【9024】西武ホールディングス/優先株800億円を全て償還へ、財務体質の改善が進む。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

image

【9024】西武ホールディングス (東証プライム) NT

 

現在値 1,399円/100株  P/E 5.3  P/B 1.08  3月配当優待 9月優待

 

東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。

配当は3月末・9月末の年10円配予想のため、配当利回りは約0.71%となります。

 

西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約3.65%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。

 

業績を確認していきます。

■2020年3月期 売上高 5,545億円、営業利益 568億円、EPS 15円

■2021年3月期 売上高 3,370億円、営業利益▲515億円、EPS▲241円 

■2022年3月期 売上高 3,968億円、営業利益▲132億円、EPS 35.3円

■2023年3月期 売上高 4,240億円、営業利益 170億円、EPS 262.5円ce修正(2/9)

□2022年9月2Q 売上高 2,125億円、営業利益 134億円、EPS 215.0円 

□2022年12月3Q 売上高 3,205億円、営業利益 201億円、EPS 234.4円(2/9) 

 

2022年3月期の売上高はYoY+9.1%の2,125億円、営業利益はYoY+170億円の134億円となり、期初予想を下回りました。主力の都市交通事業は、人流回復で増収したものの、鉄道定期外が同+17.7%(平時比83%程)、定期も同+9.9%(平時比77%程)と想定以下となりました。また、プリンスホテルも客数増や一時療養者向け一棟貸しで増収も、予算OCC60.5%に対して42.6%、予算RevPAR10,232円に対して6,681円止まりとなりました。また、不動産事業は解約違約金剥落やリゾート販売の減少で大幅減で進捗したほか、建設事業は西武建設売却で期初から剥落しています。

 

2023年3月期の通期見通しは3Qで再修正しており、売上高がYoY+6.8%の4,240億円(期予:4,430億円)、営業利益はYoY+302億円の170億円(期予:310億円)を見込んでいます。2Q時点で大きく減額していたものの、足許の人流復調傾向を取り込んで若干増額します。都市交はバス下振れも、主力の鉄道は上振れ、プリンスホテルも宿泊支援策等による追い風で下期から顕著な回復を見込みます。他方、鉄道・バス・ホテル共通でエネルギー価格の高騰影響を幅広く受けており、旅客数・宿泊者数の回復のわりに利益回復が鈍化します。

 

進行期は翌2024年3月期を終期とする中計の中間年度であり、最終的には売上高を3,370億円→4,430億円、営業利益▲515億円→550億円まで回復させる目標です。但し、インバウンドと国内の人流回復を相当程度織り込んでいるほか、西武建設株の売却と(不動産所有権としての)プリンスホテル売却による数値影響を反映した修正のため、実態の戻りの弱さを織り込まない強気計数となっています。なお、自助努力が可能な固定費削減を▲250億円/y、見込んでいるものの、足許3Q時点で▲190億円/yのため、計画通りと言えます。

 

B/S改善のための“アセットライト戦略”については、別途定めるKPI目標をROA2.0%+、

ROE8.0%+としています。2021年には八景島北の杉田ゴルフ場&テニスコートを、昨年には西武建設株を相次いで売却したほか、年度内にホテル等のリゾート31施設をGICに計1,471億円で売却する予定です。このうち代表物件の芝のパークタワーや、札幌・広島・京都宝ヶ池は昨年9月末に売却済であり、残る池袋や苗場のホテル&スキー場が今3月末に決済予定となっています。


財務の状況については、物件売却と含み益顕在化による借入返済が進捗しており、足許の有利子負債はおよそ7,300億円まで減少しています。傘下の西武鉄道がみずほと政投銀に発行した延べ800億円分の優先株についても100億円が償還済み、残り700億円分も期末で償還予定となっています。かかる優先株償還により、800億円分の自己資本が棄損するものの、コベナンツの「純資産2,834億円+維持」は十分守られる公算であり、他民鉄比でネガティブな格付けの改善による利払軽減も期待されます。

 

なお翌2024年3月期に所沢西口再開発の竣工を控えるほか、翌々2025年3月期から高輪・品川のプリンスホテル敷地等を中心とする品川駅周辺の大規模再開発(全5,000室のうち品川プリンスを除く高輪系3棟、1,500室が対象)が控えており、財務改善後もなお巨額の資金需要が存在します。そのため、株主還元は巡行配当性向を20%に抑えて温存する意向があり、一過性利益で噴き上がる進行期は配当性向3.8%の年10円配当に留まるものの、妥当な配当政策と考えています。
 

*参考記事① 2022-09-10  1,353円 OP

【9024】西武ホールディングス/減額後中計もまだ強気、格付けA格維持なるか。

 

*参考記事② 2022-03-24  1,322円 OP

【9024】西武ホールディングス /西武建設株売却により最終黒字圏、芝ホテル等の売却は翌期。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ

AD