【2705】大戸屋ホールディングス/コロワイドTOBが成就、幹部やFC離反の懸念は論点にあらず。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2705】大戸屋ホールディングス(東証JQS)  NT

現在値 2,900円/100株 PER--.- PBR13.2 3月配当株主優待 

定食専門店『大戸屋ごはん処』を直営・FCで首都圏中心に展開。
配当金(実績)は3月末の一括25円配当のため、配当利回りは0.86%となります。

大戸屋ホールディングスは株主優待を導入しており、3月末に100株以上を保有する株主に対して2,500円分の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約1.72%となります。(※3年以上の長期保有株主については、食事券の進呈額が表記より500円増額されます)

業績は以下の通りとなります。
■2017年3月期 売上高 256億円、経常利益 7.1億円 EPS 49.6円 

■2018年3月期 売上高 262億円、経常利益 6.6億円 EPS 28.3円

■2019年3月期 売上高 257億円、経常利益 4.6億円 EPS 7.6円 

■2020年3月期 売上高 245億円、経常利益▲5.6億円 EPS▲158.4円

■2021年3月期 売上高(未定)億円、経常利益(未定)億円 EPS(未定)円 ce

□2020年6月1Q 売上高 31.6億円、経常利益▲14.4億円 EPS▲208.1円(8/14)
□2020年9月2Q 売上高 95億円、経常利益▲17.0億円 EPS▲234.6円 四e

2020年3月期の売上高は前期比4.5%減の245億円、経常利益は同赤転の▲5.6億円となり、期初予算を大きく下回って減収減益となりました。既存店売上高については、台風等の天候不順の影響を昨年秋口に受けたほか、年明けからの新型肺炎の本格化により3月単月の売上高は79.3%に沈んだため、通年の予算前提である103.0%に対して93.4%と大幅な未達となりました。一方、客単価については、「もうひとつの食卓」キャンペーンによるメニュー刷新の効果もあり微増となり、期央からは消費増税に合わせた値下げや安価な「大戸屋ランチ」を復活させたものの、「3バーグ」等の季節性メニュー投入により微増基調をキープしました。出退店については、出店11店に対し退店17店の純減6店となり、期末総店舗数は463店となりました。


進行期である2021年3月期の予算については、新型肺炎による影響から期初より未定としており、1Q時点でも未だ非開示となっています。去る8月14日に開示された1Qについては、4月・5月の緊急事態宣言による臨時休業や営業時間短縮の影響もあり、売上高は前年同期比48.1%減の31.6億円、経常利益は約13億円の悪化となる▲14.2億円で進捗しています。既に国内外の店舗は概ね通常営業体制に戻っているとみられるものの、2Q期間における7月の既存店売上高は28.6%減、8月は同28.5%と戻りの鈍さが目立っており、良化の兆しが見えない状況です。一応、UberEats/Fine DIne/出前館といった宅配やテイクアウトの強化、この9月からはサンリオ社の「ポムポムプリン」を起用した販促を展開するなどしていますが、下期での巻き返しでは到底困難なレベルで上期が低迷していることから、通期では大赤字圏に転落する見通しです。

 

今期は3年中計の最終年度となっており、当初は売上高303億円(CAGR5%)、経常利益10.1億円(CAGR15%)を目標としていましたが、不適切動画事件やお家騒動からの買収騒動によるイメージ悪化にくわえ、足許の新型肺炎による影響も大きく、既に達成不可能な状況となっています。本来であればに出店により500店体制を実現し、外部成長する方針でしたが、実績期の店舗数は純減に転じています。一方、内部成長施策として実施していた、立地に応じた提供メニューの変更(駅前商業立地・ビジネス立地・ロードサイド立地)や、グランドメニュー刷新とサイドメニュー充実による高単価化については、実際に客単価が上昇していることからある程度成果が出ているものとみられます。

 

他方、この9月まで延長実施されていたコロワイドによる敵対的TOBは、法外な買収プレミアム(+45%、@3,081円)の付与もあり、当然ホワイトナイトも現れず無事に成就となり、11月に開催される臨時株主総会で窪田社長を始めとする現経営陣は一掃される見通しとなりました。現経営陣は創業者亡き後となった三森家を追い出し、店内調理の工数削減等の簡略化による合理化を実行しましたが客離れを招き(足許では店内調理の重要性をウリにしており一貫性がない)、さながら“弔い合戦”の様相で三森家と組んだコロワイドに逆に仕掛けられ、返り討ちにあった格好です。なお、大戸屋新社長にはコロワイドの創業者一族である蔵人賢樹専務が就任する予定となっています。

 

今後の展開としては、コロワイドの買収に当然に反対していた当社幹部社員の離反や、FCオーナーの解約等による経営への影響が想定されますが、既にジリ貧になっているのでそこは論点でないと考えます。コロワイドとしては、欲しいものは大戸屋の看板だけであり、立ちいかなくなった既存の「甘太郎」等の居酒屋店舗や従業員を、そのまま新生「大戸屋」に業態転換し、既存のセントラルキッチンを活用して自社のマーチャンダイジングに乗せるだけなので、当社幹部社員やFCオーナーは究極的に全く不要であるものと考えている可能性すらあります。店内調理もほぼ廃止となる公算が高いとみられますが、「手作りの味」への拘りよりも会社の存続が第一なので、一旦はコロワイドの合理化・再生策に期待したいと考えています。

*参考記事① 
2019-09-20  2,198円 NT
“不適切動画”で国内苦戦続くも、海外展開はしっかり・大戸屋HD(2705)。


*参考記事② 2018-08-16  2,209円 OP

三かみ堂」「かこみ食堂」など派生業態にご執心・大戸屋ホールディングス(2705)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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