【9024】西武ホールディングス (東証1部) OP
現在値 983円/100株 P/E--.- PBR0.91 3月配当優待 9月優待
東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。
配当基準日は3月末・9月末の年2回ですが、配当予想は無配となっています。
西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約3.64%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。
業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 5,120億円、営業利益 624億円、EPS 149円
■2018年3月期 売上高 5,306億円、営業利益 642億円、EPS 136円
■2019年3月期 売上高 5,659億円、営業利益 733億円、EPS 145円
■2020年3月期 売上高 5,545億円、営業利益 568億円、EPS 15円
■2021年3月期 売上高 3,320億円、営業利益▲560億円、EPS▲210円 ce
◆2021年3月期 売上高 3,525億円、営業利益▲366億円、EPS▲137円 cons.
□2020年9月2Q 売上高 1,548億円、営業利益▲306億円、EPS▲130円(11/12)
2020年9月中間期の売上高は前年同期比47.4%減の1,548億円、営業利益は同赤転の▲306億円(745億円の損益悪化)となりました。主力の都市交通事業については、新型肺炎禍で定期客で3割・定期外客で4割の乗客が減少し、鉄道・バスともに同35%水準の減収となりました。プリンスホテルについては、緊急事態宣言下で約2ヵ月の期間に渡って殆どのホテルを休業したこともあり、RevPARは実に同82%減水準にまで沈んでいます。一方、不動産事業については一部テナント賃料の免除はあったものの、ダイヤゲートのFR剥落もあり概ね前年同期並みの水準を確保しています。ただ、全社計数においてはホテルやレジャー施設、一部鉄道事業にかかる休業期間中の固定費のうち130億円を特損段階で落としているため、実態としては表記よりも悪いとみられます。
2021年3月期通期の見通しについては、9月24日に開示しており、売上高が前期比40.1%減の3,320億円、営業利益は同赤転の▲560億円を予想しています。各種KPI前提については、鉄道・バス事業の収入を21年3月時点でも15%の減収(通期で26%)とみているほか、プリンスホテル等の下期の稼働率は35%程度(通期で24%)で想定しています。然しながら、既に開示されている10月・11月の月次によれば、鉄道業収入は▲16%→▲21%、ホテル業の稼働率は32%→37%(注:ADRも上昇)と今一歩であるほか、12月以降の感染拡大を踏まえるとこの水準を足許ではこれを大幅に下回っているとみられることから、9月下旬開示の表記見通しは既に達成不可能圏にある公算が高い状況と判断されろうです。
今期は目下進行中の3年中計の中間年度であり、当初はこの2021年3月期に営業利益736億円、翌2022年3月期に営業利益757億円を目指していましたが、今般の新型肺炎禍で取り下げています。こうした業績目標値以外にも、2022年以降の高輪・品川のプリンスホテル敷地等を中心とする大規模再開発のための財務改善のために、配当性向を20%に留めるといった財務指針も掲げられていました。然しながら、ホテル・リゾート事業の構成比が他民鉄比で大きい当社は休業ダメージが大きく、損益的観点は勿論のこと、財務改善や資金繰りが喫緊の課題となっています。
具体的な資金繰り対策としては、上期に主力行のみずほを中心に1,310億円を調達したほか、コミラインを600→1,500億円に増額し、2,200億円規模の資金手当てを実行しています。これに加えて、11月下旬にみずほと政投銀を相手先に傘下の鉄道事業会社である西武鉄道が700億円、プリンスホテルが100億円の優先株を発行しています。これは当社のコベナンツで純資産3,000億円弱&直前決算期比75%超の水準、2期連続で営業赤字とならないというのがあるため、それを意識した資本政策と考えられます。これにより、当社株主の希薄化が回避される一方で、子会社優先株の利払い負担が発生するため、中長期的な配当水準の回復が難しくなるという負担を負うこととなりましたが、一旦はこれで仕方ないかなと思います。
但しかような借入やコミライン設定、(非支配株主持分となる)傘下事業会社の優先株式発行では自己資本は厚くならず、むしろ財務悪化方向に振れてしまうことがネックとなります。そのため、今後は昨年閉園したとしまえん敷地も東京都に売却するものとみられ、土地簿価が100億円程度に対し、売却価格は500~800億円にのぼると考えられることから、こうした含み益の顕在化により財務体質の改善を図っていくものと考えられます。かような状況のため、高輪エリア再開発といった多額の資金を要する投資は進めずらくなりますが、当面は地盤の所沢のエミオを核とした再開発や、川越の観光型MaaSなど比較的手掛けやすい案件で手堅い成長を目指すと考えられます。
そのため株主還元については、新型肺炎禍前から配当性向を20%に抑えることを謳っていた経緯もあり、今期の通期見通し公表時に無配転落を明らかにしています。ただ足許の更に厳しい業容を考慮すると、件の優先株利払いにより、翌2022年3月期の復配についてもかなり微妙になってきたと判断されます。
*参考記事① 2020-09-02 1,133円 OP
【9024】西武ホールディングス/当面は雌伏期入り、“としまえん”敷地売却で資金繰りか。
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