【8098】稲畑産業(東証1部) ---
現在値 1,709円/100株 PER10.4 PBR0.75 3月配当株主優待 9月配当
化学品専門商社。住友化学系だが稲畑オーナー色も。アジア広域展開。
配当金は3月・9月の計40円配当のため、配当利回りは2.34%となります。
稲畑産業は株主優待制度を実施しており、9月末に100株以上を保有する
株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待
利回りは約2.92%となります。
業績を確認していきます。
■2014年3月期 売上高 5,611億円、営業利益 109億円、EPS 137.0円
■2015年3月期 売上高 5,721億円、営業利益 107億円、EPS 137.2円
■2016年3月期 売上高 5,770億円、営業利益 113億円、EPS 151.9円
■2017年3月期 売上高 5,866億円、営業利益 126億円、EPS 156.9円
■2018年3月期 売上高 6,200億円、営業利益 90.0億円、EPS 162.6円 ce修正
□2017年9月中 売上高 3,049億円、営業利益 29.3億円、EPS 44.4円(11/14)
2017年9月期の売上高は前年同期比5.6%増の3,049億円、営業利益は同
48.2%減の29.3億円となり、利益は期初予想水準の半分以下となりました。
主力の合成樹脂事業については、自動車関連を中心に国内外で販売が
伸長し計画をクリアしたものの、情報電子事業における独子会社において
太陽電池モジュール在庫の低与信相手先への無断売却事件が発生した
ため、本件の手当に31億円もの貸倒引当金を積み増す結果となりました。
2018年3月期通期予算についても減額しており、売上高が前期比5.7%増
の6,200億円(従予:UNCH)、営業利益は28.7%減の90億円(従予:115億円)
に修正しています。上期堅調に推移した合成樹脂事業は原油価格上昇
とメキシコ販社等の新規連結により増収を見込んでいるほか、生活産業
事業も回転寿司向け寿司ダネ工場の通期稼働効果により、2桁の増収・
増益となる見込みです。しかしながら、既述の太陽電池無断売却事件の
引当金の影響があまりに大きく、大幅な営業減益は不可避の状況です。
(※なお有価証券の売却により、ボトムラインは予算維持となっています)
今期は4年中計「NC-2020」の初年度となっており、最終年度となる2021
年3月期に売上高7,300億円(CAGR5.5%)、営業利益155億円(CAGR5.5%)
を見込んでいます。重点施策は海外事業の強化により、海外比率を53%
→70%にまで引き上げるほか、従来から注力してきた自動車・医療・環境
・エネルギー等の成長分野にくわえ、農業分野での本格展開を狙います。
伸びは緩くなってきたものの、情報電子事業の液晶部材や合成樹脂事業
のコンパウンド事業等を収益源に、これらの注力分野の拡大と海外での
売上拡大を図る皮算用でしたが、先の事件により、新中計開始間もない
1Qから決算遅延&中計初年度予算から未達となったのは痛いところです。
参考情報として、海外売上比率の高い当社の為替センシティビティーは、
ドル円が1円円高になると、売上高▲35億円・営業利益▲0.4億円程度の
影響があります。ただ予算信頼度に関しては、直近10年間で営業利益
予算が10%以上下方乖離して落着したのは、リーマンの際の1年度のみ
となっており、会社の予算精度は比較的高いレベルを維持しています。
なお株主還元に関しては、総還元性向30%~35%をターゲットとしており、
うち配当性向を25%程度とし、今期は前期据置きの40円配当を予想して
おります。したがって残りは自社株買いに充てられる計算となりますが、
今期は12月中旬までに既に6.8億円分の自社株買いを実行済みのため
現時点での総還元性向は31.5%超となり、まだ余裕残しのため、かような
状況ではあるものの期末にかけて増配や追加自社株買いも期待される
ところではあります。
余談ですが、当社は化学専門商社首位の長瀬産業(8012)と業界の双璧
をなしており、関西地盤である点や祖業、業容、企業規模も似通っており
強烈にベンチマークしているものと思われます。具体的には長瀬産業が
本年2月に株主数の増大を目指して株主優待の拡充策を掲げたわずか
2か月後に当社も株主優待の拡充策を開示してきています。従ってこの
2社に関してはセットで見るようにしていくのが、効果的かもしれません。
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