【8084】菱電商事/半導体市況の一服感意識されるが、PBR1倍志向の還元強化は評価できよう。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8084】RYODEN(東証プライム)  OP

現在値  2,394円/100株  P/E 10.8  P/B 0.65  3月配当 9月株主優待

三菱電機系商社で最大。FA、ビル昇降機・空調機から半導体まで幅広い。
配当は3月/9月の年2回・80円配当のため、配当利回りは約3.34%となります。

 

菱電商事は株主優待制度を導入しており、3月末現在の100株以上保有の株主に対して、2,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.17%となります。なお、3年以上保有継続する場合は1,000円分が追加されますので、同利回りは約4.59%となります。


業績を確認をしていきます。

■2021年3月期 売上高 1,968億円 営業利益 34.1億円 EPS 107.7円 

■2022年3月期 売上高 2,291億円 営業利益 70.6億円 EPS 229.9円 

■2023年3月期 売上高 2,603億円 営業利益 93.8億円 EPS 245.9円 

■2024年3月期 売上高 2,630億円 営業利益 70.0億円 EPS 219.9円 ce

□2023年6月1Q 売上高 634億円 営業利益 17.6億円 EPS 49.9円(7/28)
□2023年9月2Q 売上高 1,280億円 営業利益 34.0億円 EPS 100.7円 ce

2023年3月期の売上高はYoY+13.6%の2,603億円、営業利益はYoY+32.8%の93.8億円となり、対前・対予算で増収増益となりました。構成比の大きいエレキ事業は車載・産業機器・インフォテインメント向けが軒並み好調に推移したほか、海外の半導体関連(アナログ・パワー・メモリ)も好調に推移しました。また、FAシステム事業も半導体製造業向けこそ低調だったものの、一般案件で持ち直したほか、冷熱システム事業も横ばい圏を確保しました。なお、利益面については、為替の有利影響も作用して一段増となりました。


進行期である2024年3月期の予算については、売上高はYoY+1.0%の2,630億円、営業利益はYoY▲25.4%の70.0億円を予想しています。FAシステム事業は半導体製造装置の低調が継続するものの、堅調な工作機・産機向けで打ち返す公算です。他方、絶好調だったエレキ事業については、在庫調整影響の見込まれる車載の反落や、海外半導体の反動減で逆に全社業績の足を引っ張る見通しです。尚、7月28日に開示済の1Qの売上高は634億円&営業益17.6億円で進捗しており、概ね計画線の推移と解されます。


進行期は2025年3月期を最終年度とする5年中計の4年度目となり、最終的に売上高2,600億円(CAGR2.5%)、営業利益100億円(CAGR13%)を目指しています。注力分野として、①スマート農業、②ビデオネットワーク等ICT、③RFIDタグ等クラウド化、④クラウド型施設環境管理システム、⑤ADAS等自動車系先進分野、等を挙げています。

 

①は世界的食糧難で植物工場市場が年率20%以上成長していることから、植物工場首位のファームシップ社と世界初の法蓮草の量産化工場“Block FARM”を昨年完工させています。同工場では、露地栽培比100倍の生産効率で完全周年栽培と高付加価値化を実現するほか、今後は多品種・変量栽培を目指します。なお、ファームシップ社との協業推進のため、株式の追加取得により持分法適用(取得後35%)に収めています。

 

DX関連としては②・③・④への取組がみられ、普及段階にある③のRFIDタグについては、自動車業界を相手先にクラウドによる部材・部品のマネジメントシステムを展開する計画です。また、④についてははビル・工場等施設向けにエネルギー等を管理する“Remces”という統合監視制御システムを、病院向けには10年契約型のパッケージITシステムの拡販を図ります。

 

これら取組により、5年で営業利益100億円を目指す目論見でしたが、活況裡の半導体市況により、終わった期で営業益93億円(過去最高益)を叩き出しています。然しながら、比較的進捗しているスマート農業も収益化に要時間とみられるほか、“追い風”の半導体市況も先行き不透のため、出来上がりの数字の出来ほどは達成可能性は高く無いものと解されます。

 

なお財務面については、70億円程のネット現金を丸抱えしており、自己資本比率は52.8%程となっています。株主還元については、PBR1倍水準の回復を志向しつつも、還元ポリシーの見直しをしています。新方針は、「安定配当をベースとしつつも、配当性向40%~60%」+「自己株買いを適宜実施」としており、進行期配当は年6円の増配の年70円配(配当性向36.4%)を予定しています。


*参考記事① 2022-08-16  1,638円 NT

【8084】菱電商事/スマート農業が進捗するが、中計の営業益100億円目標は過大感。

 

*参考記事② 2021-07-15  1,661円 OP

【8084】菱電商事/ESG傾注などテーマ性強いが、中計目標は過大。自社株買いに期待。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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