【9414】日本BS放送/BS市場シュリンクで、東京五輪も逆風。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9414】日本BS放送 (東証一部)  NT

現在値 1,164円/100株 PER15.0 PBR1.18 8月配当優待 2月優待

ビックカメラが親会社のBS放送会社。競馬中継など自社製作が5割。
配当金は8月末一括の20円配当のため、配当利回りは1.72%となります。

日本BS放送は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末に単元株を保有する株主に対して、1,000円分のビックカメラ商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.44%となります。なお1年以上保有を継続した場合には、8月末に1,000円分の商品券を追加進呈していますので、その場合の利回りは約4.29%となります。

業績を確認していきます。
■2016年8月期単 売上高 102億円、経常利益 21.3億円 EPS 82円
■2017年8月期単 売上高 115億円、経常利益 22.3億円 EPS 85円 

■2018年8月期連 売上高 124億円、経常利益 24.2億円 EPS 93円

■2019年8月期連 売上高 126億円、経常利益 16.9億円 EPS 65円 

■2020年8月期連 売上高 130億円、経常利益 20.1億円 EPS 77円 ce
□2019年11月1Q連 売上高 28.4億円、経常利益 4.7億円 EPS 18円(1/8) 

□2020年2月2Q連 売上高 62.0億円、経常利益 9.8億円 EPS 37円 

2019年8月期の売上高は前期比0.9%増の126億円、経常利益は同30.0%減の16.9億円となり、売上高段階から大幅な予算割れとなりました。売上高については、衛星メディア業界自体が拡大から縮小に転じたマクロ的影響にくわえ、大型クライアントである通販会社等による広告費ミックスの見直し(平たく言うとネット広告へのシフト)により、当社の枠への提供を控えたことが大きく影響し、タイム収入、スポット収入ともに計画を下回りました。利益面についても、トップライン減少にともなう減益にくわえ、自主製作番組強化や他局人気番組購入に伴う経費増や、(自社の)広告費用積み増しもあり、予算比の落ち幅が特に大きくなりました。


進行期である2020年8月期の予算については、売上高が3.2%増の130億円、経常利益は18.3%増の20.1億円を予想しています。上述のとおり、衛星メディア広告市場自体が既に縮小に転じている状況ではあることから、実績期で部分的に失注してしまった大型通販会社のクライアントを復元して増収させる計画であり、通販の対象番組となる韓流ドラマの枠を新規コンテンツに切り替える等のテコ入れ策を講じていく方針です。但し、今期は東京五輪というイベントがあるため、中継権・放映番組を有しない当社はクライアントの広告特需に乗れない公算が高く、視聴率も奪われる格好となると今期だけでなく翌期以降の広告受注にも影響が出ることから要注意の一年となりそうです。


当社は数期に渡って年率2桁のトップライン成長を継続していた経緯もあり、前の前の中計では2018年8月期時点で個別(の放送事業による)売上高150億円の達成を見込んでいましたが、前の中計で表記目標の達成時期を2年先の2020年8月期へと送ったほか、今次のローリングで達成時期を更に2年先送りして2022年8月期に送っており、中計が全く機能していない印象です。実際、また2年送ったものの、業界自体がシュリンクしてジリ貧となるなかで、本業だけで年あたり10億円ずる積み上げる必要があるため、今次ローリングで時間稼ぎをしてなお過大感が強い印象です。2018年に児童書出版の理論社と国土社の2社の買収により、年5~6億円の売上高が増加していますが、これはあくまで連結事業であり、中計の数値目標には寄与しません。


また、当社における投資論点のひとつである4K/8K放送の導入については、既にキー局より2年遅れとなっているものの、足許の業績が低迷していることから、数十億円を要する4Kの設備投資は凍結する公算が高いと思われます。そのため、そのためにプールしておいた豊富な現預金を活用がポイントとなりますが、ローリング後の新中計では「他社連携」「自主番組強化」「アニメ強化」「周辺事業強化」などを重点施策に挙げていることから、独立系の強みを活かした外部番組の積極購入や、自主製作番組への投資、アニメ番組購入強化・制作委員会出資などへ資金投下し、オーガニック成長路線に回帰出来るかどうかがポイントとなりそうです。ただ、何れの施策も目新しさのない漠とした施策であるほか、かような業績であっても親のビックカメラが営業支援する兆候はほぼ見られないので、中長期的な当社の行く末はこの中計にで謳われている内容とは全く別のシナリオに進む可能性もありそうです。

 

なお、キャッシュリッチの財務状況は相変わらずであり、ほぼ無借金で100億円の現預金を保有しています。成長株から成熟株へのと性格が変わった現状においても、現状25%程度に過ぎない配当水準を変更する気配はなく、今期も年20円の配当予想を据え置いています。そして今後も増配をせずに、株主還元を自社株買いで実施してくるような場合については、前述の“別のシナリオ”に進む可能性が更に高くなると考えています。

 

*参考記事① 2019-06-11 1,067円 OP

業界自体の成長はストップ、今後の資本政策に注目・日本BS放送(9414)。

 

*参考記事② 2018-12-20 1,158円 OP

BS広告市場自体は鈍化も、財務はひたすら良化が進む・日本BS放送 (9414)。

 

 

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基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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