【6089】ウィルグループ/豪州・SG事業は円安メリットを享受、早くも通期上振れが濃厚。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

image

【6089】ウィルグループ(東証プライム) OP

現在値 1,383円/100株 P/E 9.37  P/B 2.57 3月配当株主優待

人材派遣や業務請負等の人材サービス。家電量販店などの販売現場も。
配当金は3月末・年1回44円配のため、配当利回りは3.18%となります。

 

ウィルグループは株主優待制度を導入しており、3月末の単元株主に対して、500円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.54%となります。また長期優遇制度があり、最長の3年以上保有となった場合は、クオカード進呈額が2,000円分(約4.62%)までハネあがります。

業績を確認をしていきます。

■2020年3月期 売上高 1,219億円 営業利益 41.4億円 EPS 107.1円

■2021年3月期 売上高 1,182億円 営業利益 40.3億円 EPS 106.5円

■2022年3月期 売上高 1,310億円 営業利益 54.7億円 EPS 147.0円

■2023年3月期 売上高 1,400億円 営業利益 56.0億円 EPS 148.9円ce

□2022年6月1Q 売上高 354億円 営業利益 14.3億円 EPS 33.6円 (8/5)
□2022年9月2Q 売上高 670億円 営業利益 22.5億円 EPS 55.3円 ce

2022年3月期の売上高はYoY+10.9%の1,310億円、営業利益はYoY+35.8%の54.7億円となり、増額見通し比で上振れ着地しました。国内事業は、新型肺炎禍の影響でアパレル、食品等工場分野の戻りが鈍いものの、通信、コールセンターや介護・保育分野が堅調に推移したほか、スタートアップ向けが拡大しました。海外事業についても、豪州・SGともに経済活動が平時に戻りつつあることから、人材派遣が政府・行政向けを中心に堅調に推移したほか、人材紹介は採用活動のリバウンドにより全領域で急拡大しました。

進行期である2022年3月期の通期予算については、売上高がYoY+6.8%の1,400億円、営業利益はYoY+2.3%増の56.0億円を見込んでいます。国内事業は、コールセンター、介護・保育分野での堅調な推移が見込まれるほか、アパレル販売向けの回復、注力予定の建設分野の拡大を織り込みます。海外事業についても、豪州・SGともに安定的推移が見込まれるものの、人材紹介のリバウンド一巡により横ばい想定となります。なお、8月5日に開示済の1Qは、売上高354億円&営業利益14.3億円と高水準で進捗しているほか、期初時点より円安が一段と進行しているため(営業利益+4~5億円)、増額修正が濃厚とみられます。

 

進行期は3年中計の最終年度であり、当初計画では売上高1,335億円(CAGR6%)、営業利益53.5億円(CAGR15%)を目指していましたが、営業利益に関しては終わった期に前倒達成しています。本中計期間の取組事項としては、①定常派遣化(一時派遣→人材紹介/長期専門派遣)、②派遣事業のデジタル効率化、③海外子会社間シナジーとHRテック強化を掲げており、その他の目標KPIとしてはROIC20%(直近実績17.9%)や、自己資本比率22%(同21.8%)を目指すこととしています。

 

本中計期間では26億円規模の先行投資を計画しており、中でも①の建設領域に注力しています。外国人労働者も限られる“担い手不足”の状況の中、未経験の中途と新卒の採用に軸足を置き、徐々に熟練度と定着率を向上させる方針としています。特に新卒は年1,000人ピッチで採用しており、(未熟練のため)単価面は期待出来ないものの、そこは先行投資という位置付けで、介護事業と合わせて16億円を投じる計画としています。

 

上記以外ではコールセンターのOS需要増加に対応すべく、昨年金沢にコールセンターを新設したほか、従業者側の在宅勤務需要に対応すべく“在宅コールセンター割合”を増やしています。特に昨今の在宅勤務増加により、受電側顧客応答率も上昇しているため、アウトバウンド営業効率の良化が期待されます。また、③は上場子会社でもあるフォースタートアップス(7089)は採用意欲旺盛な新興企業向けにマネジメント級の人材紹介で飛躍的に業績を伸ばしていますが、この1年でネット企業の資金調達環境が急速に冷え込んだため、勢いの持続性には不透明感があります。

 

財務面については、過去に多額ののれん付きの買収を連発していたため、財務の悪さが目立ちましたが、剰余金の急速な積み上げで、目下の自己資本比率は21.8%まで回復してきています。なお配当については、総還元性向を“期初予想業績の30%”という謎の配当フォーミュラにより、10円増配の年44円配当を予想していますが、着地の業績がどれだけ良くても増配しないため、この辺については再考してほしいところではあります。

 

*参考記事① 2021-09-08 1,307円 OP

【6089】ウィルグループ/増額後も見通しはやや保守的か、傘下フォーSU社の方が好調。

 

*参考記事② 2020-09-20 935円 OP

【6089】ウィルグループ/のれん付きMA連発で中計達成も、財務悪化と希薄化で評価難。

 

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村