【9861】吉野家ホールディングス/助成金剥落も財務状況は高位安定、ラーメン事業拡大へ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9861】吉野家ホールディングス(東証プライム)  NT


現在値  2,494円/100株  P/E 46.0  P/B 3.35  2月優待 8月優待

牛丼屋の老舗、国内2位。収益源の『吉野家』を直営軸に全国展開。
配当基準日は2月、8月の年2回ですが配当予想は年10円となっています。

吉野家ホールディングスは株主優待として、2月末・8月末に100株以上を保有する株主に対して2,000円分の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りを算出した場合、約2.00%となります。

業績を確認していきます。    

■2020年2月期 売上高 2,162億円、経常利益 33.6億円、EPS 12.4円 

■2021年2月期 売上高 1,703億円、経常利益▲19.6億円、EPS▲116.0円

■2022年2月期 売上高 1,536億円、経常利益 156.0億円、EPS 125.5円

■2023年2月期 売上高 1,680億円、経常利益 54.0億円、EPS 54.1円 ce(4/13) 
□2022年8月2Q 売上高 828億円、経常利益 34.0億円、EPS 52.5円 ce  


2022年2月期の売上高はYoY▲9.8%の1,536億円、経常利益はYoY+176億円の156億円と大幅に黒転したほか、3Qの修正見通し比でも上振れました。主力の吉野家は、時短営業の復元で前年ハードルは低かったものの、「ポケ盛」や「牛丼3杯千円」等の企画や緊急事態宣言の再発令等の影響を色濃く受け、予算前提SSS102.3%(94.6%/括弧内は2019年比;以下同様)に対し、100.7%(92.1%)に留まり、都心店・ビルイン店の多いはなまるのSSSは109.7%(70.8%)となりました。他方、利益面については、牛肉価格・人件費高騰が重しも、トップライン回復によるロス削減が効いたほか、営業外の受取助成金(+131 億円)が膨らみ、経常利益からは一段増となりました。

 

2023年2月期の通期予算については、売上高がYoY+9.4%の1,680億円、経常利益はYoY▲65.5%の54億円を見込んでいます。吉野家の予算前提SSSは108.6%(97.8%)、はなまるは同120.0%(85.1%)でセットしており、全業態トータルSSSは2019年比100.1%と新型肺炎禍前まで完全復元する前提です。利益面については、原価と人件費高騰を増収効果と本部経費削減で飲み込んで営業増益を見込む一方、受取助成金の剥落で経常利益は大幅減となります。出退店については、FF展開のグリーンズプラネットを売却(▲93店)するものの、他主要セグは全て増店を見込み、期末の総展開店舗数はYoY+3店の2,843店を見込みます。

 

当社は2025年2月期を終期とする10年長計を走らせており、およそ3年スパンで「準備期」「拡大期」「収穫期」の3フェーズに期分けしていましたが、第1フェーズの「準備期」が終わった時点で新型肺炎禍となり、第2フェーズである「拡大期」に移行出来ない状況が2年続いていました。そして今般、基本的には10年長計の考え方を踏襲する形で新3年中計を策定しており、2025年2月期までの3ヵ年で売上高を1,536億円→1,800億円に、営業利益を23億円→70億円に引き上げる計画としています。

 

当社は新型肺炎禍で▲80億円分/年のコスト削減を既に済ませていることから、今次中計の取組事項としては、①既存事業の業態進化、②成長事業強化、③MA追及と前向きな内容が多くなっています。①は向こう3年間で500店の既存吉野家のU字カウンター店舗を、C&C店舗(セルフ+テーブル方式)に変更し、女性客やファミリー層の獲得を狙います。また、タブレットによる省人化や持ち帰り専用コーナーの新設による合理化にくわえ、低投資の店舗フォーマットによる開発を進めます。また、(丸亀に押されて)伸び悩むはなまるは、出汁や天ぷらの改良など、基幹商品の見直しを進めます。

 

②の成長事業は、吉野家の“アタマの牛肉”の冷凍外販の拡販を進め、ECだけでなくスーパー・生協5,000店に卸す計画としており、昨年の専用ライン新設により、この3年で冷食売上を100億円→163億円まで引き上げる計画です。③のMAについては、ラーメン事業をせたが屋買収に続き、ウィズリンクHD(国内外86店)の持分を創業家より買い増して完全子会社に収めており、今後は牛丼・うどんに次ぐ第3の柱に育てる計画です。なお、本中計期間で投資額は累計400億円を予定しており、出店・改装・DX・その他で300億円、MAに100億円を投じる計画です。

 

他方、財務の状況については、新型肺炎禍の運転資金用で長短合わせて200億円程を追加で借入しているものの、この1年で230億円を返済したほか、受取助成金も大きく膨らんだため、自己資本比率は40%台まで飛躍的に改善しています。そのため、配当についても、実績・予想ともに年10円に復配しており、今次中計によれば年20円水準までの復元配を目指しているとみられます。


*参考記事① 2022-01-14  2,256円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/受取助成金想定超で、中間だけでなく期末復配も射程圏。

 

*参考記事②  2021-06-25  2,101円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/スシローへの京樽売却で減収も、コスト削減効果は想定超か。

 

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