【8084】菱電商事(東証1部) NT
現在値 1,661円/100株 P/E 12.0 P/B 0.52 3月配当 9月株主優待
三菱電機系商社で最大。FA、ビル昇降機・空調機から半導体まで幅広い。
配当は3月/9月の年2回・56円配当のため、配当利回りは約3.37%となります。
菱電商事は株主優待制度を導入しており、3月末現在の100株以上保有の株主に対して、2,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.57%となります。なお、3年以上保有継続する場合は1,000円分が追加されますので、同利回りは約5.17%となります。
業績を確認をしていきます。
■2018年3月期 売上高 2,364億円 営業利益 50.7億円 EPS 165.4円
■2019年3月期 売上高 2,403億円 営業利益 56.2億円 EPS 172.0円
■2020年3月期 売上高 2,300億円 営業利益 55.5億円 EPS 177.7円
■2021年3月期 売上高 1,968億円 営業利益 34.1億円 EPS 107.7円
■2022年3月期 売上高 2,200億円 営業利益 43.0億円 EPS 138.0円 ce
□2021年9月中 売上高 1,060億円 営業利益 14.0億円 EPS 46.0円 ce
2021年3月期の売上高は、前期比14.4%減の1,968億円、営業利益は同38.6%減の34.1億円と2桁の減収減益となり、対予算では減収増益となりました。FAシステム事業については、新型肺炎禍で半導体製造装置・工作機械向けが期後半まで低調だったほか、年を通して内外の自動車生産が鈍化したことにより、売上高構成比の大きいエレキ事業ともども減収減益となりました。また、冷熱システム事業については、好採算の五輪案件の剥落影響があったほか、新型肺炎禍により建物竣工が遅延、中止した案件が多く、冷凍冷蔵など一部好調な分野があったものの穴埋めには至りませんでした。
進行期である2022年3月期通期見通しについては、売上高は11.8%増の2,200億円、営業利益は同25.9%増の43.0億円と反転増を計画しています。FAシステム事業については5G関連投資や半導体製造装置の回復基調の継続が見込まれるほか、冷熱システム事業も換気対策や暑熱対策ソリューションが堅調に推移する見通しです。なお、期末時点の受注残高がかなりの高水準で積み上がっており、FAの前年同時期比13%増の84億円をはじめ、エレキ事業については同2倍の445億円を確保しているため、2桁の増収増益となる業績予想の蓋然性が高いものと考えています。他方、ICTシステム事業については、野菜工場(システム)の自社製造品への切替を実施しており、受注抑制の端境期となるため減収減益となります。
進行期は2025年3月期を最終年度とする5年中計の2年度目となり、最終的に売上高2,600億円(CAGR2.5%)、営業利益100億円(CAGR13%)の達成を目標としています。注力取組分野として、①スマート農業、②ビデオネットワーク等ICT、③RFIDタグ等クラウド化、④クラウド型施設環境管理システム、⑤ADAS等自動車系先進分野、などが挙げられています。特に注力しているのが、ICTシステム事業に入る①の植物工場であり、植物工場で首位(設備機材シェアは当社が首位)のファームシップ社と合弁会社を設立し、沼津に世界初の法蓮草の量産化工場の竣工を来年3月に控えています。今後の世界的な食糧難の趨勢が確実となる中で、当該工場では露地栽培の100倍(!)の生産効率により法蓮草の完全周年栽培の実現を目指しており、高い将来性が期待されます。
この植物工場が最たる例ですが、全般的にESG路線に傾斜させてきており、反射板付きの光効率の高いLED光源の自社開発のほか、メガソーラーによる自家発電と環境制御の統合IoTシステムによる脱炭素化と省エネ化などテーマ性の強い商材を強化しています。ESG以外では、DX関連として②・③・④への取組がみられ、特に今後爆発的に普及するとみられる③のRFIDタグについては、得意の自動車業界を相手先に、クラウドによる部材・部品のマネジメントシステムを展開する計画です。但し、例挙したこれらの次世代商材については、まだ拡販段階に達していないものが多く、現時点では既存事業の延長線上の成長以外は可視性が低いことから、中計に掲げる営業利益100億円は過大であり、未達の公算が高いと解されます。
財務面については、4億円ほどの借金をネットして200億円近い潤沢なネット現金を抱えており、大変な好財務を誇っています。株主還元については、年56円(配当性向40.6%)の据置を予定しており、中長期的な安定配当ポリシーを謳っていることから増配は見込みずらいものの、今次中計に「ROE8%(実績は3.3%)」目標を掲げているため、中計期間の何処かのタイミングで自社株買いを実行してくる可能性が高いと考えています。
*参考記事① 2020-07-29 1,486円 OP
【8084】菱電商事/下期の急回復想定はやや過大な印象だが、高配当には安心感。
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