【9513】電源開発 (東証1部) OP
現在値 1,626円/100株 P/E 8.75 P/B 0.35 3月配当 9月配当
04年に政府が民営化で株放出。電力卸が主。電源は石炭火力と水力中心。
配当は3月末・9月末合計年75円を予想しているため、配当利回りは約4.61%となります。
電源開発は株主優待制度を導入しておりません。
業績を確認していきます。
■2018年3月期 売上高 8,562億円、経常利益 1,024億円、EPS 373円
■2019年3月期 売上高 8,973億円、経常利益 685億円、EPS 252円
■2020年3月期 売上高 9,137億円、経常利益 780億円、EPS 231円
■2021年3月期 売上高 9,091億円、経常利益 609億円、EPS 121円
■2022年3月期 売上高 8,420億円、経常利益 500億円、EPS 185円 ce
□2021年6月1Q 売上高 1,917億円、経常利益 198億円、EPS 76.5円(7/30)
□2021年9月2Q 売上高 3,800億円、経常利益 380億円、EPS 142円 ce
2021年3月期の売上高は前期比0.5%減の9,091億円、経常利益は同22.0%減の609億円となり、2月開示の修正見通し比では上振れしたものの、減収減益となりました。水力発電は出水率低下により発電量が減少したものの、竹原火力新1号機や鹿島火力2号機の稼働開始が寄与し、国内電気事業全体の発電量は2%増の745億kHhを確保しました。他方、利益面については発電所の計画外停止や石炭価格の上昇による原価上昇が響いたほか、冬場の電力需給タイト化にともなうJPEX調達価格の高騰により、持分法適用会社であるエナリスにおいて▲100億円程の損失が生じたものとみられ、連結では2割を超える減益となりました。
進行期である2022年3月期の見通しについては、売上高が7.4%減の8,420億円、経常利益は17.9%減の500億円を予想しています。電気事業全体の発電量は27億kHh減の718億kHhを想定しており、水力発電は平年水準への復元を見込む一方、火力発電については点検及びトラブル修繕による影響により利用率が75%→65%まで減少する想定となっています。利益面については、石炭高にともなう市場価格スプレッド減少や、火力発電の故障多発にともなう設備保全コスト等の修繕費増加が重しとなり、続落が見込まれます。
当社は世界的な脱炭素潮流に対応すべく、本年2月に将来的なカーボンニュートラルを志向した「BLUE MISSION2050」を公表しています。骨子としては、①再生可能エネルギーや原子力によるCo2フリー電源の拡大、②Co2フリー水素の製造と発電等による排出ゼロ化、③電力ネットワークの安定化と増強の3店を掲げるとともに、2024年3月期までの向こう3年間の中期的な業績目標として経常利益609億円→900億円、を目指すこととしています。
特に当社の場合、他の発電会社と比べて石炭火力の依存度が8割強(約9GW)と高く、その中でもフェードアウト政策の対象となりうる非効率石炭火力発電がそのうち4割(約3.5GW/兵庫0.5GW、広島0.7GW、長崎2.0GWほか)を占めており、これらの廃止により会社全体の容量・販売量の3割以上が吹き飛ぶ可能性があるため、高い政策リスクが燻っているような状況です。そのため、中国電力との合弁で「大崎クールジェンプロジェクト」という発電効率40%超の次世代石炭火力発電に取り組んでおり、Co2の分離・回収のほか、“酸素吹方式”によりカーボンフリー水素の製造が可能になるため、本実証実験の成功が待たれる状況です(なお、成功する可能性が高いとみられるものの、排出Co2の貯蔵・活用や経済性等で実用化までの論点が残ります)。
他方、当社は再生可能エネルギーへの取組も他社比で先行しており、水力発電・陸上風力発電でも首位級となっており、それぞれ国内の15%~20%のシェアを握っています。水力発電については既存装置(水車、発電機)の置き換えや揚水ポンプアップによる余剰電力吸収、風力発電も同様に寿命を迎える設備を最新のものに置き換えることにより発電量を増やすなど、“アップサイクル”による発電量増加を図ります。また、再エネではないものの、2.0GWのUSC(超超臨界石炭火力)のインドネシアのセントラルジャワが本年稼働開始予定のほか、1.2GWのGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)の米ジャクソンが来年稼働開始予定となっており、業績寄与が見込まれます。
なお財務の状況については、自己資本比率は28.5%となっており、本中計期間中では30%以上をターゲットとしています。株主還元ポリシーについては「配当性向30%、かつ安定的・継続的」としていることから、当面は従来配当水準である年75円水準が据え置かれる可能性が高く、増配があっても年80円配止まりと考えています。
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