【6089】ウィルグループ/のれん付きMA連発で中計達成も、財務悪化と希薄化で評価難。 | なちゅの市川綜合研究所

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【6089】ウィルグループ(東証一部) OP

現在値 935円/100株 PER16.6 PBR3.58 3月配当株主優待

人材派遣や業務請負等の人材サービス。家電量販店などの販売現場も。
配当金は年1回で17円のため、配当利回りは1.82%となります。

 

ウィルグループは株主優待制度を導入しており、3月末の単元株主に対して、500円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.35%となります。また長期優遇制度があり、最長の3年以上保有となった場合は、クオカード進呈額が2,000円分(約3.95%)までハネあがります。

業績を確認をしていきます。2019年3月よりIFRSに移行しています。
■2017年3月期 売上高 605億円 営業利益 19.6億円 EPS 54.2円 

■2018年3月期 売上高 791億円 営業利益 24.1億円 EPS 59.9円 

■2019年3月期 売上高 1,036億円 営業利益 25.4億円 EPS 54.2円 IFRS

■2020年3月期 売上高 1,219億円 営業利益 41.4億円 EPS 59.9円 IFRS

■2021年3月期 売上高 1,150億円 営業利益 30.0億円 EPS 69.7円 ce修正(9/18)

□2021年6月1Q 売上高 286億円 営業利益 9.8億円 EPS 28.4円
□2021年9月2Q 売上高 570億円 営業利益 17.0億円 EPS 44.9円 ce修正(9/18)

2020年3月期の売上高は前期比18.0%増の1,219億円、営業利益は同40.1%増の41.4億円となり、期初予想線を上回り、4割超の増益を果たしました。主力の派遣3業務(販売・テレオペ・工場)については、通信分野が堅調に推移したほか、好採算の金融系案件の増加、その他派遣従事者に対する待遇見直しに起因する契約条件の改定等が寄与しました。新事業業域である注力3事業(介護・海外・スタートアップ支援)については、採算良化する3年目経過以降施設が増加した介護事業の売上・利益とともに好伸したほか、海外事業については通期巡航化したSGのCCG社、豪州のu&u社についても主力の派遣業務が概ね堅調に推移しました。

進行期である2021年3月期の予算については、足許で開示に踏み切っており、売上高が4.1%減の1,150億円、営業利益は27.6%減の30.0億円を見込んでいるほか、今期より報告セグメントを国内・海外の2つに再分類し直しています。国内領域のおける派遣事業については、販売(アパレル、テレオペ)、食品を除く工場分野において新型肺炎の影響を受けるとみられるものの、販売(通信)や介護・保育事業については底堅く推移する見通しです。一方、海外領域については、新型肺炎にともなうロックダウンを実施していたSGや豪州の戻りが鈍く、全社業績を押し下げることが想定されます。なお8月7日に1Qが開示されており、売上高は前年同期比2.5%減の286億円、営業利益は7.0%減の9.8億円で進捗しているほか、その後に通期予算を再増額していることを踏まえると、予算がコンサバないし実態が想定超の推移と解されます。

 

実績期は4年中計の最終年度であり、売上高1,000億円(CAGR22%)、営業利益40億円(CAGR30%)を目標としていましたが、売上高については1年前倒し達成、利益についても最終年度に無事達成となりました。企業のアウトソーシングニーズ増加にともない、通信・テレオペ・工場分野等において当社の正社員抱き合わせ型派遣モデルが顧客に高評価だった点もさることながら、海外事業におけるMAが大きく寄与しています。2019年1月にSGのCCG社(年商14億円、利益4.5億円)を19億円、2019年4月には豪州・ブリスベンのu&u社(年商61億円、利益5.4億円)を16億円で相次いで買収しているほか、そのタイミングでIFRSに切り替えているため、のれん償却をともなわずに見かけの営業利益が大きくカサ増しされました。

 

新中計については、新型肺炎禍ということもあり定量的な業績目標を開示していませんが、定性取組事項として①国内における定常分野の強化(派遣の一時分野ではなく、人材紹介や長期専門派遣)、②派遣事業のデジタル効率化、③海外における子会社間シナジーや効率化等を掲げているほか、その他目標KPIとして、ROIC20%(実績14%)や、自己資本比率20%(実績11%)を目指すこととしています。本年3月にはベンチャー支援事業子会社のフォースタートアップス(7089、持分66.9%)をマザーズ市場にIPOさせており、上場による業容拡大やそれによる当社へのシナジーが中長期的に見込まれるものの、いかんせんまだ年商10億円程しかないため要時間と思われます。

 

財務面については、2017年にSMBC日興証券に28億円(※発行時概算)の新株予約権を発行しており、全て行使完了しているものの、上述ののれん付きMAでかなりの資金を消化してしまったため、直近の自己資本比率は11%と低い状況となっています。それにも拘らず、2019年にも自社株買いを実施しているほか、今次中計でも総還元性向30%を掲げ直してしまっており、この辺の資本政策については大いに疑問符が付くところです。なお配当予想については、5円減配となる年17円を予想していますが、本来的には財務良化が最優先課題であり、無配~年10円水準まで削ってもいい局面であると考えています。

 

*参考記事① 2017-09-06 1,191円 OP

高株価で増資を一蹴、高成長続くウィルグループ(6089)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。  


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