【9024】西武HD/財務制限条項は一旦クリア、杉田ゴルフ場に次ぎ東京パークタワーも売却観測。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9024】西武ホールディングス (東証1部) OP

 

現在値 1,331円/100株 P/E--.-  P/B 1.33  3月配当優待 9月優待

 

東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。

配当は3月末一括の年5円を予想しているため、配当利回りは約0.38%となります。

 

西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約3.46%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。

 

業績を確認していきます。当社は新収益認識基準に切り替えていますが、影響軽微です。

■2018年3月期 売上高 5,306億円、営業利益 642億円、EPS 136円 

■2019年3月期 売上高 5,659億円、営業利益 733億円、EPS 145円 

■2020年3月期 売上高 5,545億円、営業利益 568億円、EPS 15円

■2021年3月期 売上高 3,370億円、営業利益▲515億円、EPS▲241円 

■2022年3月期 売上高 4,560億円、営業利益 90億円、EPS▲16円 ce 新収益

◆2022年3月期 売上高 4,378億円、営業利益 47億円、EPS▲24円 cons.

□2021年9月2Q 売上高 2,200億円、営業利益 30億円、EPS 26.6円 ce

 

2021年3月期の売上高は前期比39.2%減の3,370億円、営業利益は同赤転の▲515億円(1,083億円の損益悪化)となりました。主力の都市交通事業については、新型肺炎禍で定期・定期外ともに約3割弱の乗客が減少し、鉄道・バスともに同水準の減収となりました。プリンスホテルについても、緊急事態宣言下で約2ヵ月の期間に渡って殆どのホテルで休業したため、gotoによる持ち直しはあったものの、通期RevPARは同74%減の水準にまで沈んでいます。他方、不動産事業は一部テナント賃料の減免はあったものの、ダイヤゲートのFR剥落も寄与し、概ね前年9掛けの水準を確保しています。なお全社計数ではホテルやレジャー施設、一部鉄道事業の休業中固定費のうち189億円を特損として落としており、実態の営業利益は▲700億円程度とみられます。

 

進行期である2022年3月期の見通しについては、売上高が35.3%増の4,560億円、営業利益は同黒転の90億円を予想しています。各種KPI前提については、鉄道・バス事業の収入を新型肺炎禍前の2020年3月期の85%水準まで緩やかに戻っていく想定をしているほか、プリンスホテルについても同85%水準のRevPAR9,917円でセットしています。既に開示されている4月・5月の月次によれば、鉄道業収入は同75%、ホテル業のRevPARは同20%と低調であるものの、会社側も1Q~1H期間は弱めの見込みのため、一応想定内と解されそうです。他方、不動産事業については紀尾井町の解約金受領もあり横ばい、建設事業も建材事業の売却はあるものの微減を見込んでおりますが、概ね予算通りの推移が見込まれます。

 

当社は新型肺炎禍で中計を取り下げていましたが、今般2024年3月期を最終年度とする新中計を開示しており、向こう3年で売上高3,370億円→5,380億円、営業利益▲515億円→660億円までそれぞれ復元させていく計画ですが、業績の定量計画前提はインバウンドと国内景気ともに回復する前提のため注意が必要です。他方、B/S改善のためのアセットライト戦略も掲げており、目標指標としてROA3.5%以上(FP20は▲4.2%、FP19は0.3%)、ROE10%以上(FP20は▲21.7%、FP19は1.2%)を目指すこととしています。実際に本年3月には八景島の北側にある杉田ゴルフ場やテニスコートおよそ2.4万坪を売却しており、129億円の特別利益を計上しているほか、足許では旗艦ホテルのひとつである「ザ・プリンスパークタワー東京」の売却観測が出ています。


特に当社の場合、ホテル・リゾート(ハワイ)事業の構成比が他民鉄比で大きく、新型肺炎禍による休業ダメージが甚大なため、上述のように資産の切り売りで凌いでいく必要があります。また、2022年以降の高輪・品川のプリンスホテル敷地等を中心とする大規模再開発(全5,000室のうち品川プリンスを除く高輪系3棟、1,500室が対象とみられる)のための資金手当ても別途必要となるほか、お膝元の所沢駅西口や東村山、中井-野方の再開発など、開発済のグランエミオ所沢や今般大改装を終えた西武園ゆうえんちの後にも資金ニーズの大きい案件が続々と続きます。

 

他方、P/L以上に財務改善や資金繰りが喫緊の課題となっっている状況には変わりなく、上述のアセットライト戦略にくわえ、実績期では主力行のみずほを中心に1,600億円を調達したほか、コミラインを600→1,500億円に増額し、2,500億円規模の資金手当てを実行しています。年末にはみずほと政投銀を相手先に、傘下の西武鉄道が700億円、プリンスホテルが100億円の優先株を発行しています。これによりタームの中で最も厳しい財務制限条項である「純資産2,834億円を維持&直前決算期比75%超」をクリアしたため、それなりの減損に耐えられるような状況になっています。

 

但し、非支配株主持分の傘下事業会社の優先株式発行では自己資本は改善しないため、株主還元については、新型肺炎禍前から配当性向を20%に抑えることを謳っていた経緯も踏まえ、僅か年5円程度の復配予定に留まっています。傘下事業会社の優先株利払い負担も重いと推察されるため、現状では有配予想となっているものの、普通株については連続で無配もなる可能性も十分にあろうかと思います。

 

*参考記事① 2021-01-25  983円 OP

【9024】西武HD/傘下子会社の優先株発行により希薄化回避も、事業環境は一段と厳しく。

 

*参考記事② 2020-09-02 1,133円 OP

【9024】西武ホールディングス/当面は雌伏期入り、“としまえん”敷地売却で資金繰りか。

 

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