【8084】菱電商事/下期の急回復想定はやや過大な印象だが、高配当には安心感。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_0706.jpg

【8084】菱電商事(東証1部)  NT

現在値 1,486円/100株 PER14.6 PBR0.48 3月配当 9月株主優待

三菱電機系商社で最大。FA、ビル昇降機・空調機から半導体まで幅広い。

配当は3月/9月の年2回・56円配当のため、配当利回りは約3.77%となります。

 

菱電商事は株主優待制度を導入しており、3月末現在の100株以上保有の株主に対して、2,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.11%となります。なお、3年以上保有継続する場合は1,000円分が追加されますので、同利回りは約5.78%となります。


業績を確認をしていきます。
■2017年3月期 売上高 2,193億円 営業利益 27.3億円 EPS 64.0円 

■2018年3月期 売上高 2,364億円 営業利益 50.7億円 EPS 165.4円 

■2019年3月期 売上高 2,403億円 営業利益 56.2億円 EPS 172.0円 

■2020年3月期 売上高 2,300億円 営業利益 55.5億円 EPS 177.7円

■2021年3月期 売上高 2,090億円 営業利益 31.0億円 EPS 101.3円 ce
□2020年9月中 売上高 900億円 営業利益 2.0億円 EPS 6.9円 四e

2020年3月期の売上高は、前期比4.3%減の2,300億円、営業利益は同1.2%減の55.5億円となり、ほぼ期初予算通りの着地となりました。FAシステム事業については、米中貿易摩擦の影響により、スマホ・半導体向けが低調だったほか、売上高構成比の大きいエレキ事業についても、ADAS(先進運転支援システム)分野など一部好調な分野はあったものの、内外の自動車生産の鈍化により、当該セグは減収減益となりました。一方、冷熱システム事業については、再開発案件の増加や学校空調関連の受注増加により好調だったほか、ICT施設システム事業についても医療・農業分野等が底堅く推移し、好不調による入り繰りがあるものの全社合計では予算並みとなりました。


なお、進行期である2021年3月期通期の予算については期初時点から公表しており、売上高は9.2%減の2,090億円、営業利益は同44.2%減の31.0億円を計画しています。FAシステム事業については年度後半からの半導体市場の回復を見込むほか、ICT施設システム事業も医療・農業の引き合いを背景に概ね横ばいでの推移を想定してます。一方、冷熱システム事業については、五輪関連需要や産業用試験需要の減少により減益を見込むほか、エレキ事業についても引き続き車載向けの低調推移を予想しています。全社トータルの考え方としては、新型肺炎影響は上期で収束、下期で大幅な挽回を見込んでいるため、売上高で250億円・営業利益で20億円ほどしかダウンサイドを織り込んでおらず、予算上は4割超の減益ながら、やや過大感もあります。


当社は今般2025年3月期を最終年度とする新5年中計を公表しており、売上高2,600億円(CAGR2.5%)、営業利益100億円(CAGR13%)を見込んでいます。注力取組分野として、①スマート農業、②ビデオネットワーク等ICT、③RFIDタグ等クラウド化、④クラウド型施設環境管理システム、⑤ADAS等自動車系先進分野、などが挙げられています。内容的には昨今流行りのESG/SDGsに無理やり寄せていった定性的な印象も受けるものの、①の植物工場については今後の世界的な食糧難の趨勢が確実であるほか、当社のFA、電子デバイス、冷熱システムなど出番が多く、コンサル型で手広い受注が期待出来るため、中長期的な成長性が期待されます。③RFIDも市場成長が確実視されますが、覇権奪取に向けプレイヤーの一段増が見込まれるので、当社が何処まで食い込めるかは微妙なところです。

 

ということで、本中計は新型肺炎後を織り込んだ上で走り出しさせているものの、数値的にはかなり意欲的な印象であり、先に挙げた先進的な注力取組分野が複数結実しない限り難しいとみられ、後は親の三菱電機が何処まで当社取扱商品の領域を成長させる意志があるか・・・といった親会社頼りの部分が大きいかと思われます。

 

財務面については、2億円ほどの借金をネットしてなお200億円近い潤沢な手元現金を抱えています。かような状況であるほか、会社側も中長期的な安定配当を謳っているため、業績の仕上がりの如何によらず期初の配当予想である年56円は維持される公算が極めて高いと考えています。一方、自社株買いについては、今次中計に「ROE8%(現状は5.7%)」目標を掲げているほか、実際に買付への意欲も示しているものの、実際の買付は中計の後半以降になるものと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村