【3086】J.フロント リテイリング/心斎橋PARCOが開業、不動産賃貸業化が急速に進展。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3086】J.フロント リテイリング(東証1部) OP


現在値 894円 PER--.- PBR0.64 2月配当優待 8月配当優待

百貨店の大丸と松坂屋が統合。関西、中京圏が地盤。子会社にパルコ。
配当金は2月・8月の年2回で合計27円のため、配当利回りは3.02%となります。

J.フロント リテイリングは株主優待制度を実施しており、単元株以上を保有する2末・8末の株主に対して、10%割引優待カードを進呈しております。このカードの持参により、有料催事が同伴者1人まで無料となるため、仮に入場料1,000円の催事に、2人で年1回行った場合を想定した際の配当優待利回りは、およそ約7.49%となります。

業績を確認していきます。2018年2月期よりIFRSに移行しています。

■2017年2月期 売上高 11,085億円、営業利益 445億円 EPS 103円 

■2018年2月期 売収益 4,699億円、営業利益 495億円 EPS 108円 

■2019年2月期 売収益 4,598億円、営業利益 408億円 EPS 104円  

■2020年2月期 売収益 4,806億円、営業利益 402億円 EPS 81円  

■2021年2月期 売収益 3,375億円、営業利益▲206億円 EPS▲71円ce修正(10/13)
□2020年8月2Q 売収益 1,474億円、営業利益▲206億円 EPS▲62円(10/13)


2020年8月中間期の売上収益は前年同期比34.7%減の1,474億円、営業利益は同458億円減の▲206億円で着地し、壊滅的な業績となったものの、1Q時点の修正予算に対してはやや上振れして着地しました。主力の百貨店事業については、新型肺炎の本格化を受けて1ヵ月半の休業を余儀なくされたことが影響し、店舗売上別では京都店や神戸店、札幌店が前年同期比6割程度と比較的健闘した一方、都心型の旗艦大型店である心斎橋店、梅田店、東京店については同4割台に留まりました。同様にパルコ事業についても同様に2ヵ月の休業を強いられ、テナント家賃の減免により赤字転落となったものの、不動産事業については「GINZA SIX」の家賃減免や売上歩合の収受減があったものの、オフィス賃料の下支え等により黒字を確保しています。


なお2021年2月期の通期見通しについては、1Q時点公表値から修正しており、売上収益が前期比29.8%減の3,375億円(従予:4,111億円)、営業利益は同赤転の▲206億円(従予:▲300億円)に修正しています。主力の百貨店事業については、インバウンドの復活を見込まない一方、富裕層(外商)の戻りを織り込んでおり、3Q単独の売上は同81.4%、4Qは同88.7%水準を見込んでいます。

また、パルコ事業については11月20日に心斎橋本館を開業しているものの、引き続きテナント家賃減免や劇場等のダメージを見込んでいます。全社的には上期の上振れのみを取り込む一方、下期は据え置くやや保守的な組み立てとなっていますが、足許百貨店事業の月次売上高は80%前後の水準で推移しているほか、「go to」停止等のマインド低下もありビハインドとみられます。

 

今期は新5年中計の4年目となっており、最終年度である2022年2月期に営業利益ベースで560億円(CAGR6%)を見込んでおり、折り返しまではインバウンドの堅調を前提に射程圏に捉えていましたが、新型肺炎の本格化もあり達成は難しくなりました。既述のとおり、旗艦の大丸心斎橋本館が満を持して建替えを完了し、同館はパルコ部分を含め65%を定借でテナント貸しするため百貨店売上自体は減少するものの、賃貸業への移管部分については採算性を改善させています。パルコ事業についても、渋谷店、サンエー浦添西海岸店、錦糸町パルコを開業したほか、本年2月には658億円を投じてパルコ自体を完全子会社化し、少数持分の利益取込も完了させるなど能動的な施策自体は着実に実施されてきた印象です。

 

中計の残り1年半の部分は、新型肺炎禍での体制立て直し期間(“完全復活”という呼称を用いている)となり、会社側では2020年2月期の業績水準である営業利益400億円を奪回すべきハードルとして設定している模様です。方針として、①構造改革、②DX、③パルコ相乗効果を挙げており、具体的にはDXを活用した本業の更なるリストラと、不動産賃貸業のパルコ集約により、百貨店業からディベロッパー業にシフトしていく方針と考えられます。ただ営業利益400億円の奪回の可視性は低く、ワクチン開発の急速な進展とインバウンドの早期復元、同売上比率の高い心斎橋店、梅田店、渋谷PARCOの売上急回復なかりせば達成不可能と考えられます。

 

一方、株主還元については配当性向30%基準を採用していましたが、今般9円減配となる年27円配を公表しています。これは現時点での自己資本比率がおよそ3割弱あることや、事業利益ベースでは今期黒字を確保することへの会社側のコミットメントを示すものとなっています。ただ、経営陣の意気込み自体は評価出来るものの、今後のディベロッパー事業や各種リストラ退職金の資金需要を鑑みると、より大胆な減配に踏み切っても良かったものと考えています。

 

*参考記事① 2019-06-29 1,235円 NT

大丸心斎橋本館・渋谷パルコ開業で急回復、J.フロント リテイリング(3086)。

 

*参考記事② 2018-05-16 1,806円 NT

不動産賃貸業へのシフトが加速、J.フロント リテイリング(3086)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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