日本橋SCとタイ開業も、業績はピーク感も強い・髙島屋(8233)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8233】髙島屋(東証1部) --


現在値 1,128円 PER9.8 PBR0.44 2月配当優待 8月配当優待

東京、大阪など全国展開する老舗百貨店。シンガポールSC店と東神開発寄与大。
配当金は2月末・8月末の年2回で合計24円で、配当利回りは2.13%となります。

髙島屋は株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末・8月末の株主に対して、

10%割引優待カードを進呈しております。このカードの持参により、有料催事が3人まで無料

となるため、仮に入場料1,000円の催事に、2人で年1回行った場合を想定した際の配当優

待利回りは、およそ2.43%となります。

業績を確認していきます。
■2016年2月期 売上高 9,295億円、営業利益 329億円 EPS 135円 

■2017年2月期 売上高 9,236億円、営業利益 340億円 EPS 119円 

■2018年2月期 売上高 9,495億円、営業利益 353億円 EPS 135円

■2019年2月期 売上高 9,128億円、営業利益 266億円 EPS 94円変更 

■2020年2月期 売上高 9,420億円、営業利益 310億円 EPS 114円 ce
□2019年8月中 売上高 4,580億円、営業利益 135億円 EPS 71円 ce

2019年2月期の売上高は前期比0.6%増(調整後)の9,128億円、営業利益は同24.5%減の

266億円となり、期初予算を大幅に下回って着地しました。昨年秋にかけて台風や豪雨の

影響を受けたほか、暖冬による衣料品不振、年末の株安による逆資産効果により、軒並み

低調に推移し、インバウンド恩恵のあるなんば店(正式には大阪店)辺りはまずまずだったも

のの、旗艦の日本橋店の売上高は前期比96.3%と厳しい結果となりました。他方利益面につ

いては、日本橋SC・タイ店の開業費用が膨らんだほか、不動産子会社の東神開発の未達

とマンション分譲益の剥落も響き、大幅な減益となりました。


進行期の2020年2月期の予算については、売上高が3.2%増の9,420億円、営業利益は16.3

%増の310億円と増収増益を見込んでいます。今年3月に開業した日本橋SCがほぼ通期で

寄与するほか、旗艦のなんば店の売上高前提を102.7%、日本橋店を2.4%、新宿店を2.9%で

置いている一方で、消費増税による売上減を一定程度見込んでいる模様です。他方、利益

面については、トップライン成長による良化以外では、日本橋SCの開業費用の剥落が見込

まれるほか、IFRS16号適用(新リース基準)による賃借物件のオンバランス化により、営業

利益ベースで28億円も良化する一方で、費用が利息費用としてヒットする経常利益ベース

では21億円悪化する形となり、見えがかり上の営業利益の改善幅は厚くなります。


当社はローリング方式で4年中計を公表しており、最終年度となる2024年2月期に売上高

9,900億(CAGR1.6%)、営業利益430億円(CAGR10%)をそれぞれ見込んでいます。が、1年前

のローリング前と比べるとトップラインが減少している上に1年後倒しとなっているほか、

当社はいつも中計の下方ローリングを行って目標額を減額し続けているので、掲げられて

いる定量目標値は殆ど参考になりません。足許の状況としては、“水物”であるなんば店の

インバウンドによる免税売上が当社業績を支えている状況であり、中国の新EC法施行や、

元安円高傾向といったマクロ要因を今後大きく受けることが予想されることから、現時点で

中長期的な成長シナリオを描くのはかなり難しい状況となっています。

 

また日本橋SCの開業後は、これといった新店パイプラインがなく、玉川店とSCの改装や、

横浜店の一部増床、なんば店の別館改装などしか案件がない状況です。海外についても、

引き続きシンガポール店だけは好調に推移しており、日系百貨店として最大の成功事例と

しての地位は揺るがないものの、それ以外の上海やベトナムは依然赤字となっているほか、

出店したばかりのタイ店は早くも閑古鳥状態となっている模様であり、海外に活路を求める

のも難しい状況です。唯一健闘しているのは、不動産事業(SC管理)を手掛ける東神開発

ですが、本体と共同で手掛ける店を核とした「街づくり戦略」による面的な収益拡大を期待

するにもまだ時期尚早かと思われます。

 

他方、財務状況については、昨年12月に既発のユーロCB400億円償還のため、600億円

のユーロCBを“おかわり”しています。行使価格が@2,180円であり、足許の株価とかなり

の差があるので、当面はデットとして認識される可能性が高そうです。また、当社は三越

伊勢丹やJフロント(大丸松坂屋)といった競合と比較すると、自社保有物件が少ないので、

B/S面でもIFRS16号適用の影響を受けやすく、それだけで自己資本比率が約350bps.は

下がるとみられるため、先のCB調達も含め、今期から見た目の財務状況が悪化します。

そのため、今期の配当予想については、年24円を据え置いていますが、これは理解出来

判断であり、株主還元についても当面は期待薄の状況が続きそうです。

 

会社四季報 2019年3集夏号

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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