【1808】長谷工コーポレーション/フロア70円の高配当と巨額自社株買いが最大の投資論点。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1808】長谷工コーポレーション(東証1部)  OP

現在値 1,503円/100株 PER8.9 PBR1.15 3月配当株主優待 9月配当

マンション建築首位。土地手当、計画立案から施工まで一貫モデル構築。サービス事業育成。
配当金は3月末・9月末の計70円配当のため、配当利回りは4.66%となります。

長谷工コーポレーションは株主優待制度を実施しており、3月末時点で100株以上を保有する株主に対して、リフォーム優待(3%割引)・仲介手数料優待(5%割引)となる割引券を進呈しております。

業績を確認していきます。   
■2017年3月期 売上高 7,723億円、経常利益 888億円、EPS 195.5円 
■2018年3月期 売上高 8,132億円、経常利益 1,004億円、EPS 242.0円 

■2019年3月期 売上高 8,909億円、経常利益 1,003億円、EPS 293.0円 
■2020年3月期 売上高 8,460億円、経常利益 852億円、EPS 201.4円

■2021年3月期 売上高 8,000億円、経常利益 700億円、EPS 169.2円 ce
□2020年6月1Q 売上高 1,719億円、経常利益 109億円、EPS 25.9円(8/6)

□2020年9月2Q 売上高 3,900億円、経常利益 300億円、EPS 72.5円 ce

2020年3月期の売上高は前期比5.0%減の8,460億円、経常利益は同15.1%減の852億円となり、売上高こそやや予算を下回ったものの、利益は減益ながらも期初予算を超過して着地しました。期初時点での建設事業における受注残は前年比2.2%増の6,102億円を抱えてスタートしましたが、首都圏の供給戸数を37,000戸/近畿圏を20,000戸(市場全体)を予算前提としていたところ、期末にかけて新型肺炎の影響を受け、首都圏は28,000戸/近畿圏は17,000戸止まりとなり、連れて当社の期中受注高も2.8%減の4,717億円に減少したことが主な減収要因となります。それでも利益が計画通りとなったのは、サービス事業における賃貸及び分譲マンションの管理戸数の増加や、シニア住宅の入居率向上により同セグメントの利益が同37.3%増の213億円と大きく上伸し、全社利益を手厚く下支えしました。


進行期の2021年3月期の予算については、期初段階から開示しており、売上高は5.4%減の8,000億円、経常利益は同17.9%減の700億円を計画しています。期初時点での建設事業における受注残は1年前とほぼ変わらずの6,008億円を抱えており、予算前提となる首都圏の供給戸数を40,000戸/近畿圏を20,000戸(市場全体)で見込んでいます。然しながら、2020年上半期の首都圏の供給戸数は五輪選手村跡地の晴海フラッグが延期されたことから大幅減の7,500戸となり、首都圏については予測の半分程となる20,000戸水準に留まる公算です。去る8月6日に公表された1Qについても、売上高が前年同期比10.5%減の1,719億円、経常利益が同37.8%減の109億円と低進捗で推移しているものの、相当程度の期初受注残高を抱えている点と、足許の実勢でも新築・中古マンションともに目立った値崩れが起きていないことから、通期では概ね期初予算の水準までキャッチアップするものと予想しています。


今期は新5年中計「NS計画」の初年度となっており、最終年度の2025年12月期に経常利益1,000億円(CAGR3%)の回復を目指しており、主要戦略として①コア事業強化、②不動産関連拡大、③DX等、④新規投資2,400億円、⑤財務戦略・株主還元の5つを掲げています。①の本業部分では再開発におけるマンション以外の“面型”の大規模複合開発への取り組み強化や、本業に係る③については設計・施工一貫BIMモデルのDX化により工期短縮や省人化、ひいては原価低減を図る方針です。

 

業容拡大に直接的に寄与しやすい②の不動産については、マンション「分譲」事業における九州・四国・沖縄への展開エリア拡大や、賃貸不動産の所有及び私募REITの活用による一時利益実現とAMフィー獲得を目指します。傘下の長谷工不動産投資顧問は既にエリアリンク(8914)とストレージREITの設立に動いていますが、ここでは賃貸マンションが主になるとみられます。このほか、海外ではベトナムの現地ゼネコンに36%出資したほか、インドネシア、ハワイ、カルフォルニア等で不動産開発を進めており、既に頭打ちを迎えている国内事業で稼いだ資金を活用し、業容拡大を図る方針となっています。

 

そして本中計最大の論点である⑤の財務戦略・株主還元については、既に50%近い盤石な財務体質を保持していることから、一層踏み込んだ株主還元に踏み切っています。向こう5年間の配当金額のフロア(下限)を年70円と設定したほか、総還元性向40%を目途とする還元内容を明らかにしています。実際に発行済株式の10%にも及ぶ300億円の巨額な自社株買いを実行中であり、足許ベースでもまだ120億円程しか買い入れていないことから、買付期間の来年2月末まではかなり手厚く株価が下支えされる可能性が高そうです。特筆すべきは本中計及びこの還元計画は新型肺炎禍中に開示されたものであるため、途中で見直しされる可能性が低く、向こう5年間は高還元状態が続くものと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。  


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