【8098】稲畑産業(東証1部) OP
現在値 1,220円/100株 PER8.65 PBR0.50 3月配当 9月配当・株主優待
化学品専門商社。住友化学系だが稲畑オーナー色も。アジア広域展開。
配当金は3月・9月の計53円配当のため、配当利回りは4.34%となります。
稲畑産業は株主優待制度を実施しており、9月末に100株以上を保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.16%となります。
業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 5,866億円、営業利益 126.1億円、EPS 156.3円
■2018年3月期 売上高 6,221億円、営業利益 59.6億円、EPS 109.9円
■2019年3月期 売上高 6,347億円、営業利益 140.3億円、EPS 211.4円
■2020年3月期 売上高 6,003億円、営業利益 132.2億円、EPS 188.8円
■2021年3月期 売上高 5,500億円、営業利益 95.0億円、EPS 141.2円 ce修正(8/6)
□2020年6月1Q 売上高 1,287億円、営業利益 22.2億円、EPS 33.5円 (8/6)
□2020年9月2Q 売上高 2,600億円、営業利益 40.0億円、EPS 63.1円 ce修正(8/6)
2020年3月期の売上高は前期比5.4%減の6,003億円、営業利益は同5.7%減の132.2億円となり、売上高・利益ともに期初予算の9掛け程の水準で着地しました。主力の合成樹脂事業については、自動車向けの高機能樹脂が堅調だったものの、樹脂価格の下落と期末の新型肺炎影響に足を引っ張られ横ばい圏となりました。また第2の柱である情報電子事業についても、中国パネルメーカー向け偏光板は堅調だったものの、LED封止剤やOA品(インクジェットプリンターや複写機)が苦戦し、当該セグも減益となりました。また、化学品事業や生活産業事業も軒並み低調に推移した結果、全てのセグで減益となったものの、最終利益だけは有価証券売却益の計上により予算比で上振れさせています。
2021年3月期の通期予算については新型肺炎の影響により当初非公表でしたが、1Q時点で公表しており、売上高は8.4%増の5,500億円、営業利益は28.2%減の95.0億円を予想しています。主力の合成樹脂事業におけるフィリピン・インドネシア・タイといった東南アジア分野が、ロックダウンの影響を受けて特に苦戦しているような状況であるほか、化学品事業の自動車業界向けや、情報電子事業のOA分野もテレワークの進展等により需要の減退が見込まれます。8月6日公表の1Qについては、前年1Q比の売上高が16.1%減、営業利益が36.5%に沈んでいるものの、会社側は1Qが底で期末にかけて緩やかな回復軌道を前提としていることから、昨今の状況を鑑みるにこの見通しが強い(新型肺炎影響の織り込みが甘い)可能性がある点には注意が必要です。
今期は4年中計「NC-2020」の最終年度となっており、当初この2021年3月期に売上高7,300億円(CAGR5.6%)、営業利益155億円(CAGR5.3%)を見込んでいましたが、新型肺炎の影響もあり、今次公表の予算は全くこの水準に届かないことから、事実上の大幅未達が確定しました。本来の重点施策は海外事業の強化により、海外比率を53%→70%にまで引き上げるほか(直近実績も53%なので増えていない)、従来から注力してきた自動車・医薬・環境・エネルギー等の成長分野にくわえ、農業分野での本格展開を狙う方針でしたが、実際に伸びたのは自動車向けの高機能樹脂や液晶原料など一部に限られており、最終年度の新型肺炎の影響を色濃く受けるものの、その前から進捗に物足りなさを感じる状況ではありました。
例えば生活産業事業における医薬品原料などは高成長分野として期待がかかっていましたが、中国の環境規制や新型肺炎の影響で伸びておらず、農業分野も北海道でブルーベリーやニンニクの栽培を開始していますが、収益化するまでには相応の時間を有する見通しであり、次世代事業の育成が殆ど出来ていない印象です。その投資が進んでいないことの裏返しで、中計に掲げる財務目標の「ネットD/Eレシオ0.4倍以下」については、足許水準で0.16倍と極めて良好な水準を維持出来ているため、今後はこの財務余力を積極的に活用したMA案件等があれば、新中計での新しい成長ストーリーが期待出来るかもしれません。
なお株主還元に関しては、総還元性向30%~35%をターゲットとしており、うち配当性向を25%程度としていますが、この1Q時点で未定だった配当予想を据え置きの年53円とし公表しています。当社は豊富な保有有価証券の売却を進めており、業績の仕上がり如何によらずそれを原資に配当する意向があるとみられるため、今回もその傾向が確認出来たことは素直にポジティブと考えています。
*参考記事① 2017-12-30 1,709円 OP
独子会社事件で、新4年中計は出端挫かれる・稲畑産業(8098)。
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