【8012】長瀬産業(東証1部) OP
現在値 1,512円/100株 PER15.0 PBR0.60 3月配当株主優待 9月配当
染料・合成樹脂等の化学品専門商社首位。傘下にバイオの林原。
配当金は3月末・9月末の計44円配当のため、配当利回りは2.91%となります。
長瀬産業は株主優待制度を実施しており、3月末時点(半年保有)で100株以上を保有する株主に対して、3,000円分のご当地グルメ等を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.89%となります。
業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 7,223億円、営業利益 150億円、EPS 81.7円
■2018年3月期 売上高 7,839億円、営業利益 241億円、EPS 136円
■2019年3月期 売上高 8,077億円、営業利益 252億円、EPS 161円
■2020年3月期 売上高 7,995億円、営業利益 191億円、EPS 122円
■2021年3月期 売上高 7,540億円、営業利益 150億円、EPS 100円 ce
□2020年6月1Q 売上高 1,805億円、営業利益 36.7億円、EPS 54.9円(8/4)
□2020年9月2Q 売上高 3,600億円、営業利益 60.0億円、EPS 36.3円 四e
2020年3月期の売上高は前期比1.0%減の7,995億円、営業利益は同24.0%減の191億円と減収減益となったほか、中間時の減額修正予算にも届きませんでした。全般的に為替影響があり(USD円@110.9→108.7、RMB円@16.5→15.6)、主要な5セグは生活産業セグを除いて減収となりました。利益面については、加工材料セグこそ事業会社2社の採算性良化で増益を確保したものの、電子セグについては中国ガラス基板薄型加工業の収益性悪化により減益となったほか、モビリティ分野も自動車生産台数の減少で減益となり、生活関連セグについても期中買収したPrinova社(後述)が一部寄与したものの新規連結の一次費用計上やのれん償却が重しとなり減益となりました。また全社横断的な経費としてDX関連費を計上したことも利益押し下げ要因となっています。
進行期の2021年3月期の予算については、期初段階から開示しており、売上高が5.7%減の7,540億円、営業利益は21.7%減の150億円を計画しています。新型肺炎の影響については、上半期に自動車生産台数の減少を受けたモビリティ事業が特に落ち込むものの、下半期において概ね回復することを前提としています。主力の加工材料セグはOA・家電といった市場全般で汎地球的に需要が減少する見通しであり、樹脂や顔料・インキ等商材の減少が見込まれます。一方、生活関連セグについては、医薬中間体や林原のトレハの底堅い推移が予想されるほか、昨年買収したPrinova社の通期寄与もあり、主要セグで唯一の増収増益を確保する見通しです。なお、去る8月4日に開示済の1Q決算によれば、売上高は前年同期比6.4%減の1,805億円、営業利益は同30.1%減の36.7億円で進捗しており、現時点としては計画比ビハインドとみられます。
今期は5年中計「ACE-2020」の最終年度となっており、当初計画では売上高を1兆円(CAGR6%)、営業利益300億円(CAGR11%)を見込んでいましたが、今般の新型肺炎禍で営業利益は目標の半分程を予想しているため、従前のセグメントを一新した前中計「Change-S2014」に続きまたも大幅未達となる見通しです。本中計期間では5年で1,000億円投資枠を設定し、生活関連分野を中心に、計画の初年度で120億円投資しているほか、昨年には北米・欧州を中心に食品素材販売、配合品製造等を手掛ける米Prinova社に約631億円を投じて買収しています。同社はビタミンやアミノ酸、食品素材に強みを持ち、トレハロースや安定型ビタミンC等に強みを持つ傘下の林原と親和性が高く、この買収により食品素材事業はよりグローバル規模での製造・販売が可能となります。
そして中長期的な当社の成長の鍵を握るのは、このPrinovaと2012年に700億円もかけて子会社化した岡山の林原です。同社は定常的に売上高250億円、営業利益で50億円程度を叩き出しているほか、当社は石油由来の現在のケミカルビジネスはエネルギーや環境問題から今後は構造的に縮小していくものとみており、食品素材のみならずバイオに強い林原は今後の当社の事業ドメインの幅を確保する上でも重要な位置づけとなっています。そのため、林原(Prinovaも同様)はのれん償却が重く業績寄与が限定されるものの、今後はケミカル代替技術としての同社の酵素技術の活用等も志向していることから、商社系でありながら多くの製造ラインを持つ当社グループはこの林原・Prinovaを軸にバイオ/食品分野のメーカー商社として変容出来るかどうかが、次期中計の注目点と言えそうです。
株主還元に関しては、11期連続となる増配42円→44円を実現しているものの、今期は期初時点では年44円(配当性向は43.7%)を据え置いています。ちなみに当社の場合は純資産配当率(DOE)およそ1.5%+基準で配当額を決定しており、利益成長およびDOE基準自体の増額改定により増配基調を維持してきましたが、今期は大幅減益予想のため、連続増配はストップする可能性が高いと考えられます。
*参考記事① 2017-06-25 1,668円 OP
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