【3086】J.フロント リテイリング/中国人訪日客回復なら、心斎橋店の回復は顕著になろう。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3086】J.フロント リテイリング(東証プライム) OP


現在値 1,182円  P/E 19.3  P/B 0.87  2月配当優待 8月配当優待

百貨店の大丸と松坂屋が統合。関西、中京圏が地盤。子会社にパルコ。
配当金は2月・8月の年2回で合計31円のため、配当利回りは2.62%となります。

J.フロント リテイリングは株主優待制度を実施しており、単元株以上を保有する2末・8末の株主に対して、10%割引優待カードを進呈しております。このカードの持参により、有料催事が同伴者1人まで無料となるため、仮に入場料1,000円の催事に、2人で年1回行った場合を想定した際の配当優待利回りは、およそ約4.31%となります。

業績を確認していきます。IFRSに移行しています。

■2020年2月期 売上収益 4,806億円、営業利益 402億円 EPS 81円  

■2021年2月期 売上収益 3,190億円、営業利益▲242億円 EPS▲100円

■2022年2月期 売上収益 3,314億円、営業利益 93.8億円 EPS 16.5円

■2023年2月期 売上収益 3,460億円、営業利益 235億円 EPS 61.0円ce修正(9/27) 
□2022年8月2Q 売上収益 1,691億円、営業利益 132億円 EPS 38.7円 

□2022年11月3Q 売上収益 2,569億円、営業利益 201億円 EPS 56.3円(12/27)


2022年8月中間期の売上収益はYoY+7.5%の1,691億円、営業利益はYoY+145億円の132億円で進捗し、対予算では減収増益となりました。柱の百貨店事業は、第6波・第7波の影響により想定以下となったものの、好調な外商売上が全体を押し上げました。店舗別では固定客の多い神戸店が快走したほか、前年ハードルの低い心斎橋店、東京店が反発したものの、梅田店や地方店の回復の鈍さが目立ちました。SC事業もテナント売上回復による賃料増により増益、不動産事業は工事減少により減益となりました。


なお2023年2月期の通期の見通しは2Q前に修正しており、売上収益がYoY+4.4%の3,460億円(期予:3,700億円)、営業利益はYoY+150.5%の235億円(期予:210億円)に修正しています。上期の新型肺炎禍による戻りの鈍さを反映して百貨店を中心に売上高を減収させる一方、経費節減効果や計画外の助成金収入のほか、パルコ他SC事業の賃料減免の一巡により、電気代コスト増等を飲み込んで利益を増額しています。12月27日開示済の3Qは、売上収益2,569億円&営業利益201億円と修正予算比でも強含みで推移しています。

 

進行期は3年中計の中間年度の位置付けとなり、翌2024年2月期に新型肺炎禍前の実績営業利益である403億円の復元を目指す意欲的な内容となっています。戦略的取組事項として、①不動産化戦略、②OMO戦略、③文化・芸術戦略を挙げているほか、会社周りのリストラ策として、固定費削減・資産効率向上といった構造改革を重点施策として挙げています。

 

①の不動産は、これまでのSC事業とデべ事業を切り分け、パルコにSC事業を残す一方で、新設するJ.フロント都市開発にデべ機能を分割・移管します。新デべ会社は旗艦店を有する全国7都市で商業を中心とした複合開発を手掛ける方針であり、26年に「錦三丁目25番街区計画(栄角地、三菱地所ほかJV)」、「心斎橋プロジェクト(ヒューリックほかJV)」といった大型再開発に参画します。②のOMOは、特に40代までの若年層の売上高も全社の3割に迫っていることから、データ活用によるアプリ顧客のエンゲージメント強化により、買上単価の増加を図ります。

 

なお全社の構造改革については、2020年2月比で累計▲100億円/年の固定費削減を目標に掲げており、初年度で▲43億円を削減したほか、進行期も▲53億円を削減できる見通しのため、現段階では累計▲126億円と想定超のコスト削減が見込まれます。他方、中計で織り込んでいない水道光熱費の高騰によるダウンサイドが発生しているため、中計達成の如何は中国人訪日客の戻りの速さとの“綱引き”になるものとみられます。

 

一方、株主還元については2円増配となる年31円配を予想しています。計算上の配当性向は50%程に上るものの、自己資本比率は30%程度と安定的な水準を確保しています。今後はデべ事業への注力やCVCへの投資を進めるため、引き続き資金需要が発生するものの、業績回復にともなって漸増配傾向が維持されるもの見込まれます。

 

*参考記事① 2022-07-13 1,041円 NT

【3086】J.フロント リテイリング/若年富裕層の開拓が進み、回復モメンタムは想定超。

 

*参考記事② 2020-12-17 894円 NT

【3086】J.フロント リテイリング/心斎橋PARCOが開業、不動産賃貸業化が急速に進展。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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