【3561】 力の源ホールディングス/海外における新型肺炎の沈静化が成長軌道復帰の要件。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3561】 力の源ホールディングス (東証1部)  BY

現在値 720円/100株 PER--.- PBR6.30 3月配当優待 9月配当優待

博多ラーメン店「一風堂」が柱。フードコート、ラーメンダイニング等の業態も。
配当(実績)は3月・9月の年2回合計8円配当のため、配当利回りは約1.11%となります。

力の源ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末・9月末に単元株を保有する株主に対して、10%割引カードを進呈しております。また1年以上保有株主には、ラーメン1杯無料券を進呈しているため、830円の「赤丸新味」注文時における配当優待利回りは約3.41%となります。なお本食事券で同伴1名までが無料(計2杯無料、その場合の想定利回りは約5.72%)となります。

業績を確認していきます。

■2017年3月期 売上高 224億円、営業利益 6.0億円、EPS 13.1円 
■2018年3月期 売上高 244億円、営業利益 9.0億円、EPS 27.9円 

■2019年3月期 売上高 274億円、営業利益 9.5億円、EPS 26.2円

■2020年3月期 売上高 291億円、営業利益 6.9億円、EPS▲9.0円

■2021年3月期 売上高(未定)億円、営業利益(未定)億円、EPS(未定)円 ce
□2020年6月1Q 売上高 33.4億円、営業利益▲4.0億円、EPS▲38.2円(8/12) 

□2020年9月2Q 売上高 75.0億円、営業利益▲8.0億円、EPS▲46.1円 四e

2020年3月期の売上高は前期比6.0%増の291億円、営業利益は同27.2%減の6.9億円となり、増収こそ果たしたものの、2割増益の期初予想から一転して3割弱の減益となりました。「一風堂」を中心とした国内の既存店売上高は、1月までは概ね100%水準をクリアし好調に推移していたものの、新型肺炎の影響が色濃くなった2月・3月で急失速し、累計では98.7%水準に留まりました。出店については、計画の16店に対し15店を出店させています。一方、海外事業については、直営エリアでの出店遅れがあり、通期計画の33店に対して23店(米西海岸、ベトナム、香港、インドネシア等)に留まったほか、既存店売上高についても前期のオープン景気の剥落や、豪州の山火事や香港・フランスのデモの影響にくわえ、為替の不利影響が重しとなり、93.8%水準に留まりました。


進行中の2021年3月期の予算については、新型肺炎の影響を見積もることが難しいことから、期初より非開示となっています。本年2月から一部店舗で店休や営業時間の短縮を実施していましたが、4月上旬からは順次全国で休店を実施し、全店で再開したのは7月に入ってからという慎重な対応となりました。そのため、去る8月12日に開示された1Qについては、売上高が前年同期比5半減の33.4億円、営業利益は同赤転の▲4.0億円となったほか、休業費用を特損落としているため、最終利益では▲9.1億円に沈んでいます。なお、足許の国内既存店売上高については、依然として多くの店舗で深夜営業を自粛しているほか、カウンター席を間引いたりしていることもあり、7月57.8%、8月52.4%(海外は7月64.3%、8月72.0%)という状況であるため、現時点では下期からの回復基調入りも見通しにくい状況です。そのため、通期では大赤字圏に沈むものとみられます。


当社は2017年3月にマザーズに上場しましたが、2019年3月に一部市場へ指定替えしています。中長期的な業績の数値目標は掲げていないものの、KPIとして2025年を目処に国内300店舗(前期末158店)・海外300店舗(同133店)の展開計画しており、8年程で店舗数を2.6倍にする方針としています。国内は従業員への“暖簾分け”による出店を図るほか、海外はFC方式により短期大量出店を果たす目論見です。ただ国内に関しては、全国に広く浅く出店していっているためマーチャンダイジングにロスが多く、売上伸長のわりに利益率の改善が進んでいないことが中期的な課題(利益的には伸びシロ)となっています。


海外の展開状況については、合弁会社やFCを活用して既に海外15ヶ国に出店済みであり、こうしたFCもあって、新型肺炎なかりせば概ね採算水準に到達していたものとみられます。海外事業の売上高は、2017年3月期を起点に【48.5億円→62.4億円→85.7億円→97.0億円】と、順調に成長しており、全社売上の約3分の1を占めるまでになりました。これは事業環境として、新型肺炎前のインバウンド激増もあって海外における日本食市場が急拡大していることが背景にあり、海外の日本料理店は2017年までの10余年で24千店→118千店に5倍化しているような状況です。そのため、足許の海外は本邦よりも深刻な新型肺炎蔓延により、ロックダウン等の措置が採られたりしていたりと大変厳しい状況ですが、既にある程度の知名度のある「一風堂」ブランドはFC合弁先の確保にはさほど困らないとみており、鎮静化すれば再度成長軌道に復帰するものと考えています。

 

なお株主還元については、配当を今期未定に変更しておりますが、従前の年8円は無配とする公算が高いものと考えています。当社は海外への直営出店や物流周りのサプライチェーン改革、自社工場設立といったことなどまだまだ資金需要があると考えており、5月には主力行である西日本シティ銀らから協調融資25億円を引いて自己資本比率は2割を割り込んでしまった背景もあるため、当分は手許資金確保が優先されるものと考えています。

 

*参考記事① 2020-02-20  905円 BY

【3561】力の源ホールディングス/今期弱含むが、来期にも海外が国内を逆転か。

 

*参考記事② 2019-07-27 956円 NT

国内出店一服も、ライセンス中心の海外は拡大・力の源ホールディングス(3561)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。  


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