【8233】髙島屋/当面はリストラで凌ぎ、再浮上はインバウンド次第か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8233】髙島屋(東証1部)  NT


現在値 971円 PER--.- PBR0.37 2月配当優待 8月配当優待

東京、大阪など全国展開する老舗百貨店。シンガポールSC店と東神開発寄与大。
配当金は2月末・8月末の年2回で合計24円で、配当利回りは2.47%となります。

髙島屋は株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末・8月末の株主に対して、10%割引優待カードを進呈しております。このカードの持参により、有料催事が3人まで無料となるため、仮に入場料1,000円の催事に、2人で年1回行った場合を想定した場合における配当優待利回りは、およそ約4.53%となります。

業績を確認していきます。

■2017年2月期 売上高 9,236億円、営業利益 340億円 EPS 119円 

■2018年2月期 売上高 9,495億円、営業利益 353億円 EPS 135円

■2019年2月期 売上高 9,128億円、営業利益 266億円 EPS 94円

■2020年2月期 売上高 9,190億円、営業利益 255億円 EPS 93円

■2021年2月期 売上高 (未定)億円、営業利益 (未定)億円 EPS (未定)円 ce

2020年2月期の売上高は前期比0.7%増の9,190億円、営業利益は同4.0%減の255億円となり、中間時点の減額修正予算も下回って着地しました。売上高は約2割を占める外商客を中心に消費増税前の仮需が想定超となったほか、日本橋SCのフル貢献等により一応は増収を確保したものの、中国EC法改正や米中貿易摩擦影響でインバウンド免税売上が大幅減となったほか、秋口の大型台風や年明け以降の新型肺炎の影響を受けて未達に終わりました。営業利益についても、IFRS16号適用による賃借物件オンバランス化により27億円分(例:大阪店は南海電鉄からのリース資産)の見かけ上の良化要素があったものの、トップラインの大幅未達が響いた格好となります。なお、IFRS適用外ベースの実態営業利益は229億円であり、14%減益となっています。


進行期である2020年2月期の予算については、新型肺炎影響の合理的な見極めが出来ないことから、期初段階では未定としています。旗艦店である大阪店・日本橋店・横浜店を含むあらかたの店舗において、4月8日から5月半ば~下旬まで食品フロアを除き休業していたこともあり、開示されている月次売上高情報によれば3月は前年同期比65%水準だったものの、4月は同30%、5月は同35%水準にまで落ち込んでおり、こと免税売上に限れば同1%前後と壊滅的な状況となっています。今年度の取り組みとしては、各種コスト削減(※後述)にくわえ、底堅い業績の続くSC開発子会社/東神開発による玉川SCの改装と流山おおたかの森の周辺開発を予定しています。


これまで当社はローリング方式で4年中計を公表しており、最終年度となる2024年2月期に売上高9,900億(CAGR1.6%)、営業利益430億円(CAGR10%)を見込んでいましたが、今次新型肺炎影響で中計を一旦棚上げしています。そのため2023年2月期までの向こう3ヵ年を緊急的経営期間に位置付け、合計▽120億円のコスト削減(人件費▲60億円、庶務費▲20億円、減価償却費▲40億円)を新たな目標値としており、主としてリストラ方式により営業利益水準の回復を図ります。直近数期に渡る好業績は、水物である大阪店・新宿店のインバウンドによる免税売上高が実態以上に業績をドライブさせていた側面が強く、新型肺炎後に素直にそれが戻るとは考えずらいため、ひとまずは体制強化を図る狙いがあるものとみられます。

 

2019年日本橋SCの開業後は新店パイプラインに乏しく、港南台店及びららぽーと海老名内のスタイルメゾンの撤退を明らかにしたほか、連結子会社の米子高島屋の株式を地元企業へ譲渡したほか、本年6月には南海電鉄と合弁の地下専門店事業子会社である新南海ストアを大阪メトロに売却するなどしており、業容の縮小がみられます。そのため、今後の成長策としては、富裕層向けの信託業やSBIとの新規提携による顧客への投信販売、SC開発子会社である東神開発を中心とした海外開拓(ベトナムの本格化とタイのテコ入れ)といった百貨店周辺事業がメインになるものと考えられます。

 

財務状況については、既発債償還等のため2018年12月に600億円のユーロCBを刷っているものの、行使価格が@2,180円であるため、これが基本的には全部負債として認識されるものの、足許の自己資本比率はIFRS16号採用による悪化分や100億円(4.6%)の自社株買いを考慮してなお37.2%水準を確保しているため、当面の資金繰りには問題がなさそうです。業績未定ながらも配当予想は年24円を公表しているため、財務健全性の証左にはなろうかと考えています。

 

*参考記事① 2020-01-10  1,228円 NT

【8233】髙島屋/インバウンド一巡で、実力ベースでは2桁減益。

 

*参考記事② 2019-06-17 1,128円 NT

日本橋SCとタイ開業も、業績はピーク感も強い・髙島屋(8233)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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