【8012】長瀬産業/買収した米Prinovaが想定超の成長、13期連続増配予定だが上乗せも。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8012】長瀬産業(東証1部)  OP

現在値 2,029円/100株 P/E 8.05  P/B 0.68  3月配当株主優待 9月配当

染料・合成樹脂等の化学品専門商社首位。傘下にバイオの林原。
配当金は3月末・9月末の計60円配当のため、配当利回りは2.96%となります。

長瀬産業は株主優待制度を実施しており、3月末時点(半年保有)で100株以上を保有する株主に対して、1,500円分のご当地グルメ等を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.69%となります。なお、3年以上の長期保有により進呈額が3,000円分となりますので、その場合は約4.43%となります。

業績を確認していきます。2022年3月期より企業会計基準第29号(新収益)を適用しています。

■2020年3月期 売上高 7,995億円、営業利益 191億円、EPS 122円

■2021年3月期 売上高 8,302億円、営業利益 219億円、EPS 151円 

■2022年3月期 売上高 7,805億円、営業利益 352億円、EPS 213円 

■2023年3月期 売上高 (非公表)億円、営業利益 380億円、EPS 241円 ce

□2022年6月1Q 売上高 2,195億円、営業利益 108億円、EPS 66.6円(8/4) 

□2022年9月2Q 売上高 3,800億円、営業利益 200億円、EPS 109.0円 四e

2022年3月期の売上高はYoY+24.8%の7,805億円、営業利益はYoY+60.9%の352億円となり、3Q時点の増額見通し並みの着地となりました。機能素材セグは半導体原料が好伸したほか、モビリティセグは自動車生産台数反動増やEV向け素材・部品の伸長により想定超となりました。また、電子セグもエポキシや薬液が好調だったほか、加工材料セグもOA・ゲーム機向けが樹脂市況活況の高騰恩恵があり、生活関連セグもPrinovaのニュートリションも大きく伸長したことから、総じて全セグメントで堅調に推移しました。


進行期である2023年3月期の通期予想については、売上高非公表ながら、営業利益がYoY+7.8%の380億円を予想しています。世界的な自動車生産の回復基調継続や半導体市況の活況継続により、機能素材・モビリティセグの高水準持続が見込まれるほか、加工材料も樹脂市況高騰と高機能品の販売拡大により好調推移が予想されます。また、欧米における健康意識の高まりから、Prinovaは一段増となる見通しです。なお為替前提についてはUSD円@120.0、RMB円@18.5のため、MtoMで有利方向に振れており、上振れが濃厚です。
 

今期は2026年3月期を最終年度とする新中計「Ace2.0」の2年度目となっており、向こう5年で1,000~1,500億円の投資枠を設定し、営業利益219億円→350億円(ROEは8.0%)を目指すこととしていましたが、終わった期で過達となりました(会社側ではうち40~50億円分を為替や市況の“追い風”効果と認識しており、特に増額ロールしない方針)。取組内容は①DX強化、②サスティナ推進、③コーポレート強化の3軸が挙げており、体制再構築の色合いが強い一方、注力成長領域として生活関連セグのバイオ・食品分野を定めています。

 

化学品商社である当社の業容は、そもそも化石原料由来の素材・商材が多く、昨今のSDGs風潮とは相容れないビジネスモデルのため、事業取捨を含め抜本的な業容転換を進めています。全社的な②の方針として、“N-sustainable”というスローガンを定め、機能材料であればバイオ由来原料へ、加工材料であればバイオマス原料へのリプレイスを推進するほか、電子・エネルギーについてはDX推進による物流効率改善に取り込みます。他方、SDGsど真ん中のバイオ・食品分野については純粋なオーガニック成長を志向しています。

 

同セグは2012年に買収した林原と、2019年買収の米Prinova社の2社が中核となります。林原はトレハロースや安定型ビタミンC等に強みを持ち、Prinovaは北米・欧州を中心とした食品素材販売、配合品製造の拠点・ルートを有するため高い親和性が見込まれます。林原のトレハロースは賞味期限長期化で食料不足に対応するほか、Prinovaのスポーツニュートリションもヘルスケア領域となっており、本年7月のユタ新工場の稼働開始により生産能力が一気に倍増する見通しです。これら2社はのれん償却が重い(▲24億円/y)ものの、Prinovaは買収時予想収益を3年前倒しで達成するなど、躍進が確認されます。


なお株主還元に関しては、6円増配となる年60円(配当性向24.7%)を見込んでおり、13期連続の増配を予定しています。これまで純資産配当率(DOE)1.5%+基準で配当額を決定していましたが、今次中計では継続的配当に300億円を配分するほか、別途300億円を上限に処分する政策株式削減を原資とした自社株買いを実行すること方針としており、足許でも60億円の自社株買いを進めていることから、総還元性向は42.4%に達する見通しです。


*参考記事① 2022-03-19 1,862円 OP

【8012】長瀬産業/自動車生産急回復で5年中計は初年度達成か。食品好調、円安も追い風。

 

*参考記事② 2021-07-20 1,685円 OP

【8012】長瀬産業/政策保有株300億円削減で、向こう5年間の総還元性向は60%か。

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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