【9024】西武ホールディングス/当面は雌伏期入り、“としまえん”敷地売却で資金繰りか。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_0755.jpg

【9024】西武ホールディングス (東証1部) OP

 

現在値 1,133円/100株 PER--.-  PBR1.02  3月配当優待 9月配当優待

 

東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。

配当(実績)は3月末・9月末の年2回・合計30円配当のため、配当利回りは2.64%となります。

 

西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約5.34%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。

 

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 5,120億円、営業利益 624億円、EPS 149.4円 

■2018年3月期 売上高 5,306億円、営業利益 642億円、EPS 136.7円 

■2019年3月期 売上高 5,659億円、営業利益 733億円、EPS 145.2円 

■2020年3月期 売上高 5,545億円、営業利益 568億円、EPS 15.2円

■2021年3月期 売上高 (未定)億円、営業利益(未定)億円、EPS(未定)円 ce

◆2021年3月期 売上高 4,699億円、営業利益 257億円、EPS 36.1円 cons.

□2020年6月1Q 売上高 663億円、営業利益▲176億円、EPS▲96.0円 (8/3) 

□2020年9月2Q 売上高 1,800億円、営業利益▲220億円、EPS▲86.9円 四e

 

2020年3月期の売上高は前期比2.0%減の5,545億円、営業利益は同22.5%減の568億円となり、前期比・対予算ともに大幅ショートとなりました。主力の都市交通事業については、雇用情勢好転による定期収入増やムーミン園開業、特急収入の増加による増額要素があったものの、期末にかけて新型肺炎の影響を受けて減収減益となりました。またホテル・レジャー事業に関しては新型肺炎影響の影響を更に色濃く受けたほか、昨年秋の台風等の影響もあり、セグメント利益は前期の半分以下にまで低迷しました。一方、不動産事業については、新本社ビル・ダイヤゲート池袋の開業が寄与し、フリーレント(FR)や減価償却費増による落ち分はあったものの、比較的底堅く推移したほか、ハワイ事業についてはプリンスワイキキ等の既存ホテルのRevPARが好調に推移し、唯一増収増益を確保しました。

 

2021年3月期の予算については、新型肺炎の影響により公表を見送っており、外部予想では売上高が15.3%減の4,699億円、営業利益は54.7%減の257億円水準が予測されていますが、その水準は大きく下回るものとみられます。去る8月3日に開示済となっている1Qによれば、売上高は前年同期比54.2%減の663億円、営業利益は同赤転の▲176億円で通過しており、400億円弱もの強烈な損益悪化となっています。足許の都市交通事業については、定期客で約3割の乗客が減少したほか、休業したプリンスホテルのRevPARは95%減水準にまで沈んでいます。また、これでもホテル等の休業期間中の固定費のうち100億円程度は特損で落としているため、営業利益は下駄を履いており、実態は見えがかり以上に悪いものと判断されます。そのため、不動産事業におけるダイヤゲートのFR剥落や、各種コスト削減により通期で200億円分浮上させる計画はあるものの、通期では赤字転落となる公算が極めて高いとみられます。

 

今期は目下進行中の3年中計の中間年度としての位置付けであり、当初はこの2021年3月期に営業利益736億円、翌2022年3月期に営業利益757億円を目指していましたが、今般の新型肺炎禍でこの目標を取り下げています。また、こうした業績目標値以外にも、2022年以降の高輪・品川のプリンスホテル敷地等を中心とする大規模再開発のための財務改善のために、配当性向を20%に留めるといった財務指針も掲げられていました。然しながら、ホテル・リゾート事業の構成比が他民鉄比で大きい当社は休業ダメージが大きく、損益的観点は勿論のこと、財務改善や資金繰りが喫緊の課題となっています。この対策として、1Q期間の雇用助成金をおよそ50億円強を受領する予定であるほか、主力行のみずほ銀行を中心に1,310億円を調達したほか、コミラインを600→1,500億円に増額し、2,200億円規模の資金手当てを実行しています(※先日閉園したとしまえん敷地も今後は“ハリーポッター”誘致も、都に500~800億円程度で売却するとみられます)。

 

かような状況のため、新型肺炎終息までは「必要最低限の事業運営に特化」することとし、業容拡大は目指さない方針を明らかにしているものの、そんな中でも①西武プリンスクラブ会員を中心とした外部DX戦略、②社員の在宅勤務やRPA活用による内部DX戦略、③SDGs対応、④新事業領域(MasS、自動運転、5G、キャッシュレス)での外部連携といった注力施策を掲げるとともに、中長期では最大の成長ドライバーである⑤高輪・品川、芝公園、新宿の再開発計画の推進を戦略に挙げています。特に高輪・品川については、リニア開業を控えて資産性が極めて高く、現時点でも数千億円の含み益が潜在しているとみられるため、これが株価の下支えとして機能することが期待されます。

 

一方、株主還元については、新型肺炎禍以前から財務体質改善のために配当性向20%を謳っていたこともあり、当面はかなり絞ってくる可能性がありそうです。民鉄他社で既に配当予想が出ている会社についても軒並み減配予想となっており、ホテル・リゾート事業やハワイ事業の負荷が大きく、今後の資金需要が大きい当社は配当によるキャッシュ流出を避ける意向がはたらくとみられ、今期は半減以下の大幅減配か最悪の場合は無配転落まで十分視野に入るものとみられます。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村