【3861】王子ホールディングス/原燃料の価格転嫁が進むが、パルプ市況軟化で弱含みの状況。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

image

【3861】王子ホールディングス(東証プライム) OP

 

現在値 625円/100株  P/E 9.54  P/B 0.65  3月配当優待 9月配当優待

 

1873年設立。製紙国内首位。段ボール、紙パルプ、感熱紙のアジア・南米展開など海外先行。

配当は3月末・9月末の年2回・合計16円配当のため、配当利回りは2.56%となります。

 

王子ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末に10単元株を保有する1年超の株主に対して、4,180円分の自社製品(概算;ネピア等)カタログを進呈していますので、その場合の配当優待利回りは約3.22%となります。

 

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 1兆3,589億円、営業利益 847億円、EPS 50.1円 

■2022年3月期 売上高 1兆4,701億円、営業利益 1,201億円、EPS 88.3円 

■2023年3月期 売上高 1兆7,066億円、営業利益 848億円、EPS 57.0円 

■2024年3月期 売上高 1兆8,600億円、営業利益 1,000億円、EPS 65.5円 ce 

□2023年6月1Q 売上高 4,203億円、営業利益 217億円、EPS 17.7円(8/7)

□2023年9月2Q 売上高 8,600億円、営業利益 450億円、EPS 28.2円 ce

 

2023年3月の売上高はYoY+16.1%の1兆7,066億円、営業利益はYoY▲29.4%の848億円となり、2桁増収ながらも予算未達となりました。経済活動正常化で段ボール(原紙)/白板紙/家庭紙といった生活産業資材が内外で回復したほか、価格転嫁やマレーシア新工場稼働も寄与して増収となり、同様に機能材も価格転嫁とブラジル工場の設備増強で堅調に推移しました。利益柱の資源環境分野についても、パルプ市況の上昇(広葉樹635→790$/㌧、針葉樹$820→$920/㌧)で増収増益となったものの、全社的に原燃料価格高騰の影響を受け、3割弱の減益となりました。

 

進行期である2024年3月期の予算については、売上高がYoY+5.5%の1兆8,000億円、営業利益はYoY▲17.9%の1,000億円と増収増益を見込んでいます。為替前提はドル円130円/USD・伯レアル5.2/USD、NZD1.60/USDを前提としています(※USD高は減益方向が強い)。生活産業資材は引き続き段ボール/原紙類で価格転嫁効果が進む一方、新聞紙・印刷紙を中心に数量低調、機能材も内外で感熱紙等の数量弱含みが想定されます。また、資源環境分野についても、パルプ市況の急落(前提:広葉樹555$/㌧、針葉樹$740/㌧)を織り込み、全社で2桁減益を見込みます。

 

当社は2025年3月期を最終年度とする3年中計(※新型肺炎禍影響で終期を1年後ろ倒し)で、営業利益を+400億円の1,500億円水準まで引き上げる計画としています。国内においてがデジタル化の進展により、中長期的に印刷用紙需要の趨勢減が見込まれることから、洋紙工場を段ボール原紙工場へ転換するほか、2021年の伯パルプ会社であるセニブラ完全子会社化(伊藤忠から買収)といった海外展開強化により、海外売上比率を現状の3割強から4割にまで拡大させる方針です。

 

今次中計における創出CF6,000億円のうち、4,000億円を設備投資に投じる計画であり、栃木・マレーシア・ベトナムに段ボール工場を新設するほか、福島工場おむつラインの増設、滋賀工場フィルムラインの増設、そのほか徳島のバイオマス工場の設備拡充等を実施します。生活産業資材事業は設備拡充による生産拡大とともに、原価増を背景とした価格転嫁を進めており、数量減を補完します。

 

利益柱の資源環境事業は、中国当局の政策や先物等の市況影響を強く受けるため、当社業績の大きな“スイングファクター”となっています。それでも会社側ではパルプの生産量を確保するため、上述の伯セニブラ買収にくわえ、NZのFibre Solutionsも2022年に完全子会社化しています。他方で当社は民間最大規模の保有林(19万ha、海外込で57万ha)を有していることから、木質燃料調達力を生かしたバイオマス発電の拡大だけでなく、排出権取引などのESG的観点から別途プレミアム評価も期待されます。

 

財務の状況については、自己資本比率41.4%&D/E0.7倍と健全な状況を維持しています。配当は据置の年16円を予想しているものの、配当性向は24.4%に過ぎないほか、今次中計では累進配当を目指す方針としていることから、期末出来上がりで増配が見込まれます。


*参考記事① 2022-08-26 562円 OP

【3861】王子ホールディングス/原燃料の上昇痛打も、パルプ市況高騰で“打ち返し”に期待。

 

*参考記事② 2022-01-31 605円 OP

【3861】王子ホールディングス/パルプ価格高騰による単価効果で上振れ圏、追加還元に期待。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ