【3861】王子ホールディングス(東証1部) OP
現在値 605円/100株 P/E 8.56 P/B 0.75 3月配当優待 9月配当優待
1873年設立。製紙国内首位。段ボール、紙パルプ、感熱紙のアジア・南米展開など海外先行。
配当は3月末・9月末の年2回・合計14円配当のため、配当利回りは2.31%となります。
王子ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末に10単元株を保有する1年超の株主に対して、4,180円分の自社製品(ネピア等)カタログを進呈していますので、その場合の配当優待利回りは約3.00%となります。なお、導入初年度を除き、今後は1年以上の長期保有が必要となります。
業績を確認していきます。
■2018年3月期 売上高 1兆4,850億円、営業利益 707億円、EPS 36.6円
■2019年3月期 売上高 1兆5,509億円、営業利益 1,102億円、EPS 52.5円
■2020年3月期 売上高 1兆5076億円、営業利益 1,061億円、EPS 58.8円
■2021年3月期 売上高 1兆3,589億円、営業利益 847億円、EPS 50.1円
■2022年3月期 売上高 1兆4,500億円、営業利益 1,200億円、EPS 70.6円 ce
□2021年9月2Q 売上高 7,085億円、営業利益 636億円、EPS 46.0円(11/2)
2021年9月中間期の売上高はYoY+8.6%の7,085億円、営業利益はYoY2.1倍の636億円となり、期初予算を上回って増収増益となりました。主力の生活産業資材は、経済活動回復による需要拡大と、新型肺炎禍の継続による通販向けが依然好調だったことから、段ボール/原紙類が堅調に推移しました。機能材についても自動車生産量の回復より電動車向け特殊フィルムが底堅く推移しました。また、資源環境分野についても、利益柱の中国向けパルプが同国製紙工場の稼働低下影響により数量減となったものの、世界的なパルプ市況の高騰(単価:YoY51.8円→70.3円/㌔)による単価効果で、大幅な増収増益となり、全社業績を押し上げました。
2022年3月期の通期見通しは、売上高YoY+6.7%の1兆4,500億円、営業利益YoY+41.5%の1,200億円と期初予想を据え置いています。為替前提は米ドル110円/USD・伯レアル5.2/USD、NZD1.40/USD(USD高が増益要因)。生活産業資材は新聞紙・印刷紙の緩やかな回復と、段ボール/原紙類の好調持続が見込まれる一方、原燃料価格高騰で利益が削られる公算です。資源環境分野については、世界的なパルプ価格の高騰(通期見通し:広葉樹670$/㌧、針葉樹$870/㌧)による単価効果による収益押し上げ効果が大きく出る公算で、中国当局によるGHG排出削減を目的とした工場操業度抑制による需要減を飲み込みます。よって、経済活動再開とパルプ高騰により、期初予算は過達公算が高いとみます。
当社はこの2022年3月期を最終年度とする3年中計で、営業利益を1,102→1,500億円まで引き上げ(最低1,000億円を安定的維持)のほか、ROE10%、海外売上比率40%、ネットD/E0.7倍水準の維持を目標としてます。数値前提として、段ボール年1%数量増、新聞・情報印刷紙年▲5%、ウッドチップ不足によるパルプ価格の緩上昇を条件としていましたが、足許の世界的なパルプ高騰による単価押し上げ効果はあれど、新型肺炎禍による事業環境の激変や、今期の営業利益予想1,200億円がいまいま据え置かれていることから、達成困難と解されます。
本中計期間では3,000億円を投資する計画であり、EC拠点が集積する船橋に段ボール工場を新設したほか、中国の江蘇王子製紙に家庭用原紙の新マシンを投入、マレーシアの原紙マシン増設も完了し、内外拠点の生産能力向上は一巡している状況です。国内では紙需要の趨勢減は避けられず、原価となる原燃料価格や物流費・人件費の高騰によりマージンが減少しているものの、製紙業界全体の生産能力がさほど減少していないことから、事業環境の改善が期待薄の状況でした。然しながら足許では、競合の日本製紙が11月に印刷紙等の値上げに踏み切ったほか、年末にかけてレンゴー、大王製紙、日本製紙が相次いで段ボールの値上げを発表したことから、当社も2月出荷分より10円/㌔以上値上げして追随する方針を明らかにしています。
資源環境事業については、引き続き中国当局の政策や先物取引の動向次第であり、パルプ価格が大きく振らされる状況が続くものの、中国の潜在的な家庭紙等の需要成長は大きいとみられることから、中長期的にはパルプ需給のタイト化が一層進むものとみられます。また当社は。民間最大規模の保有林(19万ha)を有していることから、期待の排出権取引をはじめ、ESG的観点から(主に株価的な観点において)プレミアムな評価が期待されます。
なお、財務状況については、自己資本比率39.6%&D/E0.7倍と健全な状況を維持しています。そのため、配当予想については据置の年14円を予想しているものの、業績上振れ公算が高いほか、このままでは現状の予想ROEは9.0%と中計目標に若干届かないことから、年「15円+α」程度まで増配する公算が高いとみられます。また、配当性向を20%程に絞っていることを鑑みれば、現状の株価水準においては自社株買いを繰り出してしかるべき状況と考えます。
*参考記事① 2021-09-11 588円 NT
【3861】王子ホールディングス/中計達成困難も、民間最大の保有林はESG観点で付加評価できる。
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