【9024】西武ホールディングス/減額後中計もまだ強気、格付けA格維持なるか。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9024】西武ホールディングス (東証プライム) OP

 

現在値 1,353円/100株 P/E 4.9  P/B 1.28  3月配当優待 9月優待

 

東京都北西部、埼玉地盤の西武鉄道とプリンスホテルが中核。都内に大型物件で不動産拡大。

配当は3月末・9月末の年10円配予想のため、配当利回りは約0.74%となります。

 

西武ホールディングスは株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回、3単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、西武グループ各社で使える各種割引券3,000円分(※2千円利用につき1千円利用可)を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚790円で換算した場合の3単元保有時の配当優待利回りは約3.77%となります。なお、1単元保有の場合は優待が年1回に制限されますが、その場合の利回りは表記よりもやや良化します。

 

業績を確認していきます。

■2020年3月期 売上高 5,545億円、営業利益 568億円、EPS 15円

■2021年3月期 売上高 3,370億円、営業利益▲515億円、EPS▲241円 

■2022年3月期 売上高 3,968億円、営業利益▲132億円、EPS 35.3円

■2023年3月期 売上高 4,430億円、営業利益 310億円、EPS 273.1円 ce

□2022年6月1Q 売上高 1,034億円、営業利益 76.2億円、EPS 12.2円(8/4) 

□2022年9月2Q 売上高 2,140億円、営業利益 150億円、EPS 16.6円 ce

 

2022年3月期の売上高はYoY+17.7%の3,968億円、営業利益はYoY+383億円の▲132億円となり、3Qの減額見通しを更に下回って着地しました。主力の都市交通事業は、人流回復で定期外が同+16.0%と反発も想定以下だったほか、定期も戻りが鈍く同+2.9%止まりとなりました。他方、プリンスホテルは前年ハードルの低さや五輪需要もあり、RevPARは同+62.1%の4,910円となったほか、不動産事業は紀尾井町のテナント解約による一時金収入や商業施設利用者数増加により大幅増となりました。なお、西武建設株の95%をミライトHD(1417)に売却したため、373億円の特益を営業外計上しています。

 

進行期である2023年3月期の予算については、売上高がYoY+11.6%の4,430億円、営業利益はYoY+442億円の310億円を見込んでいます。予算前提諸元については、鉄道事業では平時の95%程度(定期は90%弱、定期外は期末に100%)を見込むほか、プリンスホテル等の稼働率は60.5%と倍増想定とし、多少の単価回復も織り込むRevPARについては同+111.2%の10,232円と急回復を見込みます。他方、不動産事業は解約違約金の剥落やリゾート販売の減少で大幅減を見込むほか、建設事業は西武建設株売却により、売上高600億円超と営業利益30億円程がフルで剥落します。

 

当社は2024年3月期を最終年度とする現中計を下方修正しており、向こう3ヵ年間の業績伸長目標を、売上高3,370億円→4,430億円(当初は5,380億円)、営業利益▲515億円→550億円(当初は660億円)に減額しています。但し、インバウンド及び国内景気回復を織り込んだ楽観ベースのファンダメンタルズ前提を維持しているほか、西武建設株売却にともなう業績剥落や、ホテル売却によりハネる数値的な影響を反映したのみの修正となっており、中計策定時点より悪化した足許状況は未反映のため、減額後もなお強気の計画と解されます。

 

また、B/S改善のためのアセットライト戦略を推進しており、別途定めていたKPI目標も上記の売却による数値的な影響を反映し、ROA2.0%+(当初は3.5%+)、ROE8.0%+(当初は10%+)に修正しています。西武建設株以外では、2021年3月に八景島北側の杉田ゴルフ場、テニスコート(2.4万坪)を売却したほか、来年の3月までにホテル等のリゾート31施設をシンガポール政府系ファンドのGICに合計1,471億円で売却します。代表物件は芝のパークタワーで簿価が300億円超、苗場プリンスとスキー場が同100億円超、札幌プリンスが同50億円超などであり、これらの簿価合計が660億円のため、800億円程度の含み益が顕在化され、その分財務が健全化することとなります。


財務面については、主力のみずほを中心に通常借入とコミライン合計で2,500億円規模のデット手当をした一方、傘下の西武鉄道がみずほと政投銀を相手先に延べ800億円分の優先株を発行しています。これら取組と800億円の含み益顕在化により、「純資産2,834億円を維持&直前決算期比75%超」という最も厳しい財務制限条項はクリアする公算ですが、R&IとJCRのA−格が依然ネガティブとなっており、万一格下げでB格落ちする場合は利払い負担増加が懸念されます。

 

当社は翌2024年3月期にお膝元の所沢西口再開発の竣工を控えるほか、翌々2025年3月期からは高輪・品川のプリンスホテル敷地等を中心とする品川駅周辺の大規模再開発(全5,000室のうち品川プリンスを除く高輪系3棟、1,500室が対象)が控えており、相次ぐオフバランスを実行してなお巨額の資金需要があるような状況です。そのため、株主還元については、5年増配の年10円配当(配当性向3.7%)に留まるものの、会社側の配当性向は20%以下に抑えて財務温存する意向があることから、その辺は妥当な還元ポリシーと考えます。


*参考記事① 2022-03-24 1,322円 OP

【9024】西武ホールディングス /西武建設株売却により最終黒字圏、芝ホテル等の売却は翌期。

 

*参考記事② 2021-07-19 1,331円 OP

【9024】西武HD/財務制限条項は一旦クリア、杉田ゴルフ場に次ぎ東京パークタワーも売却観測。

 

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