【9513】電源開発/トラブルによる非計画修繕や、豪石炭価格高騰が利益を圧迫。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9513】電源開発 (東証1部) NT

 

現在値 1,495円/100株 P/E 9.12  P/B 0.32  3月配当 9月配当

 

04年に政府が民営化で株放出。電力卸が主。電源は石炭火力と水力中心。

 

配当は3月末・9月末合計年75円を予想しているため、配当利回りは約5.02%となります。

電源開発は株主優待制度を導入しておりません。

 

業績を確認していきます。

■2018年3月期 売上高 8,562億円、経常利益 1,024億円、EPS 373円 

■2019年3月期 売上高 8,973億円、経常利益 685億円、EPS 252円 

■2020年3月期 売上高 9,137億円、経常利益 780億円、EPS 231円

■2021年3月期 売上高 9,091億円、経常利益 609億円、EPS 121円 

■2022年3月期 売上高 9,900億円、経常利益 410億円、EPS 163円 ce修正

□2021年9月2Q売上高 4,318億円、経常利益 266億円、EPS 99.3円(10/29)

 

2021年9月中間期の売上高はYoY+5.7%の4,318億円、経常利益はYoY▲44.9%の266億円となり、期初予算との比較はないものの、市場予想より下で進捗しました。水力発電は出水率向上で発電量が増加した一方、火力発電は磯子1号機・2号機のサイロ故障や橘湾火力1号機のタービン故障といったトラブルに見舞われ稼働低下を余儀なくされたことから、国内電気事業全体の発電量はYoY▲4.4%の352億kHhとなりました。利益面は上述の計画外修繕発生にくわえ、為替差損、持分法のエナリスのJPEXからの調達単価増と数量増(トップラインは増加)で原価が膨らみ、大幅減益となりました。

 

なお2022年3月期の通期見通しは中間時点で再修正しており、売上高がYoY+8.9%の9,900億円(期予:8,420億円)、経常利益がYoY▲32.7%の410億円(期予:500億円)に変更しています。電気事業全体の販売量前提については、火力発電はトラブルと非計画修繕による火力利用率低下影響を、水力発電の豊水による出水率向上で補い、718→728億kHhに引き上げます。他方、利益面については、豪州産石炭スポット価格高騰によるスプレッド減少や、火力発電の故障多発にともなう修繕費増加にくわえ、JPEXからの調達価格上昇が重しとなり減益幅が想定より拡大します。

 

当社は世界的な脱炭素潮流に対応すべく、本年2月に将来的なカーボンニュートラルを志向した「BLUE MISSION2050」を公表しています。骨子としては、①再生可能エネルギーや原子力によるCo2フリー電源の拡大、②Co2フリー水素の製造と発電等による排出ゼロ化、③電力ネットワークの安定化と増強の3店を掲げるとともに、2024年3月期までの向こう3年間の中期的な業績目標として経常利益609億円→900億円、を目指すこととしています。

 

当社は電力各社の中でも石炭火力の依存度が8割強(約9GW)と高く、更に非効率石炭火力発電がそのうち4割(約3.5GW/兵庫0.5GW、広島0.7GW、長崎2.0GWほか)を占めており、これらの廃止で会社全体の容量・販売量の3割強が吹き飛ぶリスクを孕んでいます。そのため、中国電力との合弁で「大崎クールジェンプロジェクト」という発電効率40%超の次世代石炭火力発電に取り組み、Co2の分離・回収と、“酸素吹方式”によるカーボンフリー水素の製造を目指して実証実験を急いでいます。但しその実現性もさることながら、そもそも足許の豪州産石炭価格が160~170$に急騰してLNG並みのコストとなっていることから、石炭火力発電の根本意義が揺らいでいる状況です。

 

また、再エネについては当社は他社より先行しており、水力発電・陸上風力発電でも首位級(15%~20%)となっていましたが、昨年公募された洋上風力では三菱商事連合が由利本荘などの合計3ロケーションに12~13円KWhという太陽光並みの破格の安値で入札されてしまい、由利本荘と能代で競合していたJERA連合(当社・エクイノール)を大きく引き離して落としてしまったため、今後の新規再エネ案件獲得にも暗い影を落としています。そのため、中計に掲げる経常利益900億円は現状与件では既に達成不可能圏にあり、当面は苦しい状況が続くとみられます。

 

なお財務の状況については、自己資本比率は29.3%となっており、本中計期間中では30%維持を目標としています。株主還元ポリシーについては「配当性向30%、かつ安定的・継続的」としていることから、当面は従来配当水準である年75円水準が据え置かれる公算が高いとみられます。

 

*参考記事① 2021-08-10 1,626円 OP

【9513】電源開発/“非効率石炭フェードアウト”政策が構造的重し、当面は低調推移か。

 

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