*参考記事② 2021-01-07 1,404円 OP
【8098】稲畑産業/豊富な政策保有株式の処分で、業績によらず高配当を維持か。
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