【9861】吉野家ホールディングス/当面は本業テコ入れの動きが中心、期末配当未定ながら有配か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9861】吉野家ホールディングス(東証1部)  NT


現在値 1,928円/100株 PER--.- PBR3.02 2月配当優待 8月配当優待

牛丼屋の老舗、国内2位。収益源の『吉野家』を直営軸に全国展開。
配当基準日は2月、8月の年2回ですが配当予想は未定となっています。

吉野家ホールディングスは株主優待として、2月末・8月末に100株以上を保有する株主に対して3,000円分の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回り(無配の前提)を算出した場合、約3.11%となります。

業績を確認していきます。  
■2017年2月期 売上高 1,886億円、経常利益 27.5億円、EPS 19.3円 

■2018年2月期 売上高 1,985億円、経常利益 46.0億円、EPS 23.1円   

■2019年2月期 売上高 2,023億円、経常利益 3.4億円、EPS▲92.9円   

■2020年2月期 売上高 2,162億円、経常利益 33.6億円、EPS 12.4円 

■2021年2月期 売上高 1,723億円、経常利益▲78.0億円、EPS▲139.3円 ce修正  
□2020年8月中 売上高 819億円、経常利益▲50.0億円、EPS▲88.3円(10/9)


2020年8月中間期の売上高は前年同期比23.4%減の819億円、経常利益は同赤転の▲50.0億円で着地し、予算との比較は無いものの大赤字となりました。主力の吉野家については緊急事態宣言下でも営業を継続したほか、客単価が高くなる傾向にある持ち帰りやデリバリー需要が下支えしたため、外食業界内では比較的健闘したものの、時短営業といったマイナス要因までは相殺しきれず既存店売上は91.6%止まりとなりました。また、ビルイン型の多いはなまるについては、商業施設自体の休業影響を受ける形で既存店売上は6割程の水準となったほか、元より持ち帰り主体の京樽についても施設休業の影響やイベント需要減少にともなう弁当需要喪失により、同6割強の水準に留まりました。

 

2021年2月期通期の見通しについては、期初未定としていたものを公表に踏み切っており、売上高は前期比20.3%減の1,723億円、経常利益は同赤転の▲78.0億円を予想しています。全社の既存店売上高の前提を下期90%(通期88%)で置いており、主力の吉野家については店内飲食の回復を企図し、「ポケ盛り」の店内再販や、人気の「牛すき鍋膳」のアッパー品として「黒毛和牛すき鍋膳」を投入し、集客増と高単価化を狙います。また、はなまるについては価格改定効果を見込むほか、京樽については店内飲食・持ち帰り併設型の「鮨小路京」業態を本格展開します。利益面については、年▲70億円のコスト削減を目標に食材原価減や本部経費削減・不採算店閉鎖を実行する計画ですが、上期までにフル発現しているため、追加の削りシロは既に無いような状況です。

 

当社は2025年2月期を終期とする10年長期経営計画を走らせており、およそ3年スパンで「準備期」「拡大期」「収穫期」の3フェーズに期分けしています。第1フェーズである「準備期」の3年間は最終年度である2019年2月期に売上高2,100億(CAGR4%)、営業利益60億円(CAGR55%)を計画していましたが、“働き方改革”等に起因する想定超の人件費増もあり、売上高こそ2,000億円超に拡大したものの、利益はほぼトントンという結果に終わりました。そのため、本来は2020年2月期から第2フェーズの「拡大期」へ移行する予定だったものの、基盤整備を理由に1年先送りしていましたが、新型肺炎が猛威を振るう今年も次の3年間である「拡大期」に移行出来ず、事実上形骸化してしまっているような状況となります。

 

本来であれば、セルフうどん業界で2位に付けるはなまるの出店や、既に1,000店程を展開する海外事業の拡大により成長していく目論見でしたが、海外は店内飲食の禁止やロックダウンの影響で国内以上に既存店が苦しい状況となっており、この上期だけで40店舗程の店舗純減を強いられ、縮小方向に向かっています。また、そもそもはなまるや京樽、アークミール、せたが屋等については外部から買収したように、MAを活用した外部成長戦略に特徴があるものの、足許ではアークミールを安楽亭に売却(2020年2月)するなど、一転して選択と集中を進めているような状況のため、当面は本業回帰で既存業態のテコ入れ中心になろうかと思われます。

 

ただ当社の場合は外食業界きっての好財務体質であり、足許で運転資金用の追加借入を200億円ほど起こしたとみられるものの、自己資本比率は依然3割台をキープ出来ており余裕があります。そのため、中間配当こそ見送ったものの、無配転落は避られる公算が高く、現状では未定ながら期末は5~10円程度の幅で有配になるものと考えております。

 

*参考記事① 2020-06-15 2,331円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/業績未定も、配当公表で好財務体質が光る。

 

*参考記事② 2018-05-30  2,115円 NT

“グローバル外食株”としての評価はまだ先、吉野家ホールディングス(9861)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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