業界自体の成長はストップ、今後の資本政策に注目・日本BS放送(9414)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9414】日本BS放送 (東証一部) ---

現在値 1,067円/100株 PER13.5 PBR1.11 8月配当優待 2月優待

ビックカメラが親会社のBS放送会社。競馬中継など自社製作が5割。
配当金は8月一括配の20円のため、配当利回りは1.87%となります。

日本BS放送は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末に単元株を保有する株主に

対して、1,000円分のビックカメラ商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約

3.74%となります。なお1年以上保有を継続した場合には、8月末に1,000円分の商品券を

追加進呈していますので、その場合の利回りは約4.68%となります。

業績を確認していきます。
■2015年8月期単 売上高 88.6億円、経常利益19.1億円 EPS 68円 
■2016年8月期単 売上高 102億円、経常利益 21.3億円 EPS 82円
■2017年8月期単 売上高 115億円、経常利益 22.3億円 EPS 85円 

■2018年8月期連 売上高 124億円、経常利益 24.2億円 EPS 93円(10/5)

■2019年8月期連 売上高 140億円、経常利益 20.0億円 EPS 78円 ce
□2019年2月中連 売上高 60.7億円、経常利益 9.5億円 EPS 36円 

2019年2月中間期の売上高は前年同期比2.0%増の60.7億円、経常利益は同39.5%減の

9.5億円となり、売上高は増収したものの予算比で未達、逆に利益は減益となったものの、

予算を超過して着地しました。これはBS業界自体が拡大から縮小に転じたマクロ的影響

にくわえ、大型クライアントである通販会社等による広告費ミックスの見直し(平たく言うと

ネット広告シフト)により、当社の枠への提供を控えたことが主な原因であり、タイム収入、

スポット収入ともに計画を下回りました。その一方、利益圧迫要因であるとともに、利益可

変要素である広告宣伝費を5億円まで絞ったことで、予算比では増益を確保しました。


なお、2020年8月期の通期予算については期初計画を据え置いており、売上高が前期比

12.1%増の140億円、経常利益は17.3%減となる20.0億円を予想しています。既述のとおり、

BS放送広告市場は縮小に転じており、これまで年率2%程度まで業界成長率が落ち込ん

でいたものの、2018年(暦年)を天井に業界自体の成長が止まっています。当社も上期時

点で本業の単体ベースでは減収に転じており、タイム収入・スポット収入ともに2桁もの伸

びを計画している期初予算前提は明らかに過大であり、通期未達が濃厚な情勢です。


当社は数期に渡って、年率2桁のトップライン成長を継続していた経緯もあり、従来中計で

は前期(2018年8月期)に個別売上高150億円の達成を見込んでいましたが、これを2年先

の2020年8月期へと送る新3年中計へとローリングしました。ただ既述のとおり、業界自体

が成長どころか縮小してしまっているので、当社の企業努力の如何でコントロールできる

範囲を超えてしまっており、本中計は既に画餅化してしまっている状況です。2018年初に

児童書出版の理論社と国土社の2社を買収していますが、2社合わせてもせいぜい5~6

億円程度の売上寄与のため、本業の放送収入の趨勢減の穴埋めにしかなりません。

また昨年末からNHKとキー局系の(一部の)BS会社が既に4K/8K放送を開始していますが、

当社のサービスインは先行組から2年遅れの2020年を目処としていました。ただ4Kの設備

投資は数十億円を要するほか、業界自体が早くも縮小に転じるという(当社としても)想定外

の状況に陥っているため、当面の間は投資を凍結する可能性が高そうです。オーガニック

成長の目がほぼ消えた当社の今後の投資論点としては、この4K設備投資のためにプール

しておいた豊富な現預金を活用した、本業以外の成長投資であり、具体的には足許で進

めているアニメ製作委員会などのIP投資や、親会社のビックカメラと推進する「eスポーツ」

など周辺ドメインの育成が挙げられますので、その辺の取組に注目していく形となります。

 

そんな訳で、成長株という位置づけから成熟株のそれへと評価が一変してしまいましたが、

キャッシュリッチの財務状況は相変わらずであり、ほぼ無借金で100億円の現預金を保有

している状況です。そのため、4K設備投資や、周辺ドメインへの投資に資金を使わないの

であれば、株主還元の強化がひとつのテーマになり得ると考えており、現状25%程度に過

ぎない配当性向を一気に引き上げる可能性が考えられます。また、株主還元の強化とは

逆の発想で、親のビックカメラとしてはキャッシュリッチの当社を株式市場から撤退させて、

(親の財務改善目的とともに)二人三脚で立て直すといったシナリオも考え得ることから、

当社の配当を含めた資本政策動向については、業績動向以上に注目とも言えそうです。

 

*参考記事① 2018-12-20 1,158円 ---

BS広告市場自体は鈍化も、財務はひたすら良化が進む・日本BS放送 (9414)。

 

*参考記事② 2018-05-22 1,495円 ---

上期上振れ着地も、売上成長は鈍化傾向・日本BS放送 (9414)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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