【8012】長瀬産業/自動車生産急回復で5年中計は初年度達成か。食品好調、円安も追い風。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8012】長瀬産業(東証1部)  OP

現在値 1,862円/100株 P/E 9.08  P/B 0.65  3月配当株主優待 9月配当

染料・合成樹脂等の化学品専門商社首位。傘下にバイオの林原。
配当金は3月末・9月末の計54円配当のため、配当利回りは2.90%となります。

長瀬産業は株主優待制度を実施しており、3月末時点(半年保有)で100株以上を保有する株主に対して、1,500円分のご当地グルメ等を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.70%となります。なお、3年以上の長期保有により進呈額が3,000円分となりますので、その場合は約4.51%となります。

業績を確認していきます。2022年3月期より企業会計基準第29号(新収益)を適用しています。
■2018年3月期 売上高 7,839億円、営業利益 241億円、EPS 136円 

■2019年3月期 売上高 8,077億円、営業利益 252億円、EPS 161円 
■2020年3月期 売上高 7,995億円、営業利益 191億円、EPS 122円

■2021年3月期 売上高 8,302億円、営業利益 219億円、EPS 151円 

■2022年3月期 売上高(非公表)億円、営業利益 350億円、EPS 205円ce新収益

□2021年9月2Q 売上高 3,737億円、営業利益 194億円、EPS 119.5円 

□2021年12月3Q 売上高 5,741億円、営業利益 281億円、EPS 182.4円(2/9)

2021年9月期の売上高はYoY+30.5%の3,737億円、営業利益はYoY+118.2%の194億円となり、大幅な増収増益となりました。機能素材セグやモビリティセグは、新型肺炎禍からの回復による自動車生産台数反動増で国内外で増収増益となったほか、電子セグはモバイル機器・半導体用途向けの樹脂や、ディスプレイ関連材が伸長しました。また、加工材料セグもOA・ゲーム機向け樹脂の市況活況の追い風を受けたほか、生活関連セグも林原のトレハロースの販売好調にくわえ、
のれん償却が重いPrinovaのニュートリションが大きく伸長し、利益貢献度が高くなっています。


2022年3月期の通期見通しについては、新収益基準の適用開始のため売上高非公表ながら、3Q時点で増額しており、営業利益をYoY+59.7%の350億円(期予:230億円)に修正しています。世界的な自動車生産の回復により、機能素材・モビリティセグを中心に想定超の伸長となるほか、素材市況の高騰により樹脂マージンが改善します。また、ライフスタイルの変化により最終製品であるデジタル機器の需要が引き続き増加しているため、エレキ関連素材の多い電子セグや加工セグも一段増となります。また、為替前提もUSD円@109.5→111.9、RMB円@16.9→17.4)へと見直し、有利方向に振れている状況です。
 

今期は2026年3月期を最終年度とする新中計「Ace2.0」の初年度となっており、向こう5年で1,000~1,500億円の投資枠を設定し、定量目標として営業利益219億円→350億円(ROEは8.0%)を目指すこととしていましたが、上述のとおり営業利益350円は早くも射程に入ってしまっている状況です。取組内容は①DX強化、②サスティナ推進、③コーポレート強化の3軸が挙げられ、新型肺炎禍からの体制再構築的な色合いが強い内容ではあるものの、成長領域として生活関連セグのバイオ・食品分野を注力領域として定めています。

 

当社のビジネス領域はそもそも石油由来の素材・商材が多く、昨今のSDGs風潮から機能素材セグにおけるインク商材や加工素材セグの樹種系商材については、バイオ由来原料や生分解プラスチックといった環境負荷の低い素材へのリプレイスや、リサイクルサプライチェーンの構築など抜本的な対応が迫られている状況です。そのため、既存領域の再構築をすることなくそのまま伸ばせるのが、バイオ・食品分野ということが背景にあります。

 

同セグについては、2012年買収の林原と、2019年買収の米Prinova社の2社が中核となります。林原はトレハロースや安定型ビタミンC等に強みを持ち、Prinovaは北米・欧州を中心とした食品素材販売、配合品製造の拠点・ルートを有していることから親和性が高い組み合わせとなっています。林原のトレハロースは賞味期限長期化により食料不足に対応するほか、Prinovaのスポーツニュートリションもヘルスケア領域となっており、本年春にはユタに新工場を設立し、生産能力が一気に倍増する見通しです。


なお株主還元に関しては、期中に特別配当6円の上乗せを追加的に公表しており、12期連続となる増配46円→54円(配当性向25.9%)を予定しています。これまで純資産配当率(DOE)1.5%+基準で配当額を決定していましたが、今次中計では継続的配当に300億円を配分するほか、別途300億円を上限に処分する政策株式削減を原資とした自社株買いを実行すること方針としているから、向こう5年間の総還元性向は6割程度が見込まれます。


*参考記事① 2021-07-20 1,685円 OP

【8012】長瀬産業/政策保有株300億円削減で、向こう5年間の総還元性向は60%か。

 

*参考記事② 2020-09-16  1,512円 OP

【8012】長瀬産業/Prinova社買収で、化学専門商社からの変容を一段と志向。

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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