【2705】大戸屋ホールディングス/3年でEBITDA約50億もの改善見込むが、過大感が強い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2705】大戸屋ホールディングス(東証JQS)  NT

現在値 2,842円/100株 P/E 24.4  P/B 12.9 3月配当株主優待 9月株主優待

定食専門店『大戸屋ごはん処』を直営・FCで首都圏中心に展開。
配当基準日は3月末・9月末ですが、配当予想は未定、直近実績は無配となっています。


大戸屋ホールディングスは株主優待を導入しており、3月末、9月末に100株以上を保有する株主に対して4,000円分のカードタイプの食事券を年2回進呈しておりますので、(配当)優待利回りは約2.81%となります。

業績は以下の通りとなります。

■2018年3月期 売上高 262億円、経常利益 6.6億円 EPS 28.3円

■2019年3月期 売上高 257億円、経常利益 4.6億円 EPS 7.6円 

■2020年3月期 売上高 245億円、経常利益▲5.6億円 EPS▲158.4円

■2021年3月期 売上高 161億円、経常利益▲33.6億円 EPS▲659.2円 

■2022年3月期 売上高 229億円、経常利益 4.1億円 EPS 116.0円 ce

□2021年6月1Q 売上高 40.6億円、経常利益▲3.8億円 EPS 23.6円 (8/2)
□2021年9月2Q 売上高 100億円、経常利益▲2.0億円 EPS 82.9円 四e

2021年3月期の売上高は前期比34.3%減の161億円、経常利益は同赤字拡大の▲33.6億円となり、中間時点で公表した通期見通しから下振れました。既存店売上高(SSS)については、新型肺炎禍により昨年5月には51.6%まで低迷、「go toイート」等の施策により期央に一時90%水準まで回復する局面はあったものの、年明けからの再感染拡大傾向により、通期均しでは75.7%に沈みました。他方、客単価については広島産牡蠣フライといった高単価季節性メニュー投入や「ポムポムプリン」販促の結果、98.3%と横ばいを維持しています。なお出退店については、業態転換を含む出店7店に対し退店40店の純減6店となり、期末総店舗数は431店となりました。


進行期である2022年3月期の見通しについては、売上高が42.4%増の229億円、経常利益は黒字転換の4.1億円を見込んでいます。国内外の店舗は依然として時短営業を強いられている店舗が多いほか、ビルイン型店舗は施設集客力の低下も相俟って、既に8月分までの累計5ヵ月分が開示されているSSSは109%となっており、前年ハードルが極めて低い上期も厳しい滑り出しとなっています。去る8月2日に開示された1Qについては、売上高40.6億円&経常利益▲3.8億円と赤字縮小も低進捗となっています。また通期出退店も一転して純増圏を見込んでいますが、1Q時点では出店実績ゼロとなっていることから、大幅な増収増益を目指す会社予想は過大な状況です。

 

昨年9月のコロワイドによる法外な買収プレミアム(+45%、@3,081円)を乗せた当社への敵対的TOBは無事成就となり、前社長の窪田氏をはじめとする経営陣は一掃されています。旧経営陣は創業者の故・三森久実氏亡き後は一族の三森家を追い出したものの、逆に三森家の後継者(長男の智仁氏)を担ぎ出したコロワイドに“仇討ち”され、コロワイド本体の蔵人賢樹専務が社長に就任しています。そして名実ともにコロワイド傘下となった当社は、新たに3年中計を策定しており、最終年度である2024年3月期に売上高161→258億円、EBITDA▲28.5→20.7億円を目標に掲げており、3年で50億円弱もの損益改善を目標としています。

 

コロワイドが欲しかったものは大戸屋の看板だけであり、本体で行き詰った店舗や不要なリソースを当社で再活用するとみられるほか、本体のセントラルキッチンを共同利用させるとともに、自社のマーチャンダイジングに乗せる方針とみられます。店内調理が削減されることで、人件費等のコストは大幅に削減されるほか、提供時間の短縮による顧客満足度向上と回転率の増加が図れるため、これらの取組だけでかなりの合理化が見込まれます。当然、味が落ちることは避けられないものの、メニューの中心提供価格帯を900円台から700円台まで落とすことでオフセットする目論見となっています。それでも中計では3年で45億円以上の利益改善を見込んでいるため、かなり過大感のある計画であり、実現可能性は高くないものと考えています。

 

なお株主還元については、配当予想が未定となっていますが、実績期に続いて無配濃厚とみられます。自己資本比率は19.1%であり、元よりアルコールや深夜営業に頼らないビジネスモデルであり、持ち帰りやデリバリー適正も高いので、新型肺炎禍でも生き残る可能性が高いものの(コロワイド本体も財務が弱いのでクレジット上の後ろ盾効果が薄い)、今は財務改善が優先であるため、当面の無配はやむなしと考えています。

 

*参考記事① 2020-09-17  2,900円 NT 

【2705】大戸屋ホールディングス/コロワイドTOBが成就、幹部やFC離反の懸念は論点にあらず。


*参考記事② 2019-09-20  2,198円 NT
“不適切動画”で国内苦戦続くも、海外展開はしっかり・大戸屋HD(2705)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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