【9024】西武ホールディングス /西武建設株売却により最終黒字圏、芝ホテル等の売却は翌期。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9024】西武ホールディングス (東証1部) OP

 

現在値 1,322円/100株 P/E 44.0  P/B 1.37  3月配当優待 9月優待

 

東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。

配当は3月末一括の年5円を予想しているため、配当利回りは約0.38%となります。

 

西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約3.48%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。

 

業績を確認していきます。当社は新収益認識基準に切り替えていますが、影響軽微です。

■2018年3月期 売上高 5,306億円、営業利益 642億円、EPS 136円 

■2019年3月期 売上高 5,659億円、営業利益 733億円、EPS 145円 

■2020年3月期 売上高 5,545億円、営業利益 568億円、EPS 15円

■2021年3月期 売上高 3,370億円、営業利益▲515億円、EPS▲241円 

■2022年3月期 売上高 4,010億円、営業利益▲110億円、EPS 29.9円ce修正

□2021年9月2Q 売上高 1,949億円、営業利益▲35億円、EPS▲42.4円 

□2021年12月3Q 売上高 3,002億円、営業利益▲44億円、EPS▲29.5円 ce

 

2021年9月中間期の売上高はYoY+25.8%の1,949億円、営業利益はYoY+270億円の▲35億円となり期初予想を下回りました。主力の都市交通事業は、新型肺炎禍の一巡で定期外が同+26.2%に回復したものの、定期は殆ど戻らず同+1.0%と横ばい止まりでした。他方、プリンスホテルについては、全面休業明けで前年ハードルが低かったことから持ち直し、RevPARは同2.2倍の4,937円となったほか、不動産事業は紀尾井町のテナント解約による一時金収入や商業施設利用者数増加により確りとなりました。

 

なお2022年3月期の通期見通しは3Q時点で修正しており、売上高がYoY+19.0%の4,010億円(期予:4,560億円)、営業利益は赤字縮小の▲110億円(期予:90億円)に減額しています。各種KPI前提は実勢反映で鉄道・バス事業の収入を2020年3月期の76%水準まで落としたほか、プリンスホテル等の稼働率も33.5%に下方修正したため、連れてRevPAR前提も5,380円まで落ちています。他方、不動産事業については解約違約金収入やリゾート分譲の数量増・単価増ににより好調だったほか、建設事業の中核企業である西武建設の売却(※後述)を予定しているため、全社ベースでは最終黒字を確保する見通しです。

 

今期は2024年3月期を最終年度とする中計初年度となっており、向こう3年で売上高3,370億円→5,380億円、営業利益▲515億円→660億円まで復元させる計画ですが、インバウンド及び国内景気の回復を織り込む楽観シナリオに基づいています。また、B/S改善のためのアセットライト戦略として、ROA3.5%以上(FP20は▲4.2%、FP19は0.3%)、ROE10%以上(FP20は▲21.7%、FP19は1.2%)を目指すこととしています。2021年3月に八景島北側の杉田ゴルフ場、テニスコート(2.4万坪)を売却し129億円を特益計上したほか、今期末に西武建設株の95%をミライトHD(1417)に売却する予定です。西武建設を手放すことで、売上高600億円・営業利益22億円のP/L貢献が失われる一方、380億円の特益計上が見込まれます。


他方、2022年以降の高輪・品川のプリンスホテル敷地等を中心とする大規模再開発(全5,000室のうち品川プリンスを除く高輪系3棟、1,500室が対象)や、所沢駅西口、東村山、中井-野方の再開発など西武園ゆうえんち改装以後も資金需要イベントが軒並み控えていることから、本年2月にはホテル等のリゾート31施設をシンガポール政府系ファンドGICに1,500億円で翌期売却することを公表しています。代表的な物件は芝のパークタワーで簿価が300億円超、苗場プリンスとスキー場が同100億円超、札幌プリンスが同50億円超などですが、売却益の太宗は芝パークタワーに起因するものとみられます。

 

他方、財務面については、前期には主力のみずほを中心に1,600億円を調達し、コミラインも600→1,500億円に増額するといった2,500億円規模のデット手当をした一方、みずほと政投銀を相手先に延べ800億円分の優先株を発行しています。また、今般のホテル等31物件の売却の取組により、税引後でも600~700億円程度の利益顕在化が見込まれることから、更なる自己資本の積み増しが見込まれます。これにより借入タームの中で最も厳しい「純資産2,834億円を維持&直前決算期比75%超」のコベナンツを大きくクリアしており、ひとまず一服しています。

 

株主還元については、新型肺炎禍前から配当性向を20%に抑えることを謳っていた経緯も踏まえ、僅か年5円の復配予想に留まっています。事業の回復も鈍く、傘下事業会社の優先株利払い負担も重いものの、今期は一過性の西武建設の売却益計上も寄与するため、このまま5円の有配で落着するものとみています。

 

*参考記事① 2021-07-19 1,331円 OP

【9024】西武HD/財務制限条項は一旦クリア、杉田ゴルフ場に次ぎ東京パークタワーも売却観測。

 

*参考記事② 2021-01-25  983円 OP

【9024】西武HD/傘下子会社の優先株発行により希薄化回避も、事業環境は一段と厳しく。

 

 

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