【9861】吉野家ホールディングス/スシローへの京樽売却で減収も、コスト削減効果は想定超か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9861】吉野家ホールディングス(東証1部)  NT


現在値  2,101円/100株  P/E 67.9  P/B 3.43  2月優待 8月優待

牛丼屋の老舗、国内2位。収益源の『吉野家』を直営軸に全国展開。
配当基準日は2月、8月の年2回ですが配当予想は未定となっています。

吉野家ホールディングスは株主優待として、2月末・8月末に100株以上を保有する株主に対して3,000円分の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回り(無配の前提)を算出した場合、約2.85%となります。

業績を確認していきます。  

■2018年2月期 売上高 1,985億円、経常利益 46.0億円、EPS 23.1円   

■2019年2月期 売上高 2,023億円、経常利益 3.4億円、EPS▲92.9円   

■2020年2月期 売上高 2,162億円、経常利益 33.6億円、EPS 12.4円 

■2021年2月期 売上高 1,703億円、経常利益▲19.6億円、EPS▲116.0円

■2022年2月期 売上高 1,551億円、経常利益 52.0億円、EPS 30.9円 ce  
□2021年8月中 売上高 750億円、経常利益 30.0億円、EPS 29.4円 ce 

2021年2月期の売上高は前年同期比21.2%減の1,703億円、経常利益は同赤転の▲19.6億円で着地し、期央に公表した見通しとの比較では利益が大幅に上振れました。主力の吉野家については年末年初に再度時短を迫られるなどしたものの、予算前提である既存店売上高(SSS)下期90%(通期88%)をクリアしました。これは客単価が高い持ち帰りやデリバリー需要が下支えしたほか、「ポケ盛り」や「黒毛和牛すき鍋膳」の投入により店内飲食の落ち込みを抑えました。他方、都心店・ビルイン店の多いはなまるのSSSは64.5%、京樽SSSは71.7%に留まりました。利益の回復が顕著なのは原材料低減、本部経費抑制、不採算店閉鎖等のコスト削減策を相次いで実行し、年▲82億円もの採算良化効果が寄与したことによります。

 

2022年2月期通期の見通しについては、期初より公表しており、売上高は9.0%減の1,551億円、経常利益は同黒転の52.0億円を予想しています。予算前提の吉野家SSSは新型肺炎前となる2019年度との比較で94.6%(2020年度比102.3%)、はなまるSSSは同84%(2020年度比128.0%)でセットしています。既存店の本格回復を見込まないものの、回復の進む中国を中心に出店を再開する予定であり、これら2業態合わせて純増43店を予定しています。トップラインの大幅減は主として京樽の売却であり、利益の大幅な良化は実績期のコスト削減効果が通期で顕在化することに由ります。なお、既に3ヵ月分まで開示されている吉野家SSSは92.8%のため、10%pt.程ビハインドしているような状況です。

 

当社は2025年2月期を終期とする10年長計を走らせており、およそ3年スパンで「準備期」「拡大期」「収穫期」の3フェーズに期分けしています。第1フェーズである「準備期」の3年間は、2019年2月期に売上高2,100億(CAGR4%)、営業利益60億円(CAGR55%)の達成も目標としていましたが、売上高は達成したものの、人件費増が重くのしかかり、利益はほぼトントンとなりました。また、本来であれば第2フェーズである「拡大期」へ既に移行しているはずであるものの、新型肺炎禍からの基盤整備を理由に公表を再度見送っており、この2022年2月期についても“踊り場”的な一年として位置付けています。

 

依然として中長期の成長を見通すことは難しいものの、この新型肺炎禍で年間▲80億円規模の全社的なコスト削減をやり遂げたことから、トップラインはともかく利益を創出しやすい“筋肉質”な状態にはなった点は評価出来るかと思います。今後は売上・利益ともに大黒柱である吉野家については、従来のU字カウンター型ではなくC&C型(要ははなまる店舗と同じ)店舗に切り替え、主力顧客の男性客から女性客・家族連れの獲得を目指すほか、SC等のビルイン型が多いはなまるについてはワクチンの普及による自律回復に期待するような格好かと思われます。

 

また当社は安定的な吉野家事業で稼いだ利益を原資とした、MAを活用した外部成長戦略に特徴があり、ここ数年でもせたが屋を買収するとともに、以前より持分法適用としていた広島を地盤に国内外86店のラーメンチェーンを展開するウィズリンクHDの株式を創業家より買い増して完全子会社化にしています。他方、フォルクスを展開するアークミールを安楽亭に売却(2020年2月)したほか、京樽をスシローGHD(2021年2月)に売却一転して選択と集中を進めており、牛丼と麺類(うどん、ラーメン)といった商材の業態にフォーカスさせていくものとみられます。

 

財務については、新型肺炎禍においても良好な状態であり、この1年で運転資金用に長短合わせて200億円程追加借入しているものの、自己資本比率は30%台をキープしています。そのため、2021年2月期の無配転落は想定外でしたが、配当を未定としている進行期も5~10円程度の幅で復配するものと考えております。

 

*参考記事① 2020-06-15 2,331円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/当面は本業テコ入れの動きが中心、期末配当未定ながら有配か。

 

*参考記事① 2020-06-15 2,331円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/業績未定も、配当公表で好財務体質が光る。

 

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