【3861】王子ホールディングス/中計達成困難も、民間最大の保有林はESG観点で付加評価できる。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_3677.jpg

【3861】王子ホールディングス(東証1部) OP

 

現在値 588円/100株 P/E 8.32  P/B 0.75  3月配当優待 9月配当優待

 

1873年設立。製紙国内首位。段ボール、紙パルプ、感熱紙のアジア・南米展開など海外先行。

配当は3月末・9月末の年2回・合計14円配当のため、配当利回りは2.38%となります。

 

王子ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末に10単元株を保有する株主に対して、4,180円分の自社製品(ネピア等)カタログを進呈していますので、その場合の配当優待利回りは約3.09%となります。なお、導入初年度を除き、今後は1年以上の長期保有が必要となります。

 

業績を確認していきます。

■2018年3月期 売上高 1兆4,850億円、営業利益 707億円、EPS 36.6円

■2019年3月期 売上高 1兆5,509億円、営業利益 1,102億円、EPS 52.5円 

■2020年3月期 売上高 1兆5076億円、営業利益 1,061億円、EPS 58.8円 

■2021年3月期 売上高 1兆3,589億円、営業利益 847億円、EPS 50.1円 

■2022年3月期 売上高 1兆4,500億円、営業利益 1,200億円、EPS 70.6円 ce

□2021年6月1Q 売上高 3,472億円、営業利益 280億円、EPS 20.8円(8/3)

□2021年9月2Q 売上高 7,000億円、営業利益 500億円、EPS 30.2円 ce

 

2021年3月期の売上高は前期比9.9%減の1兆3,589億円、営業利益は同20.1%減の847億円となり、中間の減額見通しを上回ったものの、対期初予算・対前期で減収減益となりました。主力の生活産業資材は新型肺炎禍で段ボール/原紙類が通販向け等一部堅調に推移したものの経済活動停滞で全般減少したほか、家庭紙もマスクやウエットティッシュ等の好調商材があったものの、業務向けの販売減が響きました。機能材も自動車の生産量減少によりEV用特殊フィルムが低調だったほか、乗車券・土産物・贈答品向けのほかPOSレジ向け感熱紙も減少しました。また、資源環境分野も青森のバイオマス発電が通期稼働したものの、中国向けパルプ販売減で減収減益となっています。

 

進行期である2022年3月期の予算については、売上高が6.7%増の1兆4,500億円、営業利益は同41.5%増の1,200億円と大幅増を予想しており、為替前提はドル110円/USD・伯レアル5.2/USD、NZD1.40/USDで見込んでいます(USD高が増益要因)。生活産業資材は新聞紙・印刷紙の低調推移が見込まれるものの、新型肺炎禍の一巡による内外の段ボール/原紙類の数量回復により浮上します。産業向けの機能材も経済活動再開により反発、資源環境分野もパルプ価格が堅調に推移(前提は広葉樹680$/㌧、針葉樹$870/㌧)していることから、市況効果により収益が押し上がる見込みです。8月3日に公表された1Qでは売上高3,427億円&営業利益280億円と高進捗が確認され、通期業績は上振れ公算が高そうです。

 

当社はこの2022年3月期を最終年度とする中計において、3年間で営業利益1,102→1,500億円まで引き上げ(少なくとも1,000億円水準を安定的に維持させる)のほか、ROE10%、海外売上比率40%、ネットD/E0.7倍水準の維持を目標としていました。この前提として、段ボール年1%数量増、新聞・情報印刷紙年▲5%、ウッドチップ不足によるパルプ価格の緩やかな上昇を条件としていましたが、新型肺炎禍でこれらの前提が大きく崩れており、達成はかなり難しい状況です。

 

本中計では戦略投資として合計3,000億円を投じる計画であり、EC拠点が集積する船橋に新段ボール工場を新設したほか、中国の江蘇王子製紙でも家庭用原紙の新マシンを投入し、何れも2020年より生産能力を向上させています。また、足許ではマレーシアの原紙マシン増設も既に完了しており、国内外での生産力増強への取り組みは一通り終わっています。そのため今後の業績向上の如何は経済活動の再開と紙パルプ市況次第となりますが、中長期的にはアジア各国の家庭紙需要は漸増が見込まれるため、海外については高位安定的に推移するとみられます。また、環境事業については植林地の新規確保による広葉樹・針葉樹パルプの生産増強もさることながら、民間最大規模の保有林(19万ha)を有しているため、今後は排出権取引をはじめ、ESG的観点から(主に株価的な観点において)プレミアム評価が期待されます。

 

なお、財務状況については、自己資本比率37.9%&D/E0.6倍と健全な状況を維持しています。そのため、配当予想については据置の年14円を予想しているものの、上述のとおり業績上振れ期待が高いことから、年「15円+α」程度まで増配する可能性が高いものと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ