【8098】稲畑産業(東証1部) OP
現在値 1,684円/100株 P/E 6.3 P/B 0.56 3月配当 9月配当・株主優待
化学品専門商社。住友化学系だが稲畑オーナー色も。アジア広域展開。
配当金は3月・9月の計70円配当のため、配当利回りは4.16%となります。
稲畑産業は株主優待制度を実施しており、9月末に100株以上を6ヵ月以上保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.75%となります。
業績を確認していきます。
■2018年3月期 売上高 6,221億円、営業利益 59.6億円、EPS 109.9円
■2019年3月期 売上高 6,347億円、営業利益 140.3億円、EPS 211.4円
■2020年3月期 売上高 6,003億円、営業利益 132.2億円、EPS 188.8円
■2021年3月期 売上高 5,775億円、営業利益 149.7億円、EPS 229.1円
■2022年3月期 売上高 6,000億円、営業利益 160.0億円、EPS 265.8円 ce
□2021年9月2Q 売上高 3,285億円、営業利益 110.7億円、EPS 224.5円(11/8)
2021年9月中間期の売上高はYoY+22.9%の3,285億円、営業利益はYoY+78.3%の110.7億円で進捗し、期初予想を上回ってトップライン段階から2割超となりました。主力の合成樹脂事業については、新型肺炎禍で低調だった自動車向けが急回復したほか、化学品事業についても樹脂原料、塗料・インキ、建築関連が堅調に推移しました。生活産業事業もインバウンド喪失で日用品原料が低調だったものの、回転寿司向け加工品が堅調でした。また、第2の柱である情報電子事業についても、TV・NotePC向けの液晶パネル原材料や、太陽光電池・EV向け二次電池が軒並み好調に推移し、全セグメントで大幅増益となりました。
進行期である2022年3月期の通期見通しは1Q時点で増額しており、売上高はYoY+10.3%の6,000億円(従予:UNCH)、営業利益はYoY+6.9%の160.0億円(従予:145.0億円)に修正しています。合成樹脂、化学品事業についても上期からの流れで自動車向けの回復が見込まれるものの、世界的なサプライチェーン混乱で完成車メーカーが計画通りの増産が出来るか不透明であるほか、上期の在庫積み増しによる反動減も予想され、不透明感も残ります。他方、生活産業事業や情報電子事業は期末まで引き続き堅調推移が見込まれることから、高い業績進捗率を鑑みると、全社見通しとしては再増額圏にあるものと判断しています。
今期は新3年中計「NC-2023」の初年度となっており、最終年度の2024年3月期に売上高6,700億円(CAGR5%)、営業利益165億円(CAGR3%)を計画しています。主要な取組は①主事業の深堀、②成長市場多角化・収益化、③将来投資積極化、④経営高度化、⑤保有アセット見直し、⑥人的資本再活性、の6本立てとなっています。①は情報電子事業での中国における液晶・EL領域、新世代FPDや周辺材、合成樹脂事業におけるコンパウンドの拡大を目指します。特にこのコンパウンドは自動車向けのメキシコ工場や、OA向けのフィリピン工場ともに足許で販売数量/単価が伸長しているほか、半導体不足の一巡により翌期以降は一段増が見込まれるため、ライン増設等が検討されています。
②・③については、生活産業事業において臍帯由来細胞の供給といった再生医療分野の強化や、北海道におけるブルーベリーやニンニクの栽培などを農業・食品分野の深堀もしていますが、収益化にはなお多くの時間を要する見通しです。また、情報電子事業では、太陽電池やリチウムイオン電池を軸に水素発生装置や、小型風力発電、バイオマス発電といった環境負荷低減商材の取扱いを増やす計画としていますが、少なくとも本中計3年間においては合成樹脂事業の影響があまりに大きく、世界的な自動車生産の回復次第ではあるものの、中計の目標営業益水準は下手するとこの初年度で超過達成してしまう勢いとなっています。
他方、株主還元に関しては、従来「総還元性向30%~35%」を還元ポリシーとしてきましたが、その方針を踏襲するとともに、今次中計では累進配当政策を導入しています。この背景として、当社は豊富な保有有価証券の売却を進めており、直近6年250~300億円の政策保有株式を処分しており、還元余力が向上していることが挙げられます。また、足許でもなお650億円程の有価証券を有しているほか、ROE8%指標も新たに導入しており、自己資本の過剰な積み上がりの抑制も期待されることから、現状年70円の予想配当も更に上積みされる公算が高そうです。
*参考記事① 2021-01-07 1,404円 OP
【8098】稲畑産業/豊富な政策保有株式の処分で、業績によらず高配当を維持か。
*参考記事② 2020-08-08 1,220円 OP
【8098】稲畑産業/成長投資進まず財務余力もて余すが、配当据置の公表はポジティブ。
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