【8084】RYODEN/主要取引先ルネサスの特約店契約終了が痛打、興味は株主還元のみ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8084】RYODEN(東証プライム)  OP

現在値  2,576円/100株  P/E 11.2  P/B 0.67  3月配当 9月株主優待

三菱電機系商社で最大。FA、ビル昇降機・空調機から半導体まで幅広い。
配当は3月/9月の年2回・92円配当のため、配当利回りは約3.57%となります。

 

菱電商事は株主優待制度を導入しており、3月末現在の100株以上保有の株主に対して、2,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.34%となります。なお、3年以上保有継続する場合は1,000円分が追加されますので、同利回りは約4.73%となります。


業績を確認をしていきます。

■2021年3月期 売上高 1,968億円 営業利益 34.1億円 EPS 107.7円 

■2022年3月期 売上高 2,291億円 営業利益 70.6億円 EPS 229.9円 

■2023年3月期 売上高 2,603億円 営業利益 93.8億円 EPS 245.9円 

■2024年3月期 売上高 2,630億円 営業利益 73.0億円 EPS 228.7円 ce修正
□2023年9月2Q 売上高 1,298億円 営業利益 42.3億円 EPS 132.7円 

□2023年12月3Q 売上高 1,969億円 営業利益 62.7億円 EPS 197.8円(1/30)

2023年9月中間期の売上高はYoY+2.2%の1,298億円、営業利益はYoY▲11.1%の42.3億円となり、減益ながらも予算を上振れました。構成比の大きいエレキ事業は、車載の在庫調整影響や海外半導体の反動減が想定より軽度だったほか、国内のインフォテインメント機器やメモリ等が好調に推移しました。FAシステム事業は半導体製造業向けが依然低調だったものの、EV等新規需要が下支えしたほか、冷熱システム事業もAC販売が好調に推移しました。


進行期である2024年3月期の見通しは中間時点で増額しており、売上高はYoY+1.0%の2,630億円(期予:UNCH)、営業利益はYoY▲22.2%の73.0億円(期予:70.0億円)を予想しています。エレキ事業の見通しが不透明なほか、投資先行のX-Tech事業は依然水面下となるものの、FAシステム・冷熱ビルシステムの両事業は顧客の投資意欲堅調で十分な受注残を確保しており、減益幅が縮小する見通しです。尚、1月30日に開示済の3Qの売上高は1,969億円&営業益62.7億円で進捗しており、上振れが濃厚です。


進行期は2025年3月期を最終年度とする5年中計の4年度目にあたり、翌期に売上高2,600億円(CAGR2.5%)、営業利益100億円(CAGR13%)を目指しています。注力分野として、①スマート農業、②ビデオネットワーク等ICT、③RFIDタグ等クラウド化、④クラウド型施設環境管理システム、⑤ADAS等自動車系先進分野、等を挙げています。

 

①は世界的食糧難で植物工場市場が年率20%以上成長していることから、植物工場首位のファームシップ社と世界初の法蓮草の量産化工場“Block FARM”を2022年に完工させています。同工場では、露地栽培比100倍の生産効率で完全周年栽培と高付加価値化を実現するほか、今後は多品種・変量栽培を目指します。なお、ファームシップ社との協業推進のため、株式の追加取得により持分法適用(取得後35%)に収めています。

 

DX関連としては②・③・④への取組がみられ、普及段階にある③のRFIDタグについては、自動車業界を相手先にクラウドによる部材・部品のマネジメントシステムを展開する計画です。また、④についてははビル・工場等施設向けにエネルギー等を管理する“Remces”という統合監視制御システムを、病院向けには10年契約型のパッケージITシステムの拡販を図ります。

 

これらの取組により営業益100億円を目指す目論見でしたが、2023年2月に半導体製品の有力仕入元であるルネサスエレクトロニクスとの特約店契約が切れただけでなく、本年3月を以って一次代理店を介した仕入れも出来なくなり、ルネサス絡みの数字は翌期から“蒸発”することとなりました。そのため、売上高▲470億円/営業益▲6億円が翌期のベースから切り下がることとなり、中計達成はほぼ困難な見通しとなりました。

 

なお財務面については、ネット無借金状態&自己資本比率は50.9%程と好財務を維持しています。株主還元については、PBR1倍水準の回復を志向しつつも、還元ポリシーの見直しをしています。新方針は「安定配当をベースとしつつも、配当性向40%~60%」+「自己株買いを適宜実施」としており、進行期配当は年18円の増配となる年92円配(配当性向40.2%)を予想しています。
 

*参考記事①  2023-09-20 2,394円 OP

【8084】菱電商事/半導体市況の一服感意識されるが、PBR1倍志向の還元強化は評価できよう。

 

*参考記事② 2022-08-16  1,638円 NT

【8084】菱電商事/スマート農業が進捗するが、中計の営業益100億円目標は過大感。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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