【9513】電源開発/石炭急騰で豪州での取込利益が増加。中計前倒し達成濃厚で、悲願の増配予想。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9513】電源開発 (東証1部) NT

 

現在値 2,097円/100株 P/E  5.73  P/B 0.39  3月配当 9月配当

 

04年に政府が民営化で株放出。電力卸が主。電源は石炭火力と水力中心。

 

配当は3月末・9月末合計年80円予想のため、配当利回りは約3.81%となります。

電源開発は株主優待制度を導入しておりません。

 

業績を確認していきます。

■2020年3月期 売上高 9,137億円、経常利益 780億円、EPS 231円

■2021年3月期 売上高 9,091億円、経常利益 609億円、EPS 121円 

■2022年3月期 売上高 10,846億円、経常利益 728億円、EPS 380円 

■2023年3月期 売上高 14,310億円、経常利益 1,000億円、EPS 366円 ce

□2022年6月1Q 売上高 3,233億円、経常利益 214億円、EPS 71.2円(7/29)

□2022年9月2Q 売上高 6,500億円、経常利益 550億円、EPS 218円 四e

 

2022年3月期の売上高はYoY+19.3%の10,846億円、経常利益はYoY+19.6%の728億円となり、対期初予算・対見通し比で大幅に上振れました。火力発電は磯子1号機・2号機のサイロ故障や橘湾火力1号機のタービン故障による稼働低下があったものの、水力発電は豊水により発電量が増加し、国内電気事業全体の発電量はYoY+0.3%の747億kHhとなったほか、卸価格上昇による単価効果も寄与しました。利益面については、計画外修繕の減少にくわえ、石炭価格上昇にともない、持分法である豪州炭鉱会社の取込利益が増加しました。

 

進行期である2023年3月期の予算については、売上高がYoY+31.9%の14,310億円、経常利益がYoY+37.3%の1,000億円を予想しています。電気事業全体の販売量前提については、水力発電の出水率上昇を見込む一方、火力発電の利用率低下とJPEXからの調達量減少により、747→653億kHhまで引き下げるものの、単価上昇により増収を見込みます。利益面については、豪州産石炭スポット価格高騰継続による石炭の採算性改善、為替差損の剥落、計画外修繕の減少などの積み上げで一段増となる公算です。

 

当社は世界的な脱炭素潮流に対応すべく、将来的なカーボンニュートラルを志向した「BLUE MISSION2050」を昨年公表しています。骨子としては、①再生可能エネルギーや原子力によるCo2フリー電源の拡大、②Co2フリー水素の製造と発電等による排出ゼロ化、③電力ネットワークの安定化と増強の3点を掲げるとともに、2024年3月期までの向こう3年間で、経常利益を609億円→900億円に引き上げる計画としていましたが、足許ベースでは1年前倒しでの超過達成が濃厚な情勢です。

 

当社は電力各社の中でも石炭火力(約10GW)への依存度が高いほか、非効率石炭火力割合も多いため(約3.5GW/高砂1・2号機0.5GW、竹原3号機0.7GW、松浦1号機と松島1・2号機2.0GW他)を占めており、2030年までに廃止若しくは建替を計画しています。また、中国電力とは合弁で「大崎クールジェンプロジェクト」という超高効率の次世代石炭火力発電に取り組んでいるものの、足許石炭価格が空前の高騰(それでもLNGがそれ以上に大高騰しているのでマージンが確保出来ている)しているため、石炭火力自体の意義が改めて問われている状況です。

 

その他カーボンニュートラルの取組としては、豊田通商系のユーラスエナジーに次いで国内2位の風力発電事業を伸長させる計画であり、秋田の由利本荘の大型案件は三菱商事連合に競り負けてしまったものの、現状では9サイト(269MW)が建設中となっています。また、本年4月には英国のトライトン・ノール洋上風力(214MW)が商用運転を開始しています。また、長期的な取組としては、CO2を地中埋設する所謂CCS事業をENEOSと合弁で進めており、2030年を目途に開始するべく調査を開始しています。

 

他方、財務状況については、自己資本比率は29.9%に改善しており、本中計期間中の30%維持目標に肉薄しています。株主還元については「配当性向30%、かつ安定的・継続的」という還元ポリシーとしていたものの、ここにきて期初から5円増配となる年80円配当をガイドしてきたことから、会社側は先行きにある程度の手応えを感じているものと解されます。

 

*参考記事① 2022-01-29 1,495円 NT

【9513】電源開発/トラブルによる非計画修繕や、豪石炭価格高騰が利益を圧迫。

 

*参考記事② 2021-08-10 1,626円 OP

【9513】電源開発/“非効率石炭フェードアウト”政策が構造的重し、当面は低調推移か。

 

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