【8012】長瀬産業/米Prinovaは好調維持だが、原料高や為替の不利影響が重し。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8012】長瀬産業(東証プライム)  OP

現在値  2,040円/100株  P/E 8.50  P/B 0.68  3月配当株主優待 9月配当

染料・合成樹脂等の化学品専門商社首位。傘下にバイオの林原。
配当金は3月末・9月末の計60円配当のため、配当利回りは2.94%となります。

長瀬産業は株主優待制度を実施しており、3月末時点(半年保有)で100株以上を保有する株主に対して、1,500円分のご当地グルメ等を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.67%となります。なお、3年以上の長期保有により進呈額が3,000円分となりますので、その場合は約4.41%となります。

業績を確認していきます。2022年3月期より企業会計基準第29号(新収益)を適用しています。

■2020年3月期 売上高 7,995億円、営業利益 191億円、EPS 122円

■2021年3月期 売上高 8,302億円、営業利益 219億円、EPS 151円 

■2022年3月期 売上高 7,805億円、営業利益 352億円、EPS 213円 

■2023年3月期 売上高 (非公表)億円、営業利益 380億円、EPS 241円ce

□2022年9月2Q 売上高 4,555億円、営業利益 198億円、EPS 130円 

□2022年12月3Q 売上高 6,956億円、営業利益 274億円、EPS 168円(2/8)

2022年9月中間期の売上高はYoY+21.9%の4,555億円、営業利益はYoY+2.0%の198
億円と予算比は無いものの増収増益となりました。機能素材セグは市況好調な半導体関連が続伸したほか、モビリティセグも自動車生産台数の増加と円安恩恵のほか、EV向けが想定超となりました。他方、加工材料セグは導電材料、情報印刷関連が減少したほか、電子エネセグはディスプレイ・モバイル向けが低調に推移しました。なお、生活関連セグもPrinovaのニュートリションは製造・加工ともに好調持続となり、全社業績を牽引しました。


2023年3月期の通期見通しは期初予想を据え置いており、売上高非公表ながら、営業利益はYoY+7.8%となる380億円を予想しています。機能素材セグの半導体向けや、モビリティセグは下期も順調な推移が見込まれる一方、電子エネセグの変形エポキシ樹脂の販売不調にくわえ、全般的な原価・物流費の増加傾向や本社費用のDX投資負担が重しとなります。また、絶好調のPrinovaも足許の円高振り戻しにより、為替の有利影響を前提に据え置いた見通しの達成には暗雲が漂っている状況です。
 

今期は2026年3月期を最終年度とする新中計「Ace2.0」の2年度目となっており、向こう5年で1,000~1,500億円の投資枠を設定し、営業利益219億円→350億円(ROEは8.0%)を目指していましたが、既に過達となっています(注:うち40~50億円分が為替・市況の“追い風”のため、目標をロールしない)。取組内容は①DX強化、②サスティナ推進、③コーポレート強化の3軸が挙げており、体制再構築の色合いが強い一方、注力成長領域として生活関連セグのバイオ・食品分野を定めています。

 

化学品商社の当社は化石原料由来の素材・商材が多く、SDGs潮流と相容れないため、事業取捨を含め抜本的な業容転換を進めています。全社的な②の方針として、機能材料であればバイオ由来原料へ、加工材料であればバイオマス原料へのリプレイスを推進するほか、電子エネセグはDXによる物流効率改善による適応化を図ります。近年の当社は潮流に沿う新商材の開発のため、製造領域に注力しており、化学品のナガセケムテックスと、林原(2012年に買収)&米Prinova社(2019年買収)の食品2社がその中核となります。

 

林原はトレハロースや安定型ビタミンC等に強みを持ち、Prinovaは北米・欧州を中心とした食品素材販売、配合品製造の拠点・ルートを有するため高い親和性が見込まれます。林原のトレハロースは賞味期限の長期化に強みを持ち、Prinovaのスポーツニュートリションもヘルスケア領域のため、世界的な人口増で中長期的な市場拡大が見込まれます。Prinovaの買収には約680億円を投じたほか、その後もユタ新工場を開設するなど巨額投資を実行したものの、収益貢献見込みは2025年12月期に営業益100億円超に達し、足許でも期待通りの成長が確認されます。


他方、株主還元に関しては、6円増配となる年60円(配当性向24.7%)を見込んでおり、13期連続の増配を予定しています。これまで純資産配当率(DOE)1.5%+基準で配当額を決定していまたものの、今次中計では継続的配当に300億円を配分するほか、別途300億円を上限に処分する政策株式削減を原資とした自社株買いをする方針としています。


*参考記事① 2022-08-22 2,029円 OP

【8012】長瀬産業/買収した米Prinovaが想定超の成長、13期連続増配予定だが上乗せも。 

 

*参考記事② 2022-03-19 1,862円 OP

【8012】長瀬産業/自動車生産急回復で5年中計は初年度達成か。食品好調、円安も追い風。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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