【8233】髙島屋/インバウンド一巡で、実力ベースでは2桁減益。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8233】髙島屋(東証1部)  NT


現在値 1,228円 PER12.4 PBR0.47 2月配当優待 8月配当優待

東京、大阪など全国展開する老舗百貨店。シンガポールSC店と東神開発寄与大。
配当金は2月末・8月末の年2回で合計24円で、配当利回りは1.95%となります。

髙島屋は株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末・8月末の株主に対して、10%割引優待カードを進呈しております。このカードの持参により、有料催事が3人まで無料となるため、仮に入場料1,000円の催事に、2人で年1回行った場合を想定した場合における配当優待利回りは、およそ約3.58%となります。

業績を確認していきます。
■2016年2月期 売上高 9,295億円、営業利益 329億円 EPS 135円 

■2017年2月期 売上高 9,236億円、営業利益 340億円 EPS 119円 

■2018年2月期 売上高 9,495億円、営業利益 353億円 EPS 135円

■2019年2月期 売上高 9,128億円、営業利益 266億円 EPS 94円

■2020年2月期 売上高 9,330億円、営業利益 280億円 EPS 99円ce修正
□2019年8月2Q 売上高 4,531億円、営業利益 134億円 EPS 71円

□2019年11月3Q 売上高 6,766億円、営業利益 202億円 EPS 95円(12/26)

2019年8月中間期の売上高は前年同期比2.6%増の4,531億円、営業利益は同変わらずの134億円となり、期初予算を下回って着地しました。売上高は構成比の約2割を占める外商が前年比4.2%増と堅調に推移したほか、日本橋SCのフル貢献等により一応は増収を確保したものの、中国EC法改正や米中貿易摩擦による影響でインバウンド向けの免税売上が計画比23億円ショートしました。営業利益についても、トップラインの未達が響いており、IFRS16号適用による賃借物件のオンバランス化により14億円分(例:大阪店は南海電鉄からのリース資産)の良化要素があるものの、その分を控除した実力ベースでは2桁の減益で着地しています。


なお2020年2月期通期の予算についても減額しており、売上高が前期比2.2%増の9,330億円(従予:9,420億円)、営業利益は5.0%増の280億円(従予:310億円)にそれぞれ修正しています。昨年3月に開業した日本橋SCがほぼ通期で寄与するほか、旗艦の大阪店の売上高前提を前期比103.1%、日本橋店を103.2%、新宿店を99.2%でセットしており、大阪店や日本橋店は若干増額する一方、同程度の売上成長を見込んでいた新宿店が一転してマイナス成長となる見通しです。利益面については、上述のとおりインバウンド弱含みによるトップラインの低迷や消費増税反動減を織り込むものの、前期計上の日本橋SCの開業費剥落と、IFRS16号適用による営業利益の押し上げ効果が通年では27億円寄与(経常利益は逆に▲21億円マイナス寄与)することが大きく、減額修正後も一応増益を確保する見通しとなっています。


当社はローリング方式で4年中計を公表しており、最終年度となる2024年2月期に売上高9,900億(CAGR1.6%)、営業利益430億円(CAGR10%)をそれぞれ見込んでいます。然しながら、1年前のローリング前と比べるとトップラインが減少している上に1年後倒しとなっているほか、当社は定常的に中計の下方ロールを行って目標額を減額しているため殆ど参考になりません。直近数期に渡る好業績は、“水物”である大阪店・新宿店のインバウンドによる免税売上高が業績をドライブさせていた側面が大きく、米中貿易摩擦や中国改正EC法の影響でインバウンドが一服しつつある中で、“真水”の業績をベースに会社側施策によるオーガニック成長策が全て上手くいったと仮定しても、修正目標はなお過大であり、業績のビジビリティはかなり低いものと考えられます。

 

また昨年日本橋SCの開業後は新店パイプラインに乏しく、それどころか昨年10月に港南台店及びららぽーと海老名内のスタイルメゾンの撤退を明らかにしたほか、連結子会社の米子高島屋の株式を地元企業へ譲渡することととしており、国内百貨店業としては縮小傾向にあります。そのため、今後の成長策としては、クレジット等金融業の業容拡大(例:富裕層向けの信託業)や、SC開発子会社である東神開発を中心とした海外開拓を柱に据えており、この中では海外のベトナム事業が既に黒字化しているので、この中では比較的早期に数字貢献する可能性がありそうです。

 

他方、財務状況については、2018年12月に600億円のユーロCBを刷っているものの、行使価格が@2,180円であるため、これが基本的に負債として認識されるほか、三越伊勢丹やJフロントと比べて賃借物件の大きい当社はIFRS16号採用によるB/Sの膨らみ方が大きく、自己資本比率は前年より3%以上低下して37.7%となっています。そのため今期の配当予想については年24円を据え置いているものの、その一方で今期は自社株買い100億円(4.6%)を実行しています。これにより更に自己資本が薄くなってしまうことから、資本政策としてはややちぐはぐ感もありますが、会社側は低迷する株価水準をなんとか現状維持したい意志がありそうです。

 

*参考記事① 2019-06-17 1,128円 NT

日本橋SCとタイ開業も、業績はピーク感も強い・髙島屋(8233)。

 

 

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