【3861】王子ホールディングス/中国パルプ需要軟調で下方修正も、PBR対策で増配を迫られよう。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3861】王子ホールディングス(東証プライム) OP

 

現在値 576円/100株  P/E 10.0  P/B 0.55  3月配当優待 9月配当優待

 

1873年設立。製紙国内首位。段ボール、紙パルプ、感熱紙のアジア・南米展開など海外先行。

配当は3月末・9月末の年2回・合計16円配当のため、配当利回りは2.78%となります。

 

王子ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末に10単元株を保有する1年超の株主に対して、4,180円分の自社製品(概算;ネピア等)カタログを進呈していますので、その場合の配当優待利回りは約3.50%となります。

 

業績を確認していきます。

■2022年3月期 売上高 1兆4,701億円、営業利益 1,201億円、EPS 88.3円 

■2023年3月期 売上高 1兆7,066億円、営業利益 848億円、EPS 57.0円 

■2024年3月期 売上高 1兆7,600億円、営業利益 820億円、EPS 57.5円ce修正(11/7) 

□2023年9月2Q 売上高 8,470億円、営業利益 388億円、EPS 31.9円 

□2023年12月3Q 売上高 1兆2,929億円、営業利益 563億円、EPS 42.7円(2/5)

 

2023年9月中間期の売上高はYoY+1.1%の8,470億円、営業利益はYoY▲3.9%の388億円となり、対前・対計画で減益となりました。生活産業資材事業は、東南アジアをはじめとする海外は段ボール(原紙)需要が低調だったものの、国内は板紙・家庭紙の価格転嫁による採算性改善で増収増益となりました。一方で利益柱の資源環境分野は、パルプ市況の下落は概ね想定線(広葉樹790$→585/㌧、針葉樹$920→$765/㌧)だったものの、PanPac火災による操業度低下・数量減で大幅減益となりました。

 

なお2024年3月期の通期見通しは2Qで減額しており、売上高がYoY+3.1%の1兆7,600億円(期予:1兆8,000億円)、営業利益はYoY▲3.3%の820億円(期予:1,000億円)と一転して減益を予想しています。為替前提をMtoMでドル円150円/USD・伯レアル4.9/USD、NZD1.72/USDで引き直し、生活産業資材事業の段ボール需要回復の遅れと、機能材事業における内外での感熱紙の需要低下など実勢を織り込みます。2月5日開示済の3Qは売上高1兆2,923億円&営業益563億円で進捗しており、減額見通し並みの推移が確認されます。

 

当社は2025年3月期を最終年度とする3年中計(終期は1年後倒済)で、営業利益を+400億円となる1,500億円まで引き上げる計画としています。国内はDX化による中長期的な印刷用紙需要の趨勢減が見込まれることから、洋紙工場から段ボール原紙工場への転換を進めます。また、2021年には伯パルプ会社のセニブラを伊藤忠から完全買収したほか、昨年10月には

フィンランドを中心に環境配慮型梱包資材を手掛けるWalki(年商1,100億円)を買収しており、海外売上比率を現状の3割強から4割に拡大させます。

 

今次中計の投資は創出CF6,000億円のうち4,000億円を設備投資に投じ、栃木・マレーシア・ベトナムに段ボール工場を新設するほか、福島工場おむつラインの増設、滋賀工場フィルムラインの増設にくわえ、徳島のバイオマス工場の設備拡充等を実施します。生活産業資材事業は設備拡充による生産拡大とともに、原価増の価格転嫁で数量減を補完する方針です。

 

利益柱の資源環境事業は、中国当局の政策や先物等の市況影響が強く、中国のパルプ需要の多寡で当社業績は大きく振らされる格好です。中国経済は足許なお弱含みの状況が続いていることから浮上には相応の時間を要するものの、会社側ではパルプの生産量を確保するため、上述の伯セニブラにくわえ、NZでFibre Solutionsも2022年に完全子会社化しています。

 

財務の状況については、自己資本比率42.7%&D/E0.8倍と健全な状況を維持しています。配当は据置の年16円(配当性向は27.8%)を予想しているものの、今次中計では累進配当を定めるほか、12月開示の企業価値向上レポートでは0.5倍台に沈んだPBR評価改善のために「ROE10%&配当性向30%」を目指すことを公表しているため、減益ながらも増配を迫られる公算が高そうです。
 

*参考記事① 2023-10-12  625円 OP

【3861】王子ホールディングス/原燃料の価格転嫁が進むが、パルプ市況軟化で弱含みの状況。

 

*参考記事② 2022-08-26 562円 OP

【3861】王子ホールディングス/原燃料の上昇痛打も、パルプ市況高騰で“打ち返し”に期待。

 

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