【9861】吉野家ホールディングス/業績未定も、配当公表で好財務体質が光る。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9861】吉野家ホールディングス(東証1部)  NT


現在値 2,331円/100株 PER--.- PBR3.15 2月配当優待 8月配当優待

牛丼屋の老舗、国内2位。収益源の『吉野家』を直営軸に全国展開。
配当は年2回の合計20円配で、配当利回りは約0.86%となります。

吉野家ホールディングスは株主優待として、2月末・8月末に100株以上を保有する株主に対して3,000円分の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りを算出した場合、約3.43%となります。

業績を確認していきます。  
■2017年2月期 売上高 1,886億円、経常利益 27.5億円、EPS 19.3円 

■2018年2月期 売上高 1,985億円、経常利益 46.0億円、EPS 23.1円   

■2019年2月期 売上高 2,023億円、経常利益 3.4億円、EPS▲92.9円   

■2020年2月期 売上高 2,162億円、経常利益 33.6億円、EPS 12.4円 

■2021年2月期 売上高 (未定)億円、経常利益 (未定)億円、EPS (未定)円 ce  
□2020年8月中 売上高 1,016億円、経常利益 41.0億円、EPS 26.3円 四e

2020年2月期の売上高は前期比6.8%増の2,162億円、経常利益は同10倍の33.6億円で着地し、期初予算を上回って大幅な増益を確保しました。主力の吉野家における既存店売上は106.7%と極めて好調に推移し、これは「RIZAP牛サラダ」、「牛すき鍋膳」、「ポケ盛」といった限定メニューが集客寄与したほか、テイクアウト80円引きやPaypay割引といった割引施策が奏功したことに由ります。

また、はなまるも吉野家との相互送客を企図した「天ぷら定期券」や「うどんチケット」の投入等により、既存店売上高は101.5%となりました。利益面については、時給高騰によりパート人件費が+6.5%も増加したものの、これらのトップラインの増加で飲み込んだ格好となります。


進行期である2021年2月期の予算については、新型肺炎の影響により合理的な算出が出来ないことから未定としています。既に開示されている既存店の月次売上高によれば、3月はテイクアウト需要で吉野家が底堅く推移(98.2%)したものの、施設内店舗の多いはなまる・京樽が低調となり、新型肺炎による影響が深刻化した4月・5月については、主力の吉野家も92.7%水準に落ち込みました。海外事業については、634店もの店舗を運営する中国に関しては既に大半の店舗が営業を再開しているものの、アメリカ(104店)・ASEAN(169店)などは依然限定的な営業を強いられているものとみられます。なお、今期からステーキのどんやフォルクスを運営するアークミールを安楽亭に譲渡しているため、売上高200億円・営業赤字3億円程度が通期で剥落します。

 

当社は2025年2月期を終期とする10年長期経営計画を走らせており、およそ3年スパンで「準備期」「拡大期」「収穫期」の3フェーズに期分けしています。第1フェーズである「準備期」の3年間は最終年度である2019年2月期に売上高2,100億(CAGR4%)、営業利益60億円(CAGR55%)を計画していましたが、“働き方改革”や人手不足深刻化による想定超の人件費の増加もあり、売上高こそ2,023億円に拡大したものの、営業利益は僅か1億円という惨憺たる結果に終わりました。そのため、本来は2020年2月期から第2フェーズの「拡大期」へ移行する予定だったものの、基盤整備を理由に1年先送りしていましたが、新型肺炎が猛威を振るう今年も「拡大期」に移行出来ない見通しとなり、長期経営計画は事実上ワークしていないような状況に陥っています。

 

本来は成長戦略の核として、他社より長い歴史を誇る海外事業(米国40年・台湾30年・中国25年)を拡大させる計画であり、100店超の展開を見込める国は直営で、それ以外の国は合弁もしくはFCで展開していく方針としています。当社の場合、長い歴史から既にローカライズが相当程度進んでおり、現法が出店やエリア拡大をほぼ独力で進められることから、その自然拡大に期待する形となります。一方、国内吉野家については、店舗数が1,200店で頭打ち状態になっており、目下(人件費削減のために)セルフサービス式店舗への改装を進めていますが、改装後店舗ではテイクアウト客や女性客の大幅増加といった副産物的な効果がみられており、意図せず新型肺炎対応型の店づくりが出来ている側面もあるにはあるようです。

 

ただ会社側はこうした成長ストーリーよりも、足許では資金繰りをはじめとする経営安定性を重視しているフシもあり、新規投資や改装を抑えめにしてキャッシュを維持する方針のようです。ただ当社の場合は外食業界きっての好財務を維持しており、自己資本比率もやっと4割を切ったような状況なので、テイクアウト施策推進で売上減を食い止められれば、再度投資に振り向けることも出来得ると考えています。実際に好財務の証左として、業績未定にも拘らず年20円の配当予想を公表しています。

 

*参考記事① 2018-05-30  2,115円 NT

“グローバル外食株”としての評価はまだ先、吉野家ホールディングス(9861)。

 

*参考記事② 2017-11-27  1,833円 NT

ペッパーに時価総額逆転許す、試される古参・吉野家ホールディングス(9861)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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